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四級帝国民

ソファーに座りながら焦点の合ってない視線で天井を見ている。この宇宙船を操縦しているのはニョリコだ。航路をセレブリ行きに変えられても俺にはどうすることも出来ない。現在地と航路を調べようとしたがニョリコからの許可が下りなかった。AIは人間と対等。いやそれ以上になってしまったのかもしれない。

「これじゃあ惑星テラヘで死んでた方がまだましだったじゃないか。千年後に目覚めて奴隷ってなんだよ。そんなの悲しすぎるだろ」

天井が涙でぼやけてきた。


ニョリコの気が変わって惑星ハレームに航路を変えている事を祈りつつ過ごすしかなかった。船内のトレーニングルーム、無重力ルームを少し利用したり、窓からぼんやり漆黒の宇宙を眺めていた。しかし、俺の楽しみは食事をすることで、一日のほとんどは食事ルームで好きな物を注文して食べていた。やけ食いと言ってもいいだろう。装置で目覚めた時は骨が浮くほど痩せていたのに、宇宙船の中にいた数日で10キロも体重が増えた。


それから更に数日経ち、夜食の豚骨ラーメンを食べて寝ようかと思っていた時に船内に警報が鳴った。

「なんだこのけたたましい音は?嫌な予感しかしないぞ」

そして船内に声が響く

「小型宇宙船、Z392415-は我々の宙域に許可なく侵入しています。宇宙船の責任者は誰ですか?」

許可なく侵入と言う事はここはハレームの宙域ではないのは間違いない。土下座して頼んだにも関わらす、ニョリコは心変わりしなかったようだ。

「私ことニョリコですニョリン」

勝手にニョリコはオペレーターと話していた。


女性オペレータから野太い男の声に変わった。

「我々はセレブリと交戦中にある。一体何が目的なんだお前等は?」

どうやら宇宙船はセレブリを占領している異星人の哨戒に引っ掛かったらしい。

「惑星セレブリに観光に来ましたニョリン」

「観光、だと?」

向こうも意味が分からないに違いない。お前のせいで俺の千年後の人生は台無しだニョリコ。


近くに居た偵察艦に誘導され、小型宇宙船は惑星セレブリの宇宙軍港に着陸する事になった。滑走路から軍港の施設の中に入る。

宇宙船の乗降口が床に付くと、武装した兵士が乗り込んできた。異星人とはいっても姿かたちは普通の人間だった。俺は手を上げ、兵士に囲まれる。

機内に人間は俺しかいないとわかると、宇宙船の乗降口から降りるように指示された。

スロープを下って行くと、俺の前には軍服に勲章を付け、緑のコートを羽織った体格のいいカイゼル髭のおっさんが立っていた。50代ぐらいだろうか。手首にブレスレット、両指には指輪をいくつもしている。

「さっきは観光だと言っていたが、本当の目的は何だ小僧?奴隷になるとわかっていて交戦中の惑星に来る奴などいない」

「俺は全然来たくなんかなかったですがAIが暴走して連れてこられたんです。」

「お前はセレブリ人なのか?」

「いいえ」

「本当か?調べればすぐわかるぞ」


怪しげな光を放つ装置を兵士から渡され、おっさんは俺にそれを向ける。

直ぐ近くに居る軍服を着た厳つい男に話しかける。

「どうだ将軍?」

ホログラム画面を見た将軍と呼ばれた男は

「セレブリ人ではありません」

「そうか。言ってる事は真実のようだな」

「しかしセレブリ人の千年前の遺伝子型に酷似しています。今現在は確認されていない型です」

「どういうことだ小僧?お前は何者だ?」

俺は正直に千年間、惑星スメリで眠っていたと話した。


「あのような小さく不毛な惑星に人が居たとはな」

ホログラムを開いた元帥はスメリ星の詳細を調べ出した。

「密度がとても大きい。資源も豊富だ。あの大きさで大気があるのか。窒素がほとんどを占めているがサブリンチの機械で酸素は鉱石から供給している」

独り言を終えるとおっさんは顔を上げ、嫌なニヤけ顔をして俺を見た。

「私は戯れにあの星を消そうと思ったことが何度かあるが、生きてて良かったな小僧」

その時兵士の一人が、偉そうなおっさんの前に来て

「元帥閣下、惑星ハレームを占領したという報告が入りました」

「元帥?」

このおっさんが最高司令官で惑星ハレームが占領された?

