転生されたら淑女になった あらすじ 第1話
〖転生されたら淑女になった〗
作者ボブ・マッケイ
【あらすじ】
かつて、一台のバイク、一本のボルトにすら魂を宿すと信じ、慈しみ続けた伝説の整備士がいた。
その名は、只野翔一(67歳)。
鍛え上げられた細マッチョな肉体と、いぶし銀のダンディズムを纏った男は、愛車「鯨(GPZ1000RX)」と共に、静かにその生涯を閉じた……はずだった。
次に目覚めた時、彼は異世界の銀髪美少女、**ルイ(15歳)**として再起動を果たす。
父は300歳の超戦士ガルロ、母は500歳の至高の魔導師エシス。
規格外の両親に囲まれ、言葉を介さない「思念」での対話が日常の静かな家庭で、ルイは気づいてしまう。
「この世界の理、ひどい手抜き工事じゃねぇか」
職人の目から見れば、魔力の配管は詰まり、物理法則の建て付けはガタガタ。
放置すれば崩壊を待つだけのこの世界を、ルイは自らの手で「全リフォーム」することを決意する。
内なる相棒、原初の闇『アンタッチャブル乙女』を究極の過給機として心臓に組み込み、淑女の皮を被ったナイスシニアが現場に立つ。
普段は物静かで気品溢れるお嬢様。
だが、世界の歪みを、人を、道具を汚す輩を前にした時、彼女の口からは前世の記憶に刻まれた「ギャル言葉」が爆発する!
「あーのさぁ……マジで空気読めてなくね? アデューッ!」
これは、最高にダンディな魂を持った淑女が、伝説の特殊工具(大刀)を手に、ボロっちい世界をスマートに叩き直していく、異世界・再構築ファンタジー。
第1話:最期の残響、そして産声
「……さて、行こうか。相棒」
俺、只野翔一(67歳)は、愛車「鯨(GPZ1000RX)」のタンクを軽く叩いた。
革ジャン越しに伝わる自らの肉体は、長年のメンテナンスと節制によって、若造には負けない程度には引き締まっている。
人生の酸いも甘いも噛み分けてきた。残りの時間は、こいつと静かに流れる景色を楽しめればそれでいい。そう思っていた。
だが、運命というやつは時として、最高のコンディションの時に限って牙を剥く。
コーナーの先に広がっていたのは、避けようのないオイルの染み。
滑り出す車体。視界が急速に傾く中、俺の心は驚くほど静かだった。
パニックなど、素人のすることだ。俺は鯨の震えに寄り添い、衝撃をいなすための最適な姿勢を、呼吸を合わせるようにして選んだ。
ガシャリ、と世界が砕ける音が響く。
アスファルトの熱と、遠ざかる排気音。
(……悪くない人生だった。あばよ、相棒。あとは頼んだぜ)
暗転。
そして、次に俺を包んだのは、柔らかな光と温もりだった。
「――見て、ガルロ。この子の瞳、なんて深くて静かなのかしら」
「ああ、エシス。まるですべてを見通しているような、賢い目だ」
目を開けた俺の視界に飛び込んできたのは、神話から抜け出したような絶世の美女と、巨岩を思わせる屈強な男だった。
美女が俺を抱き上げ、慈しむように微笑む。その長い耳が揺れた。
(……転生、というやつか。それも、ずいぶんと賑やかな場所へ来たもんだ)
声を出そうとしたが、漏れたのは赤ん坊特有の産声。
小さな、白い自分の手を見つめ、俺……いや、ルイとしての新たな「現場」を確信した。
67年の経験を抱えたまま、俺は淑女としての第二の人生を歩み始めた。




