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第3話 シンボルフラッグ





「絵具、どこだっけ?」

「何色ー?」

「青、青!」

「は~い」


 ここは技術室。2年生数名が集まっている。


「え~と、設計図は・・・あ、やっぱもっと濃い水色だよ。見た感じその方がいい。」

「さっすが美術部!こういうこと向いてるね!それに比べて俺たちは・・・」

「クラスのために学級旗作るってことで毎年やってて、今年はなんかめっちゃやる気になったから制作委員に立候補したけど、やっぱ才能とかあるのね。」


 そう、この時期学級目標の入った学級旗を各クラスで作り、順位を争うのだ。


「ねぇ、3組のヤツってどんな感じ?」


 2組の制作委員がやってきた。


「最終的にはわかるよ。それまで秘密♡」

「えー、なにさつまんね~!」

「よっし、だったらどのクラスも他のクラスに見せないでやってこうぜ!そのほうが面白味あるじゃん。」

「お、いいじゃん。」

「んじゃ、1組はこの場所でいいから2組は器具室。3組は機械室ね。」

「わかった☆」


 みんなそれぞれの場所に移って活動を始めた。


「でもさ、3組が勝つ自信、あるよね。」

「うん。2年生のころはイマイチで結局3位だったけど。でも今回は自信あるよ!」

「だって、全員で考えたんだぜ?」

「そうそう。駿Tには内緒にしてこっそり放課後残って話し合ったけどね。だから駿Tビックリすんじゃない?」

「んあーっ!!楽しみになってきた!」

「だから早く作ろうぜ!」


 筆を進める3組のメンバー。


「この星とかいいよね。」

「団結感があってね!」


 
















・・・・・・・・・・









「それでは、始めますか。」

「はい。」



 ここは会議室。3年生の先生たちが集まっている。1組の梅木先生が立ち上がって仕切る。


「今回の会議は、5月の修学旅行についてです。目的地は昨年と同じですので、自由行動の場所を決定させ、それから詳しい内容に入っていこうと思います。」

「去年はどこでしたっけ?」

「確か、歴史博物館や大通りの店とか自然的なところに行って、それぞれ体験学習ができる仕組みになっていたと思いますが。」

「そうでしたね。今年、どうします?」

「そもそも自主行動をさせるかどうかですね。それなりに費用と安全性も考えなければなりませんし、生徒たちができるかどうか・・・・」


 長テーブルに手を組み、逞真は意見を主張した。


「いえ、自主行動はさせるべきです。社会性を育むために毎年行っていることですし、3組の生徒はそれを楽しみに待っています。それなのに無くしてしまうと、そのほうが危ういかもしれません。」

「そうですね。今年の3年生は責任感もありますし、大丈夫でしょう。」

「問題は場所ですね。」


 少し沈黙が続き、ふと斉藤先生が呟いた。


「調べてみたのですが、今年の宿泊するホテルの近くには洞窟があったはずです。海にも面してますし、天気によっては美しく、いいんじゃないかと思います。自然に触れ合ういい機会ですので、まずここはどうですか?」

「いいですね。賛成です。」

「私もです。」


 他の先生も賛成した。


「では一つの案はこれで。」

「はい。」

「あ、自然といって思い出したんですけどいいですか?」

「はい。なんでしょう駿河先生?」

「その地域といえば海岸線ということで普段私たちは川や山の中で暮らしていますからいい機会ですよね。それは斉藤先生もおっしゃっていました。その海岸線は一部サイクリングロードができていました。ですので、学年全体ではそこに行けばいいのではないかと。どうでしょうか?」

