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17ページ目:武器についてと鍛冶屋到着

 案外、あっさり受け入れてもらえたな、なんてティオは呆気にとられていた。

 お母さんも、サリアさんも、別にティオを責めるようなことはせず、ただ作戦とも言えない作戦もどきの詳細を尋ねて、お母さんは「なら頑張って強くならないといけませんね」と、サリアさんは「面倒事ぐらいは想定内よ」とだけ言って、その後は何も無かった。

 ティオと同様、私も正直少し驚いた。

 あまりにもあっさりと、自分らの住む街が襲われようとしているのに受け入れるものだから。

 もしかしたら、2人とも問題に慣れているのかもしれない。考えてみれば私は2人の過去をまるで知らないのだから、その可能性は多分にあるだろう。

 2人が『血縁』としてかつて何をしていたのか、どういった経緯で出会って、お父さん亡き後、私の面倒を頻繁に見ることになったのか、いつか聞けたらいいなとも思う。


 さて、それはそうとして。

 そんなことがあったのが昨日のお昼の話。

 その後は酒場と宿での接客仕事を経て、食事などなど必要な寝支度を済ませ、自室で眠りについた。

 そして目覚めた今日。 今日はティオの要望を叶えに私の知り合いの鍛冶屋一家に話を通しに行く日なわけだ。

 もちろん仕事を疎かには出来ない。 今後旅に出るためにお母さんの印象を良くしておく必要があるわけだから。

 仕事を疎かには出来ないし、するつもりもないのだけど...


 ...まるでやる気が出ない。


 なんでかって理由は明々白々で、昼休みが地獄であることが確定しているからだ。

 魔力操作のトレーニングなんて甘い甘い。

 というかそれ自体、私たちの仕事に支障が出ないレベルに合わせてティオがメニューを組んでくれているものだからむしろ楽しいし、なんなら気分転換というか、いい運動にすらなる。

 最初は文句を言っていたサリアさんも少しその時間を楽しみにしつつあるみたいだ。身体が健康になっていっているらしい。体重も減って体も引き締まったとか。

 たった1ヶ月足らずでこれとは。

 ティオ曰く、運動だけじゃなく魔力を使うとエネルギーを大きく消費するから基礎代謝?が向上するらしい。

 魔力操作トレーニングダイエット法。ちょっとお金の匂いがする。 今度ティオに打診してみようか。ダメだろうけど。


 閑話休題。


 ダメだ。頭があいつの事を考えるという行為そのものを拒否している。

 鍛冶屋の息子。

 悪い奴ではないんだけど...


 出来れば留守であって欲しいと心の底から思う。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ノ〜ルちゃ〜ん。あっそびーましょー!...おわぁっ?! ど、どうした?!」


 昼の休み時間に入って、制服から着替えようと一度部屋に戻ったティオは、私を呼び出そうと掛け声とともに私の部屋の扉を開き、


 ベッドの上で溶けている私をみて驚声をあげた。


「ティオ、毎度言ってるけど隣の部屋にお客さんが泊まってる場合もあるんだから廊下では声を落として。」

「あ、ごめん...じゃなくて!」


 また大声を上げて... まぁ、部屋の中に入っちゃって扉を閉めれば、防音自体はしっかりしてるし問題ないんだけど。


「んな事言ってる場合か! 大丈夫? 具合悪い?」


 溶けかけた私の顔を心配そうに覗き込むティオはそんな気を配るような言葉を投げかけてくれる。

 対して私はそんな心配を払拭すべく、液状化しつつある足に力をこめ、立ち上がろうと試みる。


「体は健康絶好調。ただし心は急不調。」

「なんで?」

「...この後、行くんでしょ?」

「ん? うん、鍛冶屋さんのところに連れてって貰いたい。」

「あぁ〜、やってらんない。私のやる気がエンプティ...」

「なんだこいつ...」


 ベッドに顔を埋めているから、ティオがどんな顔をしているかは分からないけれど、きっとじとりと睨みつけているんだろう。

 ティオは大きくため息をついてボスりと私の隣に腰掛けた。


「場所さえ教えてくれれば僕一人で行くけど...どうする?」

「んん〜... 私の武器も見繕うんでしょ? 行くよ、行きますよ。.....ほっ!」


 お腹に息を貯めて、勢いのままに立ち上がる。やっとこさティオを視界に入れると、きょとりとした顔で目を瞬かせ、そうかと思えば可笑しそうに口に手を当てて笑い始めた。


「...何?」

「いや? くくっ...ノルの弱音らしい弱音はなんだかんだ初めて見たなと思って。」

「.....そりゃそうでしょ、まだ出会って1ヶ月程度なんだから。」

「あはははっ!」

「笑うな! ほらさっさと行くよ!」

「はいはい。ぷふっ」

「いつまで笑って.....!」


 笑いがやまない様子のティオを1発ひっぱたいといて、私達は鍛冶屋へ向けて歩き始めた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「んで、件の場所はどこにあるの?」


