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第5話 修学旅行・中編★




 修学旅行2日目。  




 この日は朝から学年全体で海岸沿いに向かった。


 ホテルからバスで15分足らず。すると、綺麗で美しい海が見えてきた。


「うおーっ、海じゃん!久し振りだゼイ☆」

「私、去年行ったさ。」

「貴方を追って修学旅行~喜びの日本海~♪」

「替え歌作るな~!!」


 そんな姿を逞真は楽しそうに見詰めた。













「はい、それではこれから海岸沿いをサイクリングロードを通して渡っていきたいと思います。5分ほど歩いていくとレンタルバイクがあるので皆さんでそれに乗っていきましょう。」

『ハイ!!』


 生徒たちはそれぞれ班ごとで歩き出した。地図を見て各自で場所を探すのだ。


「よし、俺らこっち行こうぜ☆」

「え、でもみんな違う方向・・・・」

「いいんだっ!冒険しようぜ、楽しいじゃん!!」

「わかった!!冒険心だけで進むぞ!!」


 みたいな班。真面目に地図通りに進む班。それぞれ楽しそうだった。


 一方逞真は目的地を先回りして生徒たちを待っていた。


 10分ほどして最初の班が到着した。1組の班だ。


「あーっ駿Tだ。ただいま♡」

「・・・お帰りなさい。」

「きゃー!!先生可愛い!!」


 逞真は苦笑しながら名簿に印をつけた。


「先生、この後は何してたらいいんですか?」

「あぁ、あっちでレンタルする自転車を選ぶんだが、まだ少し早いからそこで待っててくれ。案内する。」


 逞真は建物の中に案内した。


「中は土産とかあるから買ってもいいぞ。」

「は~い。」


 外に戻ろうとドアに振り向くと、その時ある人が目に留まった。


「おとう、コレ買って。」

「んー?」


 逞真は目を見張った。


「お、お前は・・・!」


 そちらも逞真に気づいて振り向いた。案の定驚いている。


「達之介!?」「駿!?」


 ほぼ同時に叫ぶ。


「なにやってんだオメェ。」

「そっちこそ。なんだその子供は。」

「俺のガキだよ。ほら、賢志郎(けんしろう)挨拶は?」

「おはようございます。真田賢志郎です。よろしくです!」

「ほぅ・・・礼儀正しいんだな。賢志郎か。親子そろって凄い名前だよ。」

「だろ。」

「歳は?」

「今年で4歳だ。」

「つまり、前に再会した時はもう結婚していて子供もできていたと。」

「そういうこったなw」

「あぁそう。」


 逞真は呆れたように達之介を見る。


「おとう、この人だれ?」

「あー、おとうのむか~しの友達だよ。駿ってんだ。」

「そっか。おとうがお世話になりました。」


 賢志郎はペコッと頭を下げた。逞真は苦笑する。


「いい子だな、お前の息子。」

「い、いや・・・そこ褒めるとこじゃ・・・。コラ賢志郎!余計なことすんじゃねぇよ。」

「だってぇ~。」


「達之介は旅行か?」

「そ。警察庁に休暇もらえてさ。チビと二人で来た。」

「そうなのか。幸せそうじゃないか。」

「うん。現にそうだ。」


 微笑んだその時生徒が顔をぬっと覗かせる。


「駿T-?なにやってるんですかぃ??」

「お、お前たち・・・」

「結構な人がもう到着してるよ。」

「あぁ、済まない。今行く。」


 達之介はプッと笑った。


「そっか。駿中学の先生だっけ。ってことは修学旅行とか?」

「うん。3年生を受け持っていてな。」

「お前こそ幸せそうじゃん。早く行ってやれよ。」

「あぁ。・・・あ。」


 逞真は思い出したように達之介に耳打ちした。


「俺、萌と結婚したよ。今妊娠中だ。」

「マジか!そりゃおめでとうだな!!」

「ありがとう。」

「これからも幸せに生きろよ。」


 達之介が逞真の背中をバシッと叩くと


「痛いって・・・。お前もな。」


 と逞真も微笑んだ。


 そして、生徒たちとともに外に向かった。




























 サイクリングロードは自然保護地域に登録されていて、花々があちらこちらに咲いていた。


「涼しい~!!」

「花は綺麗だし!!」

「しかもほら、あっちには海が見えるよ!!」

「あ、例の喜びの日本海?」

「そ!あれウケるよなww」


 



