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明日出立する予定だと言えば、あと四日待って欲しいと返ってきた。その間、アルトゥールが滞在している邸にお世話になったのだけれど……


「ごく、らく……」


ぬるま湯よりも少し熱めのお湯が、心も体もときほぐす。こんなにゆっくりするのは、ものすごく久しぶりだ。お昼過ぎまでふかふかのベッドで眠り、日が高いうちから湯船に浸かるなんて贅沢を謳歌している。

新鮮採れたて! 搾りたて生ジュース! とラベルが貼れそうなフルーツジュースまで出るので、待遇の良さに思わず震えてしまった。


さらに、私が人との接触を避けているのを察して、人避けまでしてくれているため、朝晩問わず好きに動ける。

まるで地上の極楽だ。黄金の国ジパングはここかな?


と、まあ、冗談は置いておいて。


ほつれてしまった衣服の手直し、装備や武器の手入れ、鏃以外にも細々と武器を作り、飽きたら鍛錬……と、時間はいくらあっても足りない。


あっという間に四日を過ごして、出立の日が来た。


リュックサックを背負いザ・旅人という格好をした子供の私と、荷物を持たず上等な青い外套を羽織って立つアルトゥール。並ぶとずいぶん、ヘンテコな組み合わせだ。


そのまま街を出て歩き始める。大きな街だったので、正門から伸びる道は綺麗に舗装されていた。歩きやすいので、アルトゥールに置いて行かれる心配は無さそうだ。


「えんかい、いかなくてよかったんですか?」


聖人アルトゥールの出立は、来訪時よりさらに大きな宴会を催すのだと風の噂で聞いていた。きっと、私には想像もつかないほど盛大な宴だったろうに。


「行きたかったなら、引き返そうか」

「えっ、いえ! ぜんぜん!」


行きたくないわけではない。むしろ行きたい。でも、それよりも優先することがある。サクッとお使いを済ませて、はやくお家に帰りたい。それで、良い子だねって褒めてもらうのだ。


「それより! これから、どこへいくんですか?」

「湖の街フロンに向かう予定だよ」


地図を頭に思い浮かべる。有名な街だから、目立つように赤字で書いてあったはずだ。地図の上では、確かこの街からだと……右? の方にあった気がする。海と見紛うほどに大きな湖の、畔に位置する三角洲の地域が湖の街フロンだ。


「フロンにいる人なんですか?」

「旅をしている方だ。手紙のやり取りをしているのだが、少し前にフロンへ行くと書いていたから、私たちが着く頃にはいるだろう」


知人と言うから顔見知り程度なのかと勝手に思っていたけれど、どこへ行くかを伝える程度には親しい相手らしい。どんな人なんだろう。


少しだけ緩まった頬と穏やかな表情を見上げながら、想像する。


アルトゥールよりも大きい筋骨隆々な男性だろうか。それとも、線の細い柳のようにたおやかな女性だろうか。エルフに顔が広いのならエルフの可能性もあるし、獣人やドワーフの可能性だってあるだろう。


「旅程に関しては最初の街に着いてから話そう。確認だが、ギルドへの登録は終わっているかい?」


組合(ギルド)とは、職業毎に作られている組合のことだ。


例えば鍛冶師のギルドでは、素材の融通や販売ルートの確保、仲介に市場の適正化、労働者の環境改善まで、活動は多岐にわたる。


また、ギルドに登録していると、ギルドカードと呼ばれる登録証が発行される。ギルドカードは身分証としても使用できるため、とりあえずでギルドへ登録する人が多いのだ。


ちなみに私は冒険者ギルドと探索者ギルドに登録している。両者は業務内容も受けられる恩恵もあまり変わらず、同一内容は重複しないのだが、一刻も早くお金を貯めるために両方登録して効率化を図っているのだ。


「とーろくずみです!」

「よかった。国境をいくつか越えるから、出せるようにしていてほしい」

「そっか。そうですよね」


どのルートを通るのかは分からないけれど、フロンに行くのなら国境越えは必要だ。そして、出入国の際は身分証が必要になる。世界で最も信用されている身分証がギルドの登録証なので、それさえあればモーマンタイ!


リュックの中からギルドカードを取り出して、一番よく使うポーチの中へ入れておく。紛失した時の再発行はお金が掛かるので、扱いには気をつけなきゃ。


「ティアーナ、そろそろ最初の街が見えてきたよ」


丘を越えた先、丘陵地帯の中に現れた街が最初の目的地らしい。舗装された道にある街なので、そこそこ栄えている。きっとご飯もおいしいだろう。お昼にちょうどいい時間だし、街に辿り着いたらまずはお昼ご飯にしたい。


私の好きなものがありますように!


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