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Proof Blue  作者: 菅原やくも


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7.アパートメント

クリーム色の壁、白い蛍光灯、灰色の階段。


いかにも非常階段という感じの階段……コンクリートとかじゃなくて、鉄でできているようなやつ。それで上下どちらにも続いている。歩いているとカコンカコンと足音が響く


手すりの隙間から覗いてみると、下のほうも上のほうも、果てが見えないくらいに続いているように思えた。


とりあえず登っている。地下へ進む気になんてなれないし、こういう時はとにかく上を目指すのが最善というものだ。


上に向かって進んでいても階数とかの表記は無い。


そうして、どれほどの時間を使ったのだろうか? 上っている途中で見つけた焦げ茶色のドアの先には、まるでホテルの廊下のような空間があった。


等間隔でドアが並んでいるけど、試しにドアノブに手を掛けたけどびくともしなかった。


どの部屋のドアも開かない。ノックをしてみても反応はなかった。部屋番号のプレートはどれも滲んだような感じで読めなかった。


結局のとこ、突き当りまで進んだ。


そのドアにだけは


〈00637〉


という数字が割り振ってあった。これに意味があるのかは分からない。


そしてドアは簡単に開いた。


照明がついていなくて暗い、窓の閉まっているカーテンの隙間からは、かすかに明かりがさしている。


部屋の中を見つめて、目を凝らしてみると、そこにみえるものに、頭が混乱した。


アパートの部屋だ。住んでいるアパートの部屋にそっくりな空間が、ここにある。それとも、ついに戻ってこれたのか?


だけど振り返ってみると、そこには先ほどと変わらず、ホテルの廊下がみえた。


ここにあるのは偽物の部屋なのか? それともこのおかしな空間で、自分の頭の中までおかしくなってしまったのか?


部屋には、なにか奇妙な匂い、プラスチックというか薬品っぽいような、そんな匂いがかすかに漂っている。壁の照明スイッチを押しても明かりがつかない。


スマホを取りだしてライトをつけた。それからあたりを照らしてみる。


靴棚には見覚えのある靴とサンダルが置いていある。


そのまま中へ進んだ。すると後ろでガチャンと音がして、振り返れば玄関ドアが閉まっていた。


慌てて開けようとしたけど、ドアノブがびくともしない。


「おい、ふざけんなよ」


無理やり開けようとしたけど、無駄だった。


しょうがない、とりあえず部屋の中を見てみるとしよう。


洗濯機、狭いキッチン、ワンルームの部屋には冷蔵庫、電子レンジ、テーブル、ベッド……

どれも見覚えのあるものだ。


とりあえずベッドに横になって休みたい……そう思って触れた瞬間、それが偽物だと分かった。ベッドだけじゃない。確かめてみれば、家具はどれもこれも偽物だ。触ってみればはっきりわかった。安っぽいプラスチックや紙かなにかでできている。


冷蔵庫なんか片手で簡単に動かせるほど軽かった。


コンビニを見つけたときと一緒だ。偽物でできている。


なんか無性に腹が立った。まるで馬鹿にされて弄ばれているような気がした。


カッとなった勢いで、冷蔵庫やテーブルを蹴とばして、ベッドは踏みつぶしてぐちゃぐちゃにしてやった。


それと窓の外、その向こうは何がある?


閉まっているカーテンすら紙でできていた。勢い良く開けようとしただけで、ビリビリに破けてしまった。


そして見えたのは、明かりのついているアパートの部屋だった。まったく鏡写しのような部屋がそこにあった。


窓、というか枠だけでガラスも入ってない。とにかく通り抜けて部屋に入ってみた。


電気がついていて、向かいの部屋と中身が鏡写しの状態であること以外は、全く同じだった。


どうせ、こっちも作り物なんだろなと思った。


それでテーブルに蹴りを入れた瞬間、足に激痛が走った。


「っ、痛……」


触れてみれば、なにか鉄か石のようなもので出来ているみたいだ。確かめてみれば、ベッドも家電もそうらしかった。


動かせないほど重い。そんなものに蹴りを入れたら足が痛いのも当たり前だ。


傍から見るぶんには、まったく本物みたいなのに……まるで精密に作ってある彫刻かなにかのようだ。


鏡写しの部屋のほうの玄関ドアも開かなった。


どう頑張っても、びくともしなかった。


またしても閉じ込められたんだ。試しにドアスコープを覗いてみた。


すると景色がみえた。草原と真っ直ぐ伸びた道路……それから気球が空に浮かんでいる。これはなんだ? あれだ、視力検査のやつじゃないか!


まるで意味不明だ。


それからバスルームのドアを開けてみた。


でもそこにユニットバスは無く、廊下があった。病院とか研究施設っぽい感じの、真白で白い照明に照らされている、光沢のある床の廊下。


この偽物のアパートの部屋にとどまる理由なんてない。構わずに先へ進むことにした。

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