瞳の奥の愛する君
伝える事は難しくて、声を枯らしても届かない距離。ずっと、ずっと、叫び続けた日もあった。
そんな日はいつも悲しくて、寂しくて、君の事しか考えられない。
心が叫んでいるのに、君は見てくれない。
どれだけ、胸が痛んだことか。
お願いだ。この痛みは何なのかおしえてくれ。
「どこに進んでいいのか分からない」
彼は呟いた。
アジサイが咲く季節。
彼は図書室で本を読みながら、雨が滴る音を聞きながら空を眺めていた。
「ちょっと…えっと、そこの君?」
不意に話しかけられた彼はビクッと体が揺れる。
そして、話しかけられた方に椅子ごと向けると、そこには男性が一人立っていた。
スーツはびしょ濡れの男性。
「なんですか?」
先生だと思い、彼と目線を合わせる。
「あぁ、やっと会えた…」
彼はそう呟くと、椅子から離れ、男性に抱きついた。
「え?」
男性はきょとんという顔を見せながらも、思い出すように手を彼の腰へと回す。
「覚えてる?」
彼は問う。
「ごめん、どちらさま?」
男性は答える。
「え?」
今度は彼がキョトンとする。彼は予想外の返事で少し動揺する。
「冗談だよ…久しぶりだな、司」
男性は、彼をもう一度強く抱きしめる。
「バカ………」
出会いは幾度も繰り返す。そして別れも。だが、彼らは何度も出会う。それが運命だから。