 そして最終的についたのは砂浜だった。


「ここはわかるだろうが陸の端だ。内陸に住んでいる私たちにとってある意味珍しいことだな。」

「はい!」

「ズバリ先生、一つ言っていいですか?」

「あぁ。なんだ?」

「この場所は昔、湖だったそうですが、陸が崩れて海と繋がったんですよね?」

「よく知ってるな、はかせ君。」

「流石~☆」


 はかせ君はメガネをクイッと上げてフッと笑った。


「少し、調べたものですから。」

「そう言う関心はいいことだぞ。そういえば、私の子供のころはまだ湖だったが、何も関心などなかったな。」


 不意に風が吹き、海の香りが鼻についた。


























 2日目の夜のこと。



 3組の男子たちのある班は、ある作戦を練っていた。


「なぁ、こういうの難しそうじゃね?」

「どこで見っけた!?」

「塾のハイレベル問題。入試通用だとよ!」

「こりゃいいや!ヒヒヒ・・・・」


「・・・なにしてんの?」


 同じ班の元喜(げんき)がトイレから帰ってきた。


「あっ元喜!アンタも手伝って!」

「な~にをぅ?」

「この看板作って!文字はプリントしてあるから。」

「・・・”ドッキリ大成功!”?誰にドッキリすんの?」

「駿Tだよ駿T!寝起きドッキリ!!」

「夜、寝てる間に忍び込んで、多分すぐ起きると思うからその時にこの難問を出すんだ!」

「なになに?図形みたいだけど、凄い難しいね。なにこれ。」

「入試レベル!Aの長さとBの長さとCの面積を求めるんだ。これを寝起きでどれだけの速さで解けるか!面白そうじゃね!?」

「確かに。怒られそうだけど。」

「いいじゃん。な?早く作って!」

「ちなみに答えは?」

「えっと、回答によるとAは42、Bは62、Cは868だって。ホントかよ。」

「なんか楽しみだな。」

「んじゃ作業に戻ろうぜ!」


















「でさぁ、その例のホテルで起こったなんだけど・・・・・」


 ここは別の部屋。波音、花帆、美悠、妃那、実留が集まって何やら暗い部屋で話をしている。


「Aさん(男性)が8時から9時の時間帯にトイレに行ったんだって。そしたら・・・・青ざめた顔した髪の長い女の人が睨んでたんだって!」

「いや~・・・」

「それで?」

「Aさんはただなんで女性が男子トイレにいるのかなと思っただけでそのまま通り過ぎたんだけど、しばらくして、温泉に向かおうとしたときにまたその人を見たんだって。何か探してるみたいでAさんがどうしましたって訊いたら、その女の人、こう言ったんだって。・・・・「私の足知らない?」って。よく見るとその人、足が・・・足がなかったの!!」

