5.トレインゲート
トイレを出てコンコースに戻ると、見える景色の様子がおかしい……
目の前に改札があった。駅でよく見るような自動改札が並んでいる。一、二、三……七つほど、全く同じ見た目のものが並んでいた。
でも、さっきこのトイレに入る前には、反対側の壁のほうには、こんなものはなかった。
改札のその先は、同じようなコンコースが続いている。突き当りにはコーナーがあって、まだその先に通路が続いているみたいだ。
それからハッとして脈拍数が上がった。
引き返そうと思って、来たほうへ視線を向けたが、明らかに最初に見たときとは異なっていた。コンコースの広さに違いはないみたいだけど、まるで閉店した商店街みたいに壁の一面にシャッターが並んでいた。
そしてその先は行き止まりで、降りてきたはずの階段は見当たらなった。
いざとなれば戻ってくればいいだけのことかもしれない……でも、こんなことになるとは思わなかった。
考えが甘かった、とでも言えばいいのか!
いや待て、あるいはシャッターが閉まって隠れているだけかもしれない。
だけどその考えも間違いだった。近づいてよく見れば、それはシャッターではなかった。緻密に描かれた騙し絵だ。ここにあるのは壁だ。コンクリートの壁だ。触れば分かる。
まがりなりにも、ここに降りる前は屋外だった。ただガラス張りのビルが並んでいるだけの
意味不明な異世界だとしても、空がみえる“外”だった!
ここは地下空間。閉じ込められた!
閉じ込められた……そんなふうに考えると、心臓がバクついて、首や胸を押さえつけられたような、息が詰まるような感覚がする。
苦しくて、立っていられなくなって、その場に跪いて、必死に深呼吸した。
どのくらいたったのか?
しばらく息をすることだけに集中して、ようやく落ち着いた。もしかすると、これはパニック発作とでもいうやつなのだろうか? 先が思いやられるような感じがする。
とにかく、出口を探して進むしかない。
それで改札を通り抜けて突き当りまで進むことにした。
自動改札機をふつうに通ったけど、まったくの無反応だ。まあ、スマホやICカードをかざしたところで、ほんとうにこの先で電車に乗れるとも思えなかった。
それでコンコースを進んで、その角を曲がった先に、なにか赤色のものが視界に入ってきてドキッとした。
でもなんだ、たいしたことじゃない。ただのカラーコーンだった。
ただ単純に、両側の壁に沿って隙間なく一列に並べられている。なんの意味があるんだ? それに通路の真ん中に立て看板があって〈片側通行にご協力ください〉と書いてある。これは守ったほうがいいのか? それとも意味のないものなのか?
まあいいや、とにかく進んでみよう。
ここから先はさっきのコンコースに比べたら横幅も狭くて天井も低い感じで、いかにも通路って感じの道だ。しかも真っ直ぐじゃなくて、斜め方向に向かったり、カーブしていたり、直角の角になっている場所もある。
クリーム色のタイル貼りの壁、床は白いタイル……じゃなくて石かな? 照明は蛍光灯がならんでいて明るい。
そういえば、この照明の電源はどこから来ているんだろうか? そんなこと考えたところで、どうにかなるものでもないのだろうけど。




