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40話 相談の続きですシスター

 

 桶を抱え教会へと向かうクラリッサ。


 彼女は先ほどまで、共同の洗濯場にて子供達の衣類やシーツの洗濯を行っていた。

 洗濯場にはまだ後輩シスターが残っている。一足早く戻ったのは教会にやってくる信徒を迎えるためであった。


 ふと思い出すのは昨夜の子供達の笑顔。

 自主的に魔道具を売り払った神父が、そのお金で子供達にごちそうを用意したのである。鶏の丸焼きに興奮する子供達をクラリッサは最高に幸せな気分で眺めたのだ。反対に神父は眼に涙を浮かべながら肉を振る舞っていた。


 教会の裏手から入ろうと彼女は門に手を掛けた。


(この音は、懺悔室からの呼び出しですね。急いで戻らなくては――)


 彼女の手が止まる。

 しつこく鳴らされるベルの音に彼女は眉間に深い皺を寄せた。


(乱暴な呼び出し方……またあの人ですか)


 クラリッサの手が門から離れる。

 長年シスターを続けている彼女は、呼び出し音で誰が来たのか判別できるようになっていた。二、三回来れば嫌でも覚える。


(このまま聞こえなかったフリをすれば)


 しかし、ベルの音は止む気配すらなく次第に激しくなる。

 あまりにしつこい呼び出しにクラリッサは門に手を掛けダッシュで教会内へと向かった。


 ばたん。


「遅いですよシスター。こんなに呼び出しているのに」

「すみません。お待たせしてしまって」


 笑顔のままクラリッサは拳をぎゅっと握りしめた。

 小窓を開けて今すぐ壁の向こうの男の顔面に一撃入れてやりたい。そんな気持ちに駆られながら心を凪のように静かに保とうと努める。


「そういえば聞きましたよ。アンブレラでは大活躍だったそうじゃありませんか。悪魔を倒し町を救ったとか。素晴らしい行いにきっと女神様もお喜びになっていると思います」

「女神様からエッチなご褒美とかありますかね?」

「教会に喧嘩を売っているなら買いますよ」


 男は気にする様子もなく話を続ける。


「ザインの正体は天使でした。しかも女」

「あの外見で天使様であったとは。人とは見た目では判断できませんね。まだ女性の姿は拝見しておりませんが、目撃された方のお話ではとんでもない美人だそうで」

「そうなんですよ。だから色々気を遣って。ほら、ずっと男だと思い込んでたじゃないですか。だから平然としていたことが実は問題ありだったことが発覚したりして、本人は平気でもこっちが困るって言うか」

「意外に良識があるのですね」

「目の前で着替えたりしてたので」

「衛兵! 衛兵はどこですか!」

「落ち着いてください。モロ見せはしてませんから」


 男はこほんと咳をする。

 クラリッサは『モロ見せじゃないならどこまで見せたのか』などと腕を組み熟考する。そして、美女とは知らず裸体を晒す男の図に僅かばかりだが興奮した。あえて口には出さないが、なかなかそそられるシチュだと。


「次はグランノーツから悩みを聞き出そうかなと考えています」

「理由を聞いても?」

「ここまで加入順でやってきていますし、グランノーツとは前々から腹を割った友人として打ち解けたいなと考えていたりしてて。きっと鎧の中はムキムキで強面の頼りになる漢が入っているに違いないです」


 クラリッサは立ち上がり上の小窓を開く。

 壁の向こうにいる男を眼を細めてじっと見つめた。


 そして、ため息を吐いてから小窓を閉めた。


「なんですか今の」

「お気になさらず。呆れただけですから」

「よけい気になる」


 男は「また来ます」と行って懺悔室を出て行った。



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