「ぎゃー!!」

「って、実留のお姉ちゃんの友達の妹が言ってたんだって。」

「なんだ、結構遠い関係じゃん。」

「ねぇ・・・なんか寒くない?それになんか気持ち悪い・・・・」

「ははww波音は弱いからなぁ!」


 花帆が茶化すように言いながら立ち上がる。


「ほら、駿Tのとこ行こ。体調悪いなら。」

「ありがと・・・・」

「なら私らもご一緒するよ。」


 ってことでこの班全員で逞真の所に行くことにした。


 ドアを開けると斉藤先生を見かけた。


「斉藤先生!駿Tどこか知りません?」

「あぁ、駿河先生なら先生方のいる部屋で留守番してるよ。」

「へー、暇な仕事ですね。」

「コラ、毒舌平原。そんなことねぇって。ほら、あっちの205号室だから。」

「ありがとございまーす☆」


 言われるがままに205号室へ。





 コンコン






 ノックをしても返事がない。


「あれ、まさかの留守??」

「でも・・・」


 ガチャ


「鍵開いてるけど。」

「あ。」

「もう、入っちゃおうよ!波音だってほら、危険な状態。」

「うぅ・・・」


 彼女たちはその部屋に入った。


「失礼しま~す・・・・」


 中ではベッドの上で規則正しい寝息が聞こえた。


「駿・・・T・・・・ですか・・・?」

「みたいだね。」

「・・・・・・」


 逞真は布団も掛けずに寝そべってそのまま寝入ってしまったらしい。


「うわ、なんていい寝顔。」

「アンタ変態か!」

「だってぇ。でもさ、こういう人って寝顔は優しげだていうけどさ、駿Tの場合、なんか違うよね。」

「確かに。あの無愛想が目を閉じた感じ。そのままだわ。」

「・・・起こしちゃう?」

「いいよいいよ!こんな気持ちよく寝てるとこ起こすまで私体調崩してないから。」

「そっか。」

「んじゃ、戻るか。」

「失礼しました・・・・」


 静かにドアを閉めて、溜息を吐く。


「どうしたの?」


 翔が現れた。


「あ、実留の彼氏。」

「本人の前で言うな!」

「で、どうした。」

「波音が体調崩したから駿Tのとこ行こうとしたけど、寝てたみたいよ。」

「マジ!?駿T寝てたの!?」

「うん。そんなに驚くこと?」

「いや、これにはわけがあって・・・・。勝!」

「ん、なに。」

「駿T寝てたってよ!今がチャンスじゃね?」

「おぉ!やるっきゃないね!!」

「ちょっと班の奴連れてこようぜ。」

「待ってて!!」


 勝が部屋に戻る。


「・・なにがどうした。」

「あ、説明するよ。」


 翔は寝起きドッキリについて説明した。


「何それ!?バッカバカしい!」

「そんなことしなくても駿Tは頭いいでしょ。」

「でも誰かに寝起きドッキリしてみたかったんだよ。そしたらあの人しか浮かばなくて。」

「フフ♡寝起きドッキリ~♪」

「花帆は幸せそうなこと。」

「面白そうじゃん!」

「もう、波音が体調不良だってこと忘れてるでしょ・・・・」


 




