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魔導鉄道は日中の運行の他に、夜行列車もある。かなり人気なようで、チケットを取るには厳しい争奪戦があるらしい。しかし今回は侯爵の計らいで夜行列車のチケットを譲っていただいた。


権力者さまさまだ。ありがたい。


「きれい……」


見上げると、大きな天窓のおかげで、星空がよく見える。流れ星が月の近くを通った。複数ある月も、それぞれが別の顔を覗かせていて趣がある。まるで星の海を進んでいるようだ。


今晩は眠りながら移動し、明日の昼には普通の鉄道に乗り換える。せっかくの魔導鉄道を寝て過ごすというのは勿体無い気もするけれど、次の楽しみができたと考えれば悪くない。


エルフの生は長いのだ。やりたいことはたくさんあればあるほどいい。


高位貴族や大商人向けの個室(スイートルーム)はベッドがとっても柔らかくて――


景色を眺めているほんの数分で、深い眠りに落ちてしまった。



「メイリーリス……?」


開口一番、聞き覚えのない単語を発し、私を見て驚いた顔をする少年。陽光を受けて艷めく鳶色の髪と、白と黄色を混ぜたクリーム色の肌は、ここら辺では珍しい組み合わせだ。

つり目がちな瞳の色は琥珀のように明るい。しかしそれも取り沙汰するほどではない特徴だ。

凡夫凡庸平凡な少年。見た限り年齢は16から17歳くらいだろうか。アルトゥールよりは下に見える。


「いや、んなわけ……他人の空似? にしては似過ぎてるっつか……」


一人でブツブツと呟いて頭を抱えている変人。彼を連れてきたのがアルトゥールでなければ、早急にこの場を離れていただろう。


「アルトゥール。どちらさまですか?」

「ああ、紹介しよう。彼は――」

「俺は徳川信長! 長所は周りに流されないところ! 短所は空気が読めないとこかな! よろしく!」


長所=短所過ぎる……! 物は言いようってこと? 就職難だよそれじゃあ!

……こほん。ツッコミたい気持ちを抑えて、ギリギリ顔にも口にも出さなかったから許してほしい。


「……ティアーナです」

「よろしく、ティアーナちゃん」

「はい。トクガワさん」


右手を差し出されて、仕方なく握手をする。ノリが違い過ぎるので、あまり仲良くしたくはないのだけれど――


「彼とは以前、別の街で出会ったことがあるんだ」

「そうそう! 俺ら友達!」


よくわからないノリで肩に腕を置かれても、アルトゥールは気にしていない。随分と仲がいいらしい。交友関係に口を出すつもりはないし、私に害がなければいいかと深く息を吐いた。


「あとで俺の仲間も紹介するぜ」


どうやら、今日の移動には彼らがついてくるようだ。アルトゥールに話を聞いたところ、目的地は違うが途中まで一緒なので、それなら一緒に行った方が良いだろうとのこと。


まあ良いだろう。鉄道に乗って外を眺めるだけの時間に、多少オマケがついていたとて問題はない。うるさいことにさえ目を瞑れば、平気だ。


幸い、彼の同行者は騒ぐようなタイプではなく、落ち着いた人達だった。種族はバラバラで、獣人、ドワーフ、妖怪がそれぞれ一人ずつという組み合わせ。それだけ揃っていてエルフがいないのは、少し不思議でもある。


「ティアーナちゃんって、なんで旅してんの?」

「人さがし……エルディアという人をさがしてます」

「へぇ……それっぽい人見つけたらアルトゥールに連絡するわ!」

「あ、りがとう、ございます……」


グイグイ来る。近い。物理的にも精神的にも、距離感がバグってる。それでも触れてこないだけ配慮しているのかもしれないけれど。


「怖がっているでしょう。やめてあげなさい」


間に入ってくれたのは、自己紹介の際、種族は妖怪だと言っていた女性――くらまさん、だったか。

肩口で切り揃えられた黒髪は赤みを帯びていて、ガーネットのような瞳と合わせて妖しい魅力を放っている。



「そなたのためじゃないわ。あやつと共にいる余まで品位が下がるから窘めたまで」

「品位!? 品位下がんの!?」

「ふ、ふふ……あはは……っ! なかよし、なんですね」


男女の仲というより、友人の距離感。遠慮がなくて、仲が良くて、見ていて気持ちがいい。思わず声を上げて笑ってしまった。


「心外だわ」

「ティアーナちゃんってさ……めっちゃ可愛いって言われねぇ?」

「いくらきみでも、ティアーナはダメだよ」

「いやいや! そういうのじゃねぇって!」


アルトゥールとの、穏やかな旅に慣れていたせいか、賑やかなのは少し戸惑う。けれど、まあ、悪くないかもしれないと思い始めていた。


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