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「なんと!」
男は高く飛び上がった。
今度は違うページを繰り、本の中から水流がうねるように飛びだしてきた。
少女が袖を振るう。
近くを流れていた川の水が蛇のように伸びて、男の本から出た激流と衝突。
激しい勢いで飛び散る水の粒。
じわじわと男の水流が圧されていく。
「さすがは森の精霊! 押し負けてしまうな!」
男は本を閉じた。
龍の姿となった水が男に向かってゆく。
水流が男に直撃。飲み込んだ。
いや、男は本の違うページを開き、前にかざしていた。
龍が男を飲み込んだのではない、龍が本に飲み込まれていた。
「本に取り込まれた!?」
少女はそれを見て、水の流れを止める。
「あの本、厄介です」
「ほい!」と少年。
男が地上に着地するタイミングで、樹木が男に向かって伸びた。
「ほいさ!」
だが、樹木も本の中に吸い込まれていった。
「ああ、飲み込まれちゃう」
男は駆けだしている。
少年に向かって突進していたのだ。
トトトトトトトトト!!!
動物かと思えるほどの速さだった。
少年は見上げた。
男が本を広げて、自分に振りかざそうとするのを。
息を飲み込んだ。
(僕を本の中に封じ込める気だ!)
「ソウ!」
サラがソウを押して、ソウがいた場所にサラがきた。
「サラ!」
本が振り下ろされた。
サラが本の中に消えていく。
「サラアアアアアアアアア!!!」
少年はそのまま川の中に落ちる。
鼻と口に水が入る。
川の激しい流れに押し流されていった。
本のベージにサラの姿が浮かび上がっていた。
どんどんサラと男の姿は遠くになっていく。