6.コンビニエンスストア
通路だ。ずっと続いている。とりあえず一本道だけど、右へ左へと曲がったり、直角のコーナーだったり、斜めに進んだり……
いかにも地下通路です、っていう感じの通路が続いている。初見でドキッとさせられた赤いカラーコーンは途中から無くなっていた。
そして今、目に付くことは壁にポスターが貼ってあること。
でも意味のないものばかりだ。どれも単色で塗られただけのポスター……赤とか青、黄、緑、ピンク、白や黒もある。というかポスターとすら言えないだろう。文字もイラストも、なんにも描かれてないんだから。
そしてまたコンコースのようなところの空間に出た。でも壁がレンガ造りで、天井の照明は電球みたいに黄色い明かりを放っている。床はきれいに磨かれていて、多分、大理石みたいな? なんとなく古臭いというか、なにか歴史を感じるような雰囲気って感じだ。
右を見ても左を見ても、ゆるくカーブを描いて続いて、先が全部は見通せない。
とりあえず右のほうに進んでみる。もしかすると、ずっとカーブした道が続いているなら、一周して戻ってくるかもしれない。
スマホを取りだして時間を見ると、時刻は19時30分から31分に変わったところだった。もちろんというか当然というのか、圏外だ。どうやらWi‐Fiとかもないみたいだな。
進んでいると、なにやらガラス張りで白い光を放っている場所が現れた。
近づいて見るとそれはコンビニだった。駅ナカにあるような雰囲気のコンビニ。店内には煌々と明かりがついている。
入り口のドアは開いていて、それに中には棚には商品が並んでいるのがみえた。
やった! なにか食べ物や飲み物が手に入るかもしれない。そう思って中へ入り、棚の間を進んでみてまわった。
だけれど、がっかりだ。手に取ってみればすぐに偽物とわかる……どれもちゃちな模造品みたいなものだった。
食料品や飲み物だけじゃない、商品だけじゃなくて、置かれているもの全てが、まるでバルサ材や紙で出来ているみたいな感じだった。
ここに居ると、実寸大になったミニチュアセットのなかにいるような気分がした。
それでコンビニから出た。まったく、ため息が出る。疲れた。向かいの壁にもたれて座る。しばらく夕飯にはありつけないかもな。
あ、そうだ! ペットボトルのコーラがまだ残っている。カバンから出してキャップをひねると、プシュッと音を立てて、炭酸ガスが逃げていった。
ほとんど気の抜けたコーラ、冷たくもない甘ったるいだけの液体。それがとてつもなく美味く感じる。
ああ、なんだか、カレーとかラーメンとか唐揚げとか、そういうのが食べたくなってきた。
ふと視線を向けると、道の先に緑色のランプが付いているのが見えた。
立ち上がって、また進む。それで近づいていくと、緑の光の正体がなにか分かった。非常口のマークだ。そしてそのマークの下には灰色のドアがある。
ドアを開け先には階段があった。




