十四話:自宅散策について(上)
今回は品野さんちの全貌が明らかに!
品野「や、そんな大したことはないって」
「それじゃあ、部屋を全部案内してやるよ。ついてきて」
立ち上がる。
それにつられて女子sも立ち上がる。
「あ、ちなみに、ここがリビング兼ダイニング兼キッチン兼みんながくつろげる部屋な」
「普段はここでご飯を食べたりするのだ!」
はい次。
今までいた1514室を出て、正面が俺が最上階全部買い取った時に増設した玄関。そしてその先はエレベーターと階段。
右手は物置。
左に曲がると廊下があり、進むにつれ1514、1513、1512、というふうに部屋数が若くなっていく。
「ここが1513室。部屋の形はだいたいどこも同じだけど、この部屋は寝室。俺の私室な」
「我も今日からこの部屋に住むのだ!」
「いや、お前自室あるだろ。隣の1512室」
次。
1513室の玄関から出て左に曲がる。
1512室のさらに隣。
「ここは1511室。はい、小暮さん、ケイト、じゃんけんぽん」
「翔様。じゃんけんぽんとはなんなのでしょうか」
「なんだ!? ケイトはジャンケンを知らないのか! ならば我が教えてやろう!」
ユリアが一生懸命ケイトにジャンケンを説明しているところはなんだか微笑ましかった。
二人とも、可愛いしな。
「なるほど、理解しました。……では小暮様。じゃんけんぽん」
ケイトが出したのはパー。対する小暮さんはグー。
「えと、これは私の勝ちですよね」
「やーいやーい、初手でグー出して負けてやんのー! 小学せー!」
「このぐーはね、ジャンケンのために出したんじゃないの。品野くんを殴るためよ」
あれ?
家主って最強じゃなかったっけ?
☆☆☆
1511室はケイトの部屋、1510室は小暮さんの部屋に決まった。
「あとの1509~1505室までは空き部屋な」
そのまままっすぐ廊下を歩き、突き当たりを左に。
曲がったら三mほど進み、右に曲がるとまた廊下が伸びている。
右に曲がってすぐのところに、怪しげな呪符や、胎動する文字が書いてあるドアがある。
1504室だ。
「ここの1514室はな、封印されておるのじゃ……! ここの封印を解いた者には大いなる災いが降りかかることじゃろう……!」
「なんで口調が芝居がかってるわけ?」
「ここにはな、悪い妖怪が封印されてるのだ! 頭から食べられるのだ!」
「ユリア様は魔王であるのに、妖怪が怖いのですか?」
「頭を齧られたくなんかないのだ!」
以前、エロ本の隠し場所として使っている1504室がユリアにバレそうになった時についた嘘を、ユリアは本気にしてしまっている。
良かった、ユリアがアホ――――素直ないい子で。
でもまあ、ここに置いてある保健体育の参考書は今度片付けなければいけないよな。
自室に避難させておくか。
「安心しろ、ユリア。今度俺が退治しといてやるから。……でも、俺がいいって言うまでは絶対に入っちゃダメだぞ? 頭から食べられたくなければな」
ユリアは走って逃げた。
怖がらせすぎただろうか?
うん、でも可愛い。
走っていったユリアは、次の部屋、1503室の前まで行くと止まった。
「そんなところにいたら食べられるのだ! 早くこっちに来るのだ!」
へいへい。
後半へ続く