9.トレインホーム
ドアを通り抜けたら、真っ暗な廊下? とにかくあのうるさい音は止んだ。でもまだ耳の奥に残響しているような感じがする。
そして危うく階段を落ちるところだった。とにかく真っ暗で、下のほうから明かりがさしているのがわかった。下りの階段があるようだ。
まあいい、とりあえず階段を降りて進んでみるとしよう。
ところで今何時だ? さっきの場所で、どれくらい寝落ちしていたんだろうか。
そう思ってスマホを取り出してみたけど、スマホの時計はなぜか
“88:88”
という有り得ない表示をしていた。
それに相変わらず電波は圏外だ。こんな目に遭うことが分かっていれば、普通の腕時計も持ち歩いていたのに……といってもしょうがないもクソもない。
それと充電は残りが13%しかない。もうスマホは見ないようにしよう。
ともかく多少は寝れたからなのか、幾分疲れはマシになったような気もする。
それで暗い階段を慎重に降りてみると、その先にはホームドアがある地下鉄の駅のホームみたいな場所があった。
でもなにか変な感じだ。
試しにホームドアの向こう側を覗いてみると、そこに線路は無く、ホームと同じ高さにコンクリートのような床が続いている。
それと違和感がなんなのか分かった。ホーム上には、なにもないのだ。
ベンチもなければ時刻表とか広告の看板、それに柱もみあたらないし、階段やエレベーターとかも見当たらなかった。
ずっと先まで真っ直ぐで、どうりですっきりとした見通しのよい空間なわけだ。
とりあえず端までずっと歩いてみた。目を引くようなものはない。別の出入口のようなものもなあい。ホームの端はただの壁。そしてホームドアの向こう側にはトンネルが続いている。
思い切ってホームドアを乗り越えてみた。線路がなくてただの床ないのだから電車が現れて轢かれるなんてことはないと思うけど。
トンネルの中は小さな白い照明が不規則に灯っている。まあ、進めなくはないかって感じ。
四角い断面のトンネルで、たぶんコンクリートの壁。いかにも地下鉄っぽい感じ。でも線路もないし、照明がある以外には、なにも無さそうな感じ
進むしかないか……今さら引き返すなんてしたところで、どうせ戻ることもできないだろうし。
それによく目を凝らしてみれば、ずっとトンネルの先に外の光のようなものが見えた。




