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湖と反対側にある街の端には、ギルドのほか、冒険者向けの宿泊施設や大衆食堂が並んでいる。その中のひとつ、気になっていた大衆食堂の二階にはバルコニーがあり、街と湖を見下ろせるようになっていた。


「ティアーナは店選びが上手いな」

「ふふん」


リーズナブルかつ、美味しくて居心地もいいお店を探すのは得意だった。エルフの五感と私の勘による合わせ技だ。


「それで、これからのことだが――」

「ストップ! そのはなしは、ごはんをたべてからにしましょう」


空腹の時に悩んだって仕方がない。今考えるべきは何を食べるかだ。


というわけで、まずはご飯タイム。


魚料理は白身魚のフライとグリル焼き。よくわからないスパイスが効いていて、不思議な味。でも普通においしい。エキゾチックなかんじ?

それから、豆が入ったコロッケ。これにもスパイスとハーブが効いていて、風味が豊かだ。この辺はスパイスの原料が豊富なのかも? ソースもあったのに、素の味でも美味しくて、付けずに食べちゃった!


メイン料理ばっかり食べてる私と違い、アルトゥールはサラダやスープから丁寧に食べている。

私が同じことをしたら、最後まで食べられないからいいの!


最後に、小麦粉で作った生地にひき肉を挟んで焼いた、薄いパイみたいな、ミルフィーユ風の料理を食べて終わり! 満腹!

デザートはアルトゥールとのお話が終わったあとにする。……けど、その前にお茶だけ頼んでおく。ハーブティーっぽいのに、ほんのり甘くておいしいのだ。


「好き嫌いはないのかい?」

「いまのところ、ないですね……?」


アルトゥールはあまり冒険せず、どこでもよく見る組み合わせで食事を終えたらしい。サラダやスープ、メインにお肉、それから普通のパン。


好き嫌い、か……そう言われてみれば、好き嫌いを意識したことがなかったかも。


今はなんというか、食べたことないものを食べるのが楽しい時期で、珍しい料理を見つけたら挑戦してみることにしている。それで、おいしくない! ってなること、ないかも。


「そうか……見つかったら、教えてほしい」

「はい! きょうのごはんだと、おちゃがいちばんすきです」


私の言葉を聞いて、水しか飲んでいなかったアルトゥールが、店員さんにお茶を頼む。一口飲んで、「確かに、美味しいな……」と呟くものだから、得意げになってしまう。私、味覚の才能あるかも!


アルトゥールがお茶を飲み切ってから、私のと合わせておかわりを頼んだ。


さて、満腹になったら話をする時間だ。


「なんてかいてあったんですか?」

「用ができたから離れる……というのと、私の実家に向かうと」

「じっか……?」

「ああ。……いや、先生のではなく、私の実家だ」

「アルトゥールの」


アルトゥールの実家。それはつまり、彼が「殿下」と呼ばれる所以の。


「……あまり気乗りはしないが、機会をいただいたのなら、行くべきだとは思っている」


理由はわからないけれど、行きたくはない、というのが滲み出ている。

正直私も行きたくない。アルトゥールと行く以上、国の中枢になるわけだし、そうなるとルールとかマナーとかが面倒臭い。

しかし、私のことを手伝ってくれているのに、勝手に行ってこいと言うわけにもいかない。アルトゥールが行くのなら、行く。他に頼るあてもないのだから、ちょっとくらい寄り道したって変わらない。手掛かりが見つけられたら御の字だ。


「アルトゥールのはんだんを、そんちょう、します」


アルトゥールが行きたくないと言うのなら、それでもいい。私はまた、別の手掛かりを探すだけだ。エルフの里に片っ端から行ってみるのも良いだろう。

なんやかんや旅の中で路銀も稼げたから、選択肢は多い。


「……ありがとう。ティアーナ、ついてきてくれるか」

「もちろん!」


よし、話がまとまったらデザートだ。


選んだデザートは薄いパイ生地を何枚も重ねていて、その間にクルミが挟んである。あつあつのシロップがたっぷりかかっているから、ちょっとリッチな気分! ボリュームたっぷりなのも、幸せのスパイスだ。おいしいご飯とデザート、最高! ついでにヨーグルトドリンクも飲んだら完璧!


「んん〜!」


我ながら、自分の体のどこにこれだけご飯が入っているのか不思議だけれど、それもエルフだから、ってことにしておく。説明のつかない身体の不思議は、エルフを理由にしておけばよかろうなのだ。


「実家に連絡をするから、返事が来るまではこの街に滞在しよう」

「はい。あとむま? の、ちょーさですね」


物理攻撃専門の私は役に立てないから、その間はなにをしよう?

せっかく湖あるし、舟で出れたりしないかな。あ、普通に魚釣るのも楽しそう。ギルドで依頼を受けるのもいいかも!


明日が楽しみすぎて、昨日見た夢のことなんて、すっかり忘れてしまっていた。


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