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「今日はこの街に泊まり、明日はここからここまで。少し距離があるが……この日はここを目指そう。この山は迂回して――ティアーナ?」


四人がけのテーブルの上に、料理が並べられていた。粉チーズのかかったサラダとじゃがいものポタージュ。一口サイズのウィンナーやパンが乗ったお皿の上には、たっぷりとラクレットチーズがかけられている。

酪農が盛んな街のようで、食事処のメニューには乳製品が多い。おいしくって頬張っていたら、「食事は逃げないよ」と笑われて恥ずかしかったので、今はゆっくり噛んで食べている。


料理の横に地図を広げて、アルトゥールが今後の旅程を教えてくれていた。見覚えのある地図だ。どこにでも売っている、一番オーソドックスな物だった。


目的地のフロンと現在地はかなり距離がある。アルトゥールの組んでくれた旅程は、おおよそ半年ほどで到着する予定になっていた。私の体力などに配慮しているのだろうが、不要だ。その間に入れ違いになってしまう可能性もある。なるべく早く着くべきだ。


「ここからここは一日でいけます。この山はここをとおって、こっち……のほうが、はやいです」


私が差した先を見るアルトゥールの視線は険しい。


「このあたりはうまをかりて、ここまで。あと、ここに、てつどうがあったはずです」

「馬に乗れるのなら確かにそうするべきだ……とすると、このルートはどうだろうか」

「あっほんとだ! それがいいですね」

「しかし、山は避けて迂回した方がいい」

「いえ、さいたんはここです」

「ここには魔物が出る」

「はい! それくらいへーきです!」


顎に手を添えたアルトゥールが、じっと地図を見下ろしている。伏せられたまつ毛が頬に影を作って、きれいだ。


彼はどう見てもお貴族さまなのに、庶民的な場所でも違和感が無い。不思議だ。そんな場所にも慣れているから、違和感が仕事していないのかも。


残っていた最後の一口を飲み込む。デザートは何にしよう。クルミのケーキかアップルパイか……悩む。


「わかった。そうしよう」


青い瞳に光が入ると、乱反射する海のようにきらきらしい。


「ありがとうございます。それじゃあ……すみません! クルミのケーキとアップルパイ! ひときれずつください!」

「よく食べてえらいねぇ。これはオマケにあげよう」


店員さんにクッキーをいただいてしまった。あとでおやつに食べよう。


「ティアーナ」

「はい?」

「食べ終えたら買い物に行こうか」

「はい!」


微笑んだアルトゥールは、地図を畳んでから、よくわからない炭酸飲料を飲んでいる。からん、と氷の音。甘酸っぱい匂いがした。


目立つ容姿をしているのに周りが反応しないのは、魔法を使って印象操作をしているからだとか。魔法って便利だ。


私もいつか、簡単な魔術くらいは使えるようになりたい。帰ったら父に聞いてみよう。


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