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プロローグ

「次にサッカー部の紹介です」

「ウォーッス!」

 あまりの声量にスピーカーの音が割れる。新入生はドン引きだが、ここのサッカー部の威勢の良さは有名だ。っていうかこいつら、マイクいらないんじゃ……。

「それでは、3年生が今からリフティングをします! お願いしまっす!」

 そう言うと、体育館の入り口が開き、ガタイの良い男子生徒が駆け足で入ってきた。

 これまで、身体検査で引っ掛かった事はないが、健康的な我が目を疑わざるを得なかった。

 サッカー部の連中は泥の付いたスパイクで入場し、そのまま汚れているボールを足で操り出したのだ。後片付けの担当であろう生徒会の人は顔がひきつっていた。

 いや、寧ろ覚える手間が省けていい。こんな感じだ。

 こいつらは、クソ。もしくは、クズ。あるいは、カス。

 残念な事に、その凶行を止める者は居なかった。白髪にくたびれた灰色のスーツを纏う、ただ一人を除いて。

「あー、こらこら、ちゃーんと洗った靴で上がらないとダメだよ。あー、そもそも、体育館で室内シューズ以外の使用は校則で禁止されているはずだ」

 ああ、こんな先生まだ居るもんだな。他の教師が生徒達の評価からビビって――何せ学校に親が乗り込んでくる時代だ――注意できない中、いかにも大人しそうな方が注意をする。

 残念ながら上級生からのブーイングが飛び交ったが、老教師は確かな声で続ける。

「僕はね、えー、君たちサッカー部が嫌いで言っている訳じゃない。この学校が大切だから言ってるんだ」

 しかし、彼らはにやにやしながらボールを蹴り続けている。こいつら……。人が注意しているのに止めないとは……。

 野次も加熱し、さすがの堅物もそろそろ折れるかと思ったその時、

「おい、貴様らぁ! 話聞かなかったこと後悔させたろか! 母ちゃんに泣きついても遅いぞ!」

 マイクを使っていないはずなのに、サッカー部の挨拶に勝る怒号を飛ばした。最前列で居眠りをしていた者は和太鼓の演奏でも始まったのかと錯覚したという。現に、30に及ぶクソ・クズ・カスもボールを溢したり、明後日の方へ飛ばした。

 余りの迫力に全校生徒が目を見開いていると親愛なる貴族ご一行は2年生を残し、悪態をつきながら退場した。生徒会は心の中で下品なジェスチャーをしていたに違いない。腕章を着けた男子が控え目に、しかし素早く親指を下に向けるのを見て確信した。

 そうして取り残されてしまった金魚のフンは、部活動の実績について粗方語り終えると一礼して退場した。

 あの先生に付いていってもいいな。今の時代にしては珍しい先生だ。是非教えを乞いたいところだ。

 余談だが、まともな実績は4年前のものだった。過去の栄光だ。


「では、最後に下位文化研究部お願いします」

 文化部も運動部も、1通り説明は終わったが、特にめぼしい部活は無かった。高校に入ってからも陸上を続ける気は全く無かったし、文化部に期待していたのだが特に魅力的ではなかった。

「こいつはストレートだな……」

「サブカルについての部活ですね。実は数年前に新聞で取り上げられていて、僕もそれを読んで――」

 隣に座っていた太目の男が話しかけてきた。同じ歳だろうが、俺よりも1回り大きい。それを加味してもこの発汗量は異常だが……。

「ああ、サブカルチャー」

 首を男の方向に捻って適当に返事をすると目を前に向けた。俺の趣味と言えば賭け事くらいだ。今となってはカードを配る仲間も居ないが。暇さえあればトランプきって、部活中でもポーカーやってたな……。

「あー、下位文化研究部です」

 中学の頃の思い出に浸っていると“サブカル部”の活動紹介が始まっていた。どんな先輩だろう?

「えー、僕が文化部顧問の内村です」

 前に出てきたのは先程、強烈な説教を実行した先生だった。

「ちょ……。あの先生か……」

「下位文化研究部はー、今のところ活動しておりません。2年前のー、あー、先輩方は文化祭に展示物をしてました」

 落ち着いているのか緊張しているのかよくわからない口調で続ける。

「今年中に、えー、何かを展示するというのは難しいと思います。1年間は表立つ活動は何もできません。それと、あ、部員も部長も募集中です。入部届けとか面倒だけど一応書いてきてね。結構大事だから。以上です」

 他の部活のように資料や制作物をを出したりはせず、さっと教師用の席に戻っていった。

「お、面白そうですね。入部しようかな、というかそのつもりで入学したんですけど。僕は佐和田宏明(サワダヒロアキ)って言います。君は――」

 さっきの男が一息で言い終えた事に少々驚きながらも、名乗っておくことにした。

「俺は小早志大地(コバヤシダイチ)。面白そうだから俺も入部するつもりだ、よろしく」


 それが6ヶ月も前の事だった。今や文化部は4名、よく言えば少数精鋭ってとこだな。

つまりは「冴えないオタク達が決起して、自分達をバカにした人を見返す」お話です。コメディでやっていきたいです。遅筆ゆえ、更新ペースはゆっくりです。誤字脱字がありましたら報告お願いします。

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