名家のお荷物として生まれてきましたが
私ーーミレアは名家のお荷物として生まれてきました。
ミレアという人間ーー私は、生まれてきた事が間違いだと言われ続けてきました。
この世に生を受けてから、存在を歓迎されたことはありません。
私が生まれたその家は、国の中では知らない人間などいない名家です。
生まれてくる者達はみな、すぐに何らかの才能を発揮し、周囲の人たちを喜ばせ、期待されてきました。
けれど、私には何の才能もありませんでした。
だからなのでしょう。
兄や姉は私に石をなげ、物を隠し、悪口や影口を言い続けました。
母や父は徹底的に無視し、私が誰かと交流をもとうとすると、うす暗い部屋に閉じ込めました。
誰かより秀でている現実なんて望まない。
ただ、皆と一緒がいい。
そう望んでも、願いはかないませんでした。
神様がいるのだとしたら、なぜこんな私を生んだのでしょうか。
毎晩、与えられた屋根裏部屋の窓から、空をみて、流れ星を探しては祈りました。
努力をすれば、何かしら誰かの力になれると思った事もありましたけど、うまくはいきません。
私はお荷物として生まれてきて、お荷物として生き続けて、お荷物として死ぬのでしょう。
そう思っていました。
リアンという男性と出会うまでは。
婚約者として紹介されたリアンは私の良いところを見つけてくれました。
名家の家の娘としてではなく、人としての良いところ。
私はそれらに価値があるとは思っていなかったので、驚きました。
ずっと限られて環境で生きてきたので、当然ですね。
正直でいること。
努力し続けること。
人を労わること。
笑顔でいること。
それらは私が生きてきた家の中では、何の役にも立たないこととされていたのです。
人の価値を決めるものは、身を置く環境によってころころ変わってしまう。
なら、私の価値を見出してくれる人の近くにいた方がいい。
私はリアンの手をとって、家から出ることを選択しました。
新しい家、新しい人間関係。
それらは私を今までとは違う世界に導いてくれました。
多くの人が私の良さを見出して、必要としてくれる。
私は、自分のことをお荷物だとは思わなくなりました。
「名家のお荷物として生まれてきましたが、こんな私を妻にしてくださるのですか?」
「名家のお荷物として生まれてきましたが、こんな私を必要としてくださるのですか?」
嫁いできた当初にしていた、そんな口癖はもうなくなりました。
私の実家は名家ゆえの傲慢で、次第に他の者達からはぶられるようになりました。
最初は無視をされ、そしてうっとおしがられ、しまいには濡れ衣を着せられて、法の裁きを受ける事になりました。
才能あるものとしての傲慢さが彼らを破滅させたようです。
彼らは最後まで自分たちのどこが悪かったのかわからないようでした。
力があるなら何をやってもいいのだと、これまでうまくいっていたのだから、これからもうまくいって当然だとそう思い込んで。
だから何かの間違いだと目をそらしているらしいです。
私は新しい家でたくさんの人の囲まれながら、これからも生きていきます。
子供のころのように、誰かに意地悪されたり、無視されることなく。
ふとした瞬間に誰かと話をしたり、親切をしたりされたり、そんな当たり前の日々がとてもうれしくて。
もしかしたら夢ではないかと、怖くなりますが。
今では少しだけ自信がつきました。
私はお荷物なんかじゃない。
新しい場所で過ごす日常のおかげで、そう思える日が来たのです。




