第2話 駿河学級・再び
4月の新学期当日。逞真は暖かな日差しと舞い散る桜の中で深呼吸した。
「今日から、また新しいスタートか。」
「駿河先生、おはようございまぁ~す!!」
「おはよう。」
逞真は微笑んで学校に入っていった。
教室の扉を開けると、見慣れた生徒たちがわいわいと騒いでいた。
「あ、駿Tだ!おはよーです!」
「おはよう。初っ端から元気がいい連中だな。」
「へへ♪だってまたこのメンバーで集まれるの、めっちゃ楽しみにしてたんだもん!」
「フッ、そうか。」
そして、朝の会の時間になった。
「気を付けー、おはよーございまーす!」
『おはよーございまーす!』
「はい、おはよう。というか、またこれからも宜しく、だな。」
生徒たちは頷いた。
「持ち上がりで再び同じメンバーだ。まぁ、それだけ団結力はあると思うし、いいスタートだと思う。・・・そこでなんだが、君たちに一つ、謝っておく。済まなかった。2年生の時は物凄い迷惑をかけてしまったな。」
「まったくぅー、もういっかい言わせないでよ。全然気にしてませんって!」
「むしろ、あれがあったおかげで団結力が深まったわけだし♪」
「しかし、それでは私の気が済まないんだ。だから恩返しのつもりでお前たちにこの一年間、たくさんの思い出を作っていきたいと思う。いいか?」
『はいっ!!』
声を揃えて返事をした生徒たち。逞真は微笑んだ。
数日後の学活の時間・・・
「はい、それでは今日の学活は係り決めと学級目標について決めたいと思います。」
「キター!」
「待ってましたっ☆」
盛り上がる一同。
「どうする?目標から決めちゃうか?」
「はい!そのほうがいいです。」
「そうか、なら委員長中心に決めてくれ。時間は10分間。」
生徒たちは話し合い始めた。
「どうする?」
「まず、どんな感じがいいかな?」
その姿を逞真は窓側に寄しかかりじっと見ていた。
「う~ん・・・・・・あ。」
賢吾がポンと手を叩いた。
「この学級、34人だよね?」
「うん。」
「ねぇはかせ君、成立するって英語でなんていうの?」
はかせ君は独自のメガネをくいっと上げ、言った。
「ズバリ、beformed~ですな。」
「な~る。beって、未来形でも現在形でも過去形でもなるってこったろ?よし!わかった!!」
賢吾は立ち上がった。
「んじゃ、賢吾。言ってみて。」
「うぃっす☆え~と、34isformedbytheteacherってのはどう?」
逞真は思わず目を見張った。
「え、どうゆー意味?」
「34人は、一人の先生で成り立ってるってこと。その一人の先生は勿論・・・」
賢吾は逞真のほうを向いた。
「いいねっ!一人の先生で成り立ってる・・・・ってことは先生とうちらが孤立しちゃだめで、34人が必ずいないとだめってことだよね?」
「そういうことっ!」
「みんなどう?」
生徒たちは拍手した。
「駿T、どうっすか!?」
逞真は沈黙していた。
「・・・駿T?」
「あ、あぁすまん。いいんじゃないか?2年生のころの過ちを上手く目標に置き換えている。」
「ホント?やったぜ☆」
「この目標を忘れずに、これから頑張ってくれよ。」
『はいっ!!』
本当の所、逞真は予想外で何も言えなくなりそうだった。ふつうなら、一致団結だとかそういう目標が多いけど、3組らしさが出ていて、傑作だと思ったのだ。それに、本当に自分のことを許してくれているんだなと、感じたのだ。
「では次に係り決めに移る。黒板に書いていくから、やりたい係りの所に自分のプレートを置いてくれ。」
逞真が書いた係りの横にどんどんプレートが置かさる。気づけばほぼ人数ぴったりになっていた。
「・・・驚いたな。一発で決まるとは。」
しかし、一か所だけ、残っているところがあった。生徒会本部役員だ。普通なら引き続き以前の役員がやるものだが、空いているのだ。はかせ君のプレートはある。・・・・花帆だった。
「・・・花帆はやらないのか?」
花帆は頷いた。
「しかし、それではうまく係りが決まらないぞ。」
「花帆はやりません。絶対に、しません。」
花帆がこんなに物事を強く願うのはよっぽどのことだった。逞真は物思いに花帆を見詰めた。その時、チャイムが鳴り、学活は終了した。
「では挨拶省略して休み時間に入ってくれ。」
皆が立ち上がる中、逞真は花帆を人気のない廊下に呼び出した。
「・・・何故、やりたくないんだ?」
「やらなきゃだめですか?他の人に頼めません?」
「なにもそんなことは言っていない。だが、花帆は生徒会を楽しんでいたからこのまま続けるのかと思っただけだ。」
「・・・・勉強と、部活と、生徒会の両立が大変だったってこともあるんですけど・・・・」
花帆はきゅっと拳を握った。
「両立が大変なんじゃなくて、部活に貢献しなきゃないんですっ!」
「部活に貢献?花帆は合唱部だな。室川先生が言ったのか?」
「違います。自分で決めました。」
「どうして貢献したいと思ったんだ?3年生になるからか?」
首を振る花帆。
「それも一理ありますけど、でも、波音が・・・」
「波音?」
「先生知ってます?波音、部長になったの。」
「あぁ。」
「波音ひとりで大変だから親友の花帆が助けてあげないと思って。それに波音、家でも・・・っ!!」
「家・・・?」
花帆はハッとして口を噤ませた。
「なんでもないです。とにかくやりませんから。」
「わかった。3年生の他の皆にも協力するよう言ってみる。」
「ありがとうございます。」
花帆は教室に戻っていった。
逞真はこの時点で、なにか騒動が起きそうな予感がしていた・・・・
次回もよろしくお願いします☆