「それは、自由行動の件について話し終えた後に会議しようかと思っていたことですが、駿河先生のキレる頭で早く決まってしまいましたね。」


 会議室にちょっとした笑いが起きる。


「どうですか?」


 全員の賛成。逞真は微笑を浮かべた。


「急にすみませんでしたね。では話に戻りましょう。」

「では、昨年と同様、歴史博物館と大通りは利用しましょうか。」

「はい。」

「では、それで一段落としましょう。次は・・・・」








 修学旅行についてだんだんと進んでいくのであった。















・・・・・・・・・・・・





「よし!上出来じゃね!?」

「4日間でこんな早くいくとは!」

「甲斐があったっつーか♪」

「ってか、すんげーよ俺らの!」


 顔やジャージを絵具だらけにして、3組のメンバーは満足そうな顔をした。


「ねぇ、早速駿Tに見せたくない?」

「そうねー。今日会議とか言ってたけど終わったかな?」

「終わったとしても部活行っちゃったとか?」


 伊月が首を振る。


「ううん、それはないよ。女バス、休養日で明日まで休み。ほとんどの部員が制作委員に行っちゃって数人しか残ってなくてさ。意味ないからって休みにしたんだ。」

「そっか!なら会議終ってればイケるね♪」

「んじゃ、代表2人で職員室行こうぜ☆」

「よっしゃ!」










 職員室・・・・・



「失礼しま~す。あ、駿河先生!」


 パソコンに向かう逞真が顔を上げた。


「おう、どうした?」

「ちょっと来てください!」

「は?お、おい!」


 生徒たちは逞真の腕を引っ張って、2階から1階の技術室に向かった。


「ったく、一体なんだ?」


 ガラッと扉を開けると、各クラスの制作委員がこちらを向いて”うわ~、3組もう終わったの!?”と嘆いていた。


「あぁ、そうか。学級旗・・・。そういえば、全然話し合った形跡はなかったが大丈夫だったのか?」

「当ったり前じゃないっすか☆じゃないとわざわざ駿T呼びませんって!」

「?そうなのか。」


 不思議そうに機械室に入ると3組の制作委員が手招きして笑顔を見せた。


「待ってました駿T!見てください!!」

「あ、あぁ。」


 言われるがままにその大きな絵を見ると、逞真は思わず目を見開いた。


 その旗に描かれた絵は、逞真の想像を超えていた。


 背景は群青色で神秘的なのに対し、その中で輝く星たちが明るかった。しかもその星のなかは字が書かれており、それはそれぞれの名前の頭文字だった。それを優しく抱えるかのように下のほうには上手くデッサンされた手が書かれていた。


 逞真はふと思って、途端にフッと笑った。確か、この手は美術部の中でも上手いほうの李杏(りあん)が逞真をモデルとして書きたいと言ってきたものを写した感じだった。すべてはこのためだったらしい。

 

 一番上には目立つ感じに”34isformedbytheteacher”とバランスよく書かれていた。


 念のため、訊いてみた。


「この手は、私なのか?」

「はい!んで、この星は私たち。わかりました?」

「まぁ、頭文字が書かれていればそれはな。」

「俺たち、とうとう星に・・・・」

「馬鹿は黙ってよ~ね~?」


 ベシッと頭を叩くいい音が鳴る。


「いてっ」

「芽依子、それ以上紘一郎を叩くと手の力だけ上がってしまうぞ。男かお前は。」

「せんせ、そんな冗談ばっか言ってると、先生のことも叩いちゃうよん♡」

「・・・・やめておく。」

「そ。(ニヤリ)」


 気を取り直して逞真は再び旗を見た。


(本当にいい出来だ。どうして、知らぬうちにここまでできるのだろうか?やはり、いい子たちの集まりだ。)


 穏やかに微笑む逞真に生徒たちはニコッと笑った。


「どうですか?」

「いいぞ。傑作だ。これは1位を狙えるかもしれない。」

「聞いた?駿Tのお墨付きだよ!!」

「やったー☆」


「それはいいんだが・・・・・」


 逞真は辺りを見渡し、苦笑した。


「この様をどうにかしないと、松田先生が困るぞ。」

「あ゛、そうだ!賢吾!あんたたくさんこぼしたでしょ!!」

「お、オレ!?」


 そんな様子を見ながら、逞真は再び微笑んだ。最近、逞真の表情は豊かになりつつあるようだ。






















 結局、3組の学級旗は副担任の評価により、1位になった。













次回もよろしくお願いします☆

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