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「あの、アルトゥール?」

「そちらも似合っているが、先程の物がいいな」

「アルトゥール、わたしは……」

「次は剣を見に行こう」

「ナイフがあるので!」

「剣とナイフでは用途が違うだろう?」


買い物と言うから、旅に必要な物――例えば薬とか携帯食料とかを買うのだとばかり思っていたのだが、先程から私の身の回りの物ばかりを見ている。

マントがあるから平気だと言っても、マフラーに耳当て、防寒着まで買われてしまった。その上、普段着まで見繕われて。


それだけではない。


髪飾りに防具、果ては剣まで。必要ないものばかりで、そんなに買っても持て余すだけだ。


聖職者ではないから清貧に甘んじているわけではないけれど、物質主義でもない。人生は“ちょうどいい”のが一番だ。


と言うか、アルトゥールと居るとお財布を出させてもらえない。気付いた時にはお会計が終わっている。どうにも子供扱いされているようでいただけない。


「もういりません!」


剣の次は魔術用の杖をと言い出したので流石に止める。欲しいか欲しくないかで言えば欲しいけれど、それは自分で買うべきだし、手が届かない物は我慢すべきだ。高価な物をおいそれと貰うわけにはいかない。


「ただほどこわいものはないんです。あと、子どもあつかいはやめてください」

「すまない。子供扱いのつもりはなかった。報酬はいらないと言っていたが、物なら受け取りやすいかと思ったんだ」


ああ……案内の報酬とやら。


大して何もしていないどころか助けられているのだから、プラマイで言えばむしろマイナスだと思う。負債だ。

そもそも、今の、この旅自体が案内と罪人捕縛の報酬を合わせたものだったはず。


「……迷惑かな」


目に見えて落ち込んでいる。思わず首を横に振った。


「めいわくではないです! でも、もういりません」

「わかった。自重しよう」


やらないとは言わないんだ……?


私の中でアルトゥールが、顔のいい男から、顔のいいちょっと変な男へと進化した。


人々が噂する聖人アルトゥールは、思いつく限りの美辞麗句をひたすら並べ立てたような人だったけれど、実際の彼は普通の青年だ。


確かにちょっと特別な力を持っているし、整った容姿をしているが、それだけ。神のように崇められているのは変だ。辛くなったりしないのだろうか。


「宿に荷物を置いて、自由時間にしようか」

「そうですね……」


当たり前の顔をして私の荷物を持っているアルトゥールに、申し訳ない気持ちが湧く。私から持ってほしいとお願いしたわけではないけれども、持たせていることには変わりない。重いのを知っているから、なるべく早く楽にさせてあげたい。


「このまちのギルドは……ええっと……?」


冒険者ギルドでは宿の紹介もしてもらえる。小さな街なら、中心地に複数のギルドが入った建物があるのが常だ。

だいたい街の中心地には、教会や地域の偉い人の家があるので、目立つ建物を探せばいい。しかし、私の背丈では見えるものが少ない。すべてが大きく見える。不便だ。


「宿は取ってあるから探す必要はないよ」

「えっ、いつのまに!」


準備がいい。イケメンは行動もスマートなのか……


「行こう、ティアーナ」

「はい!」


なんだか負けた気になりながら、アルトゥールの後を追った。


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