 そして諸君が集まり、205号室の中へ。


 そっとベッドに近づくと確かに逞真は寝ていた。


「こりゃいいや。誰かデジカメもってない?」

「俺持ってる♪」

「デカした!!」


 ニヤケながら男子たちはデジカメのシャッターを押す。


 カシャッ


「あ゛。」


 しくったことは、フラッシュ機能がオンになっていたこと。その光とともに、逞真の体は動いた。


「う・・・・ん・・・・・」


「ヤベェ・・・」

「でも、後でいい報告できるなb駿Tの寝顔・・・・」

「ちょっと静かにしてッて!!」


「ん・・・・なんでいるのお前。」

「ギクッ!!!!!!」

「起きちゃった!!」


 逞真は目をこすりながら、生徒たちを見やる。


「こうなったらやるっきゃねェ!駿T、この問題解いて!!」

「・・・は・・・?」

「いいから解いて!」

「・・・・・?」


 逞真は何が何だかわからないまま、その問題集を見詰め、目を細めた。


 そして溜息を吐いてじっくりと問題集を眺めた。


 沈黙が続く。逞真は胸のポケットからペンを出し、素早く計算式を解いた。


「は・・・速・・・・・」

「ってかほぼ暗算して本当に必要な式しか書いてない。」


「・・・出た。A=42B=62C=868。・・・合っているか?」

「まるっきり正解・・・。何秒!?」

「1分24秒・・・・」

「流石駿T!凄いよ!!」


 逞真は首をゴキゴキ鳴らし、面倒くさそうに彼らを睨んだ。


「一体なんだっていうんだよ。」

「あ、忘れてた!元喜!!」

「うい。」


 看板を出す。


「寝起きドッキリ大成功!!」

「イエ~イ☆」

「・・・ドッキリだと?」

「そ!寝起きで何秒で難問を解けるか!」

「そんなもの・・・たかが入試レベルの問題だろう?教師をナメるな。」

「スンマセンでした・・・」


「悪いが、私は寝起きが悪いたちなんだ。気分が優れていない。」


 逞真はTシャツの袖を肩まで捲り上げ、再び目をこすった。生徒たちは”色気ヤバ・・”と思った。


「だが起こしてくれて感謝する。用はこれだけか?」

「あ、いえ!波音がですね!怪談話してて気分悪くなりました!」


 逞真は苦笑い。


「ったく、なにしてるんだ。気分悪くなるまでしたら駄目だろうが。」

「でも、そこまでしてないんですよ。一個話しただけでこんな感じ。」

「ごめんなさい・・・」

「霊感感じる奴?お前。」

「わかりません。でも、こういう話になるとすぐこうなるんです。」

「そうか。待っていろ。」


 逞真は立ち上がり、傍にある自分のジャージを波音に羽織らせた。


「これでも着てなさい。」

「ありがとうございます。」

「いいなー、波音。」

「・・・駿河先生の匂いがする。」

「お前!なにエロいこと言ってんだよぅ!NGワードだろ!!」

「え?そうかな?思ったこと言っただけなんだけど・・・・」


 逞真はフッと笑った。


「むやみに修学旅行先で怪談話をすると、危ないぞ。」

「え?なんで??」

「こういうところにはやたらといるらしいぞ霊が。ここはどうかわからないがな。」

「マジっすか!?」

「どうしよ・・・呼び寄せちゃったかな?」

「イヤー!!!」


 その時、ドアがバンと開く。


「先生助けて!」


 賢吾たちであった。


「なんだ?一体どうした。」

「さっき・・・変な人影が・・・・」

「え!?」

「まさ、まさまさまさか・・・幽霊!?」

「ちょっと待て。落ち着け賢吾、順序を説明しなさい。」


 賢吾は息を切らせて、その場にかけた。


「さっき、俺たちでトイレ行ったんすよ。そしたら黒い人影がいて、しかもこっち睨んでたんです。あと、足があったようななかったような・・・・だから不安に思って!」

「そ、それって・・・・」

「幽霊だよ!あれ絶対幽霊だって!」

「なぜそこまで言い切れる?」

「だって、私たち怪談話したって言ったじゃないですか。その内容が、ほぼそれだったんです!」

「もしかして・・・その噂のホテルがここだったりして!」

「落ち着けって。そんなもの偶然かもしれない。賢吾、それはまだ男子トイレにいるのか?」

「いや、気付けばいなかった・・・・」

「確かめてみないとわからないしな。行ってみるか。」


 逞真が立ち上がると皆もスタンバッていた。


「なんだ、お前たちも行くのか?波音が体調崩しているのに。」

「あ、私は部屋で休んでるので大丈夫です。」

「だって!早く行こう!!」


 逞真は少々呆れながらも、いくことにした。


「話でいくと、温泉に向かう途中に幽霊はいるはずなんだよ。」









 温泉のほうに向かうと、弱弱しい声が聞こえた。


「ない・・・ない・・・・」


 生徒たちは不気味に思って逞真の背後に隠れる。


「な、なに!?」

「少しは落ち着いたらどうだ?」

「先生のほうが尋常じゃないですって!」

「誰?暗くてなんもわかんない・・・・。」


 近づくにつれて、声は大きくなる。


「ない・・・ない・・・!」

「何がないの!?」


 妃那が言うと、その声は反応したかのように言った。


「あしが・・・あしがないんだよ・・・・あし知らない?」


 生徒たちは青ざめて逞真のTシャツをグッと掴んだ。


「おい、服が伸びるだろう。」

「だって、今の聞いたでしょ?足がないって言ったよ!」

「やっぱり幽霊!?」


 その霊(?)はまだ言い続ける。


「ない・・・僕のあしが・・・・」


 逞真は眉間にしわを寄せた。


「”僕”・・・・」


 そして、自分のライトを出してそこを照らした。


「・・・・あ。」


「・・・皆見てみろ。幽霊ではないぞ。」


 そこで照らし出されたのは・・・・・


颯天(はやて)・・・!」


 3組の男子・海田颯天(かいだはやて)だった。


「颯天はここで何してるんだ?」

「あ、駿Tだったんだ。びっくりした。みんなもどうしたの?」

「それはこっちの台詞だよ!こんなとこでなにしてるんだよ!」

「だーかーらー、僕のあしがないんだって。」

「足ならあるじゃん。」

「こっちの足じゃなくて植物の葦。」

「??」


「お前たちもサイクリングロードで見ただろう。植物を。その中に葦と言う植物があったんだ。」

「そう。んで、体験場所で葦の赤ちゃんもらったからさ、大事にとっといたのにどっかいっちゃって。知らない?」

「知るかよ!!」

「うわ、ひどいなぁ。そこまで言わなくてもいいのに。」

「じゃあさ、トイレにいたのも颯天なの?」

「うん。なんども賢吾を呼んだのに返事くれないから睨んでたの。」

「全く!お前童顔だし声変わりしてないから女だと思ったじゃん!!」


 逞真は溜息を吐いた。


「やはりむやみに怪談話をするものではないな・・・。」












 





 P.S





 颯天の葦は、荷物の中に、それこそ奥のほうで大事に大事に残っていたらしいです。


 また、生徒が撮った逞真の寝顔写真は一部の生徒や教師の中で物凄く盛り上がり、一躍有名になりましたとさ。



 チャンチャン♪






次回でいよいよ後編です!

次回もよろしくお願いします☆

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