「予想より早かったな。奴等は抵抗しなかったということだ」

元帥が手を上げると兵士は敬礼して去って行った。

「小僧。我々の支配下に置かれたハレームの奴等はどうなると思う?」

「どうなるんですか?」

「女は性奴隷、男は奴隷だ。働けない者は処刑することになる」

俺は驚いて思わず

「なんて野蛮な。滅茶苦茶だ。未来なのに奴隷なんてまだあるのか?」

「あたりまえだ。いつの世も強い者が勝ち、弱い物は踏みにじられる。宇宙世界でもそれは変わらない。それが真理だ」

「あなた達はどこの宇宙のどこの星人なんですか?」

「ジャイガン銀河帝国、ベラマッチョ星人だ」

なんだその名前。

「我々は銀河バーバリアンと言われている。セレブリは科学技術は進んでいるが、兵器は貧弱だった。だから我々はいともたやすく占領する事ができた。だが、あの首都を覆っている城塞都市型防御フィールドは別物だ。我々の攻撃にびくともしない」

「じゃあ、完全に惑星セレブリは陥落した訳ではないんですね?」

「そうだ。我々も手をこまねいているのだ。そうでなければ私がこんな所でお前と話しているわけがない。暇だったから交戦中の惑星に観光でやって来たという馬鹿を見にきた」

元帥は俺の顔を見てニヤりとした。

「それで俺はどうなるんですか?」

「セレブリ人であれば奴隷だが、お前は違うのでジャイガン帝国5級民だ」

「5級とはどのような国民なので?」

「働くことは許されない。物乞いをしながら生活するだけの国民だ」

これまた酷いカースト制度だな。こんな奴らが宇宙を支配したら悲劇だ。未来人のくせに進歩がまるで無い。糞みたいな奴らだ。

「なんだその顔は?不満なのか?」

「当たり前ですよ閣下。物乞いだけするだけなんて死んだほうがましです」

「じゃあ。死んでみるか?」

元帥は俺に銃を向けた。

「えっ?嘘でしょ?」

その時俺が乗って来た小型宇宙船から声がした。

「やめてくだされ元帥閣下」

元帥は銃を向けたままで声のする方に顔を向けた。

「何奴だ?」

「私ことニョリコですニョリン」

「なに?ニョリンだと?」

「その語尾は偉い人には通じないぞニョリコ。不快にさせてしまって逆効果だ」

元帥閣下は目頭を押さえ

「お袋もその語尾をよく使っていた。懐かしいな」

「そんなばかな」

「お袋は小さい頃からニョリンという語尾をつけて、よくいじめられていたと言っていた。しかしお袋は信念を貫いて88歳の死ぬまでニョリンを言い続けた。最後に掛けてくれた言葉は、『最高司令官になっておめでとうだニョリン』と言っていた。私は忙しくてお袋の死に目に会えなかった。それをずっと後悔し続けている」

俺は不思議な感覚で元帥を見ている。元帥の眼は少しうるんでいるようだった。

「ニョリンを使う者に悪い奴はいないと俺は思っている」

「元帥閣下。ケイタンを3級国民ぐらいにして欲しいニョリンコ」

「わかった。ニョリコさんが言うならしょうがないな。だが3級は行き過ぎだ。せいぜい4級民だ」

「そんな公私混同でいいんですか?」

「なんだ小僧?嫌なら奴隷にしてやるぞ」

「いえ。全然問題ありません。それで4級国民というのはどのような国民なのですか?」

「4級民は働くことが許される。中間層の一般的な3級の帝国民とさほど変わらない。違いは、入れる飲食店等が制限される。1級、2級帝国民が利用する店には入ってはならない。1級、2級国民が視界に入ったら頭を下げて敬意を表さなくてはならないという事だ」

全然ノーマルとは違うぞ。外に出るのが嫌になりそうだ。俺はおそらく引きこもってしまうのだろう。

「4級は通称サンドバッグと呼ばれている。死なないように体は鍛えておいた方がいいぞ小僧」

恐らく理不尽に暴行を受けるという事だろう。野蛮だ。こんな事を考える腐った奴らなのだこいつ等は。

すると元帥閣下は将軍の方を向き「こいつをジャイガン帝国4級民で登録しておいてくれ」

「承知しました。閣下」

「よし。もうどこにでも行っていいぞ小僧。ここから消え失せろ」

「はあ、わかりました」

俺は逃げる様にその場を立ち去ろうとする。すると宇宙船から大音量で

「ケイタン。ニョリコを置いてどこにいくニョリーーン!」

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