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Proof Blue  作者: 菅原やくも


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1.ブルースカイ、ブルーグラス

知らない街や通りをいろいろと歩いてみてまわるのは意外と面白い。ただ漫然と、街の景色を見ながら歩いてみるだけ。


え? なにやら無産的で時間を無駄にするような行動だって?


別にいいじゃないか。趣味なんていうのは、だいたいそういうものだ。生産的なこととか利益とか、そういうのを考えだしたらそれは趣味じゃない。そうなったらただの小遣い稼ぎか、たんなる仕事だ。


まあいい、話を戻そう。


意外と都内でも、ぶらりと街歩きをしてみれば、歴史のありそうな小さな神社だとか、古い感じのお店とか建築物だとか、いわゆるエモそうな感じなものを見つけることができたりする。


そしてそういう場所の近くにはコンビニがなかったりすることが多い。


今日はちょっと暑い。こういうときには甘ったるい炭酸飲料が飲みたくなるというものだが、どうやらコンビニは近くにはなさそうだ。


クラシックな雰囲気の建物を多々みかける裏通りとかでも、自販機なら確実に見つかる。

ほらすぐ近くに、赤色が目立つ自販機があった。


「あー……」


ほんとはサイダー系かレモンスカッシュ的な飲み物が欲しかったけど、あいにく炭酸はコーラしかなかった。


嫌いじゃないけど、飲んだ後の歯が少しきしきしするような感じが苦手だった。でもしょうがない。あるいは炭酸以外のジュースにでもしようかと思ったけど、やめた。コーラでいいや。


ショルダーバッグからスマホを出して、自販機のボタンを押してタッチ決済で買う。ガコンと音がして落ちてきて、取り出し口からペットボトルのコーラを取りだす。


それで歩き出そうとして、目の前の景色に混乱した。


ガラス張りのビルがたくさん並んでいる。でもさっきまでの景色は、雑多な雰囲気でいろいろな建物が並んでいる、そんなに広くない通りだった。


どいうことなんだ?


見上げると雲一つない青空で、ビルのガラスは同じ色の光を反射している。そして人の気配がまったく感じられなかった。


何度もあちこち振り返って見たけど、同じような景色が続いている。それにさっきの自販機の姿まで無くなっていた。


どことなく心拍数が上がったのが自覚できた。これは、幻覚なのだろうか? あるいは白昼夢とでもいうやつか? 手に持っているコーラのペットボトルは冷たく、表面が結露で濡れはじめている。


まあいい、とりあえず飲むか。とにかく少し落ち着こう。落ち着いて考えるんだ。


キャップをひねるとプシュッと音がした。それから深呼吸して口に近づけて飲んだ。コーラの味が口に広がって、炭酸の刺激が喉を通って、液体が食道を下って胃に落ちていく感覚がした。


この感じ……これは夢じゃない、絶対に夢なんかじゃない。


半分ほど飲んだところで、キャップを戻して閉めた。全部飲むのはやめておくのがいいかもしれない。こんな異常な状況で飲み物は貴重品だ。服の袖で結露をぬぐってスマホと一緒にショルダーバッグに入れておく。


それで、これが幻や夢じゃないとして、だとしたらここはどこなんだ? 異世界ってやつなのか?


それとなく“バックルームズ”というキーワードが浮かんできた。あるいはリミナルスペースとかドリームコアだったか……まあ、なんでもいい。


それにしたって、だいたいあれはRedditだか4chanだったか、海外掲示板で創作された都市伝説のはずだ。有名なのは黄色い壁の空間だけど、いろいろとレベルというものがあって、その中には都市のような場所もあったりする。ほかには光が差し込むプールみたいな場所とか。いずれにしても、人のいない場所なんだ。


ここは、まさにそんなイメージの場所な気がする。


地面に視線を向けてみると、道路は黒いアスファルト舗装みたいな感じだけど、歩道もなければ、白線もなくて違和感しかない。


それに立ち並んでいるガラス張りのビルも、よく見てみればなんか変だ。入り口らしきものが見当たらない。四角形のガラスとその枠が均等に並んでいるだけ。


ゆっくりと近寄ってみてみるけど、そこには反射して写る自分の姿と、反対側のビルの陰だけが見える。ガラスの向こう側、ビルのなかに何があるのかは全く見えなかった。


少し周囲を歩いてみるけど、どうやら同じ姿かたちのガラス張りのビルが、東西南北に一様に並んでいるみたいだ。


それからスマホを取りだしてみた。案の定というのか、とっさに予想できたというか、やはり電波は圏外だった。時間は昼の二時になろうかというところ。


空を見上げてみると、太陽の姿があるのが分かった。でもなんだか光が白すぎるようにも思えた。


ともかく、これからどうすりゃいいんだ?

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