3.コンコース
ハッとした。
どうやら、うとうとしていたみたいだ。階段の途中で座り込んで、硬い壁にもたれかかりながら、こんなところで寝てしまうとは迂闊というか、ほんとうに、だいぶ疲れてきたのかもしれない。
みれば壁にオレンジ色の光が差している。振り向いてみると、夕焼けの光をガラスのビルが反射していた。立ち上がって階段を上ってあたりを見てみた。
周囲はオレンジ色の光で満ちている。立ち並ぶビルに、夕陽がほぼ真横から照らしていた。
スマホを見ると時間は夕方の五時を過ぎたところだった。でもなにか変だ。こんな夕暮れには少し早すぎるような気がする。
まあ、この異様な世界で、季節感だとか時間感覚をとやかく気にするほうが間違っているのかもしれないけど。
ぼーっと眺めていると、徐々に空は黒っぽさを増して、オレンジ色の夕陽も暗くなっていった。
相変わらず人の気配は周囲にはない。そしてなにか、このビル群に照明が灯るような感じもなかった。
それで下の階段へ目を向ける。最初に見たときよりも蛍光灯の光が明るく感じられる。
進むしかないか……まあ、いざとなれば戻ってくればいいだけのことかもしれない。それに真っ暗闇よりは明かりのあるほうがマシなような気もする。
それで階段を下りると、狭い印象のまっすぐな地下通路になっている。その先になにかありそうだ。
進んで出た先には、これまた広い通路……というか、なんていうか、あれだ、コンコースというやつだ。
地下鉄というか地下街というか、そういう場所によくある広いコンコースだ。そんな感じだ。
でもまあ、相変わらず壁は古びた印象のタイル張りで、けっこう長く続いている。一応、突き当りの壁が見えるから、無限に続いているような空間ではなさそう。
壁にはところどころ、別の方向へ向かう通路の入り口のようなものがあるが、どれも照明がなく、その先は真っ暗で、わざわざ入って進んでみる気にはなれない。




