10.ソルトレイク
トンネルは途中から緩やかな上り坂になっていた。そして途中から線路が敷かれていた。
その出た先は眩しい光に照らされていた。
雲が浮かんでいる青空に、鏡のような地面、地面? 水面か? まったく波がたっていない。
触ってみれば、確かに水が張っている感じだ。でも水たまりみたいなものだ。そして白くて真っ平らな大地が広がっている。
そうだ、地平線のところまで真っ平だ
あれだ、ウユニ塩湖とか塩原だとかいうやつ、なにかの写真でみたことがある。あれにそっくりだ。
トンネルを出たところから砂利が盛土みたいな感じになってて、それで線路が真っ直ぐに続いている。
360度、視界のすべてが、なにも遮るものがない。鏡みたいな場所の上に立っているような感じがした。
ここの水は飲めるのか?
ふと、そんなことを考えた。思えばこの異常な世界に迷い込んでから、ペットボトル一本分のコーラしか飲んでいない。
さっき触った指はなんともないし、少なくとも劇物ということはないだろう。
もう一度、そっと指で触れて、指先に付いた水滴を舐めてみた。
めちゃくちゃしょっぱいうえに、激苦いまである。とても飲めるようものじゃない。
それから線路の上を進んでいると、その先になにかが見えた。
だいぶ時間がかかって近づくと、それはなにかの列車のようなものだった。
古い客車みたいな、まるで長いあいだ放置されて風雨に晒され、朽ち果てそうになっている感じだった。
後ろの扉のところから中を覗いてみると、階段があった。コンクリートの壁に電球の明かりがついている。先が見えないほど長い上り階段があった。
思わず外のようすを、もう一回確かめる。車両の見た目はなんの違和感もない。車両の屋根からなにかが空に向かって伸びているということもない。
でも車内を覗くと階段がある。明らかにおかしな光景だ。
車内には途方もなく長い階段が存在している。でも外の景色は古びた列車と青い空。
まあ、今さらこんなことで驚いてどうする? はじめから異常な世界だったんだ。
このまま塩湖の世界を進み続けるか……それとも、この階段を上ってみるか……




