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アルトゥールが「話がある」と言うので、スイカを食べたあと、彼の部屋に来ていた。
私にも話があったのでちょうどいい。
二メートルを越える、例の杖を持って行ったところ、説明を促されたので、まずはその話から始めることにした。
私が見た夢についての話を。
「……なるほど。それについては明日、被害者が出なかったかを確認してみよう」
「はい」
「そして、その杖だが――」
虹彩がより強く、深く、澄んだ青色に光る。どうやら、アルトゥールが能力を使うと、影が揺れたり瞳が光ったりするらしい。今も、彼の影が静かに膨らんでいる。
「古代――いや、神代のものだろう。すまない……神が秘匿したものは、私の目では仔細まで見れないんだ」
「このつえ、めちゃくちゃすごいってことですか?」
「そうだな。めちゃくちゃすごい杖だ」
「ほへー……」
神が関わっているなら、この素晴らしい出来も納得だ。心做しか輝いて見える。
「それで、アルトゥールの話ってなんですか?」
「ああ。迎えの馬車が来ることになったから、到着次第、ここを発つよ」
「わかりました!」
「それから、転移門の使用許可が下りたのだが……ティアーナは魔力酔いになったことはある?」
「ないです!」
転移門についても魔力酔いについてもよくわからないけれど、多分大丈夫。なにせ、私の体は強いのだ。
アルトゥールはちょっとだけ心配そうな顔をしたけれど、すぐに頭を振った。
「旅程については馬車が到着次第、御者も交えてて話そう」
「はい!」
これで話は終わりかと思ったのだけれど、アルトゥールはまだ何か言いたげだ。言いたいけれど、言い出せない……そんな雰囲気。
これは、催促するよりも、アルトゥールの決意が固まるのを、待つべきかもしれない。
「ひとつ、そーだんしてもいいですか?」
「相談? ……ああ、なんでも聞くよ」
「このつえのことで……」
私は杖に魔石を付けたいこと、良い杖なので良い魔石を付けたいこと、良さそうな魔物の出没地をしらないか……というようなことを相談した。
それに対してアルトゥールは、あてがあるから任せてほしいと言う。ただ提供するのではなく、魔石と杖について、レポートを書くことが条件だと。
わ、私のことをよく理解している……一周まわってちょっと気恥ずかしい。けれど、そういうことならと引き受けた。
次は何を話そうかと悩んでいたところで、アルトゥールが口を開く。
「ティアーナは、私についてあまり聞かないな」
「そうですね……?」
あ、興味がないって思われちゃったかな。相手が話さないなら、必要以上に聞く意味がないと思ってるだけなんだけど……それって興味がないってことになっちゃう?
私が慌てているのを感じたのか、アルトゥールがそうではないと笑った。
「正直、助かってはいるんだ。話したくないことも多いから」
そうなんだ……?
「しかし、招くのなら、話しておく必要があるだろう。それに、貴方のことも、聞かせてほしい」
真剣な表情だ。
これは私も、真剣に、彼に何をどこまで話すのかを、考えるべきだろう。あえて話してこなかった年齢についてとか、私の名前についてとか。
「……どうだろうか」
「わかりました。おたがいの、よりよいかんけいのために、おはなしを、しましょう!」




