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ノブさんは続ける。
「俺らの世代って、フリーターって、そりゃ溢れていてさ、バイト2個、3個の掛け持ちは当たり前…その月、手取りで30万くらいは入ったから、そりゃ、まぁ、パーッと使ってさ。元気があるから、また同じように働いて、働いて、そして使って使ちゃう…。
この『憩いの家』、俺の旧家なんだ…今は改装して、こんなふうにバリアフリーに、なってるけど、それこそ昔は、ここで若い奴ら皆、集まっては夜な夜なドンチャン騒ぎしてさ…。
あのさ、松くん…松くんなら分かると思うけど、世の中、スゲーやつの上には、更に上がいてさ……テルも、そりゃ、スポーツは出来たし、面白いこと、考えたり、言ったりするが、やはり、世の中は広くて、もっと凄いやつは、ゴロゴロいて……俺も、テルも、いつか、それに気づいてたんだけど、テルは止まれなかったんだろうな……そんで、結局、誰の言うことも聞かないヤツだったんだよ……俺の知らないところで、ヤバいクスリに手を染めてさ…ある時、俺が、ここで何かガソリン臭いことに気づいて、そしたら、テルが己にガソリンまいて、火を放っててさ……」
僕は、下を向いたまま、止めどなく流れる涙と鼻水を拭うことを出来ずにいた……。
「俺からしてだぜ、…俺から見ていて、松くんは、完成してるよ。もう、ずっと、そんな、松くんでいてほしいけど、松くんも、きっと、社会に打ちのめされるんだろうなぁ…。」
ちゃんと聞こえていた。
僕には、しかと聞こえていた。
「…あの、また、ここに来てもいいですか?」
「いつでも、遊びにおいで♪」
僕は、その時、やっと鼻水と涙を拭い、
顔を上げ、テルさんの優しい笑顔を見た…。