 串焼きを片手に、ドライフルーツの入った入れ物を片手に持ったティオはもごりと頬張ったその口でそう言葉を転がした。

 私たちは今、目的の鍛冶屋へ向けて足を運んでいる最中なのだが、ティオは歩いているといつもどこからか食べ物を見つけて買ってくる。しかもちゃんと値切って。


「...まずこの街は円形に大通りがバツ印で入ったような形をしてるの。」

「へぇー、知らなかった。」


 なんで知らないんだろうか。

 ティオはティオで忙しかったから多少は仕方ないのかもしれないが。


「それで、扇形のエリアをそれぞれ『北区』、『東区』、『西区』、『南区』って呼んでるんだけど、今回行くのは西区のど真ん中。」

「ふぅん...ちなみに『あかたま』はどの辺?」

「バツ印の交差部分、区分で言えば北区かな?」

「え、めっちゃ立地いいじゃん。」

「そりゃあ長年続いてる老舗旅館だから。」


 今思えばそんな長い年月を代々宿屋兼酒場の主人として経営し続けたのも『血縁』であることが所以だったのかもしれない。

 仮に《英雄》が目覚めたとして、彼らは人が集まる場所を第一に目指すだろうと考えて。

 ...実際は目覚めた直後の英雄様は路地で餓死寸前、もはや動く気力すら残っていなかったわけなのだけれど。


「よく考えるとこの街の名前すら知らないな。」

「嘘でしょ.....」

「名前あるの?」

「.....セントラル。」

「ほぇー、セントラル...うん、覚えた。」


 気の抜けた返事に肩を落とす。

 確かにこの世界に関しては知らないことの方が多いとは言ってたけど...


「ティオって私がいなかったらどうなってたんだろうね。」

「ん〜... 死んでんじゃないの?」

「えぇ...」


 思ってたよりも重たい答えが帰ってきた。

 死んでたかなぁ。殺しても死ななそうなものだけど。


「そういえばさ、鍛冶師さんで思い当たるのが一人、一家しかいないとか言ってたけどそんなに少ないもんなの?」

「武器鍛冶ってなるとどうもね。フライパンとか作ってる人だったら結構いるんだけど。」

「へぇー...魔獣なんてのがいるのに?」

「それは...確かに?」


 言われてみれば魔獣討伐には武器を使用するくことだってあるだろうし、実際私が見たハンターと呼ばれる人達は武器を身につけてた。


「う〜ん...あんまりお客さんがいないから儲けがない、とか?」

「でも今から行く場所は十七代続いてんでしょ?」

「そっか.....わかんないなぁ。」


 そういえば魔獣への対抗手段として商人たちも武器みたいな道具を携帯しておく、って話は聞いたことある。それで食べていってるんだろうか。

 でも、だとしたら他の人達も武器を作ってもいいと思うんだけど... 人数が少ないのであれば隙間産業的に稼げる気はするし。


「まぁ、もし話せたら聞いてみたら? 多分教えてくれるよ。」

「そうするかぁ。」


 今まで考えたこともなかったし、かなり気になる。

 それにもしかしたらお金を稼ぐって目的の手がかりになるかもしれないし。


「そういえばさ、ティオは剣とかって作れないの?」


 ふと気になった質問をなげかける。

 前に魔力のデモンストレーションとして私たちの目の前で剣やら薙刀やらを作ってコネコネと作り替えていたのだから、考えてみれば鍛冶師に頼る必要なんてないんじゃないだろうか。


「作れないよ。僕にできるのは『剣の形をした刃物を作る』ってことだけ。」

「...それは、剣とは違うの?」

「まるで違う。」


 そう言ってティオはやや大袈裟に首を横に振った。

 徐に手のひらサイズの、舗装の石畳が剥がれたものを手に取り、それを手中に握りこむ。するとそれは淡く鈍色の光を発しながら姿を変えていき、やがて剣の形を為した。


「この程度だったらできなくもない。けど、」


 そう続けて、石畳に向けて剣を腕を振るう。

 するとパキンと子気味のいい音を立ててその剣は中ほどから折れてしまった。


「耐久力も、切れ味も、本物には到底及ばない。だからオスロの時もしっかりと折られちゃったしね。」


 ティオはそう言いながら折れた剣先を手に取る。柄と剣先は再び鈍色の光を発し、元の石ころへと姿を戻した。


「オスロと戦った時の剣ってティオが作ったやつだったんだ。」

「そうだよ。サッと作って、んですぐ折れた。」

「じゃああれがしっかりとした剣だったら、あの戦いってどうなってた?」

「ん〜...初撃で終わってたんじゃないの?」

「...! そんなに違うんだ。」


 少し驚いた。

 でも、それで言うなら確かにあの戦いはわかりやすいかもしれない。どれだけティオが技術を持って相手の攻撃を躱し、反撃をしても、有効な手段がなければただ時間がかかるだけだった。

 あの時、私がいなければティオは負けていたんだろうか。ティオがいなければきっと私は死んでいただろうけど。


「だからちゃんとしたのが欲しいんだよ。それにこの世界だったら鉱石も違うだろうし、面白いのができそう、って興味もある。」

「『英雄』様のお眼鏡にかなえばいいけどね。.....っとそろそろ着くよ。」


 雑談やらに興じているうちにいつの間にかお目当ての場所の近くまでやってきていた。 大通りからはかなり逸れた場所なものだから少し薄暗い。

 それから一分ほど歩いたところで鍛冶屋の看板が目に入った。簡素に『鍛冶』とだけ書かれたその看板がかかった家屋は、街の雰囲気とは違い『黄の世界』に多い「和」の様式が取られている。なんでもご先祖さま、つまり一代目は『黄の世界』の人間だったから、らしい。

 扉の前に立ち、ティオに目配せで確認だけして戸をコンコンと軽く2回叩いた。


「はい。ただいま向かいます。」

「げっ...」


 戸の先から聞こえてきた、聞き覚えのある声にに思わず引きつったようなうめき声が肺から漏れ出す。

 それを見たティオは心配そうな顔をして、


「どうしたの、()()。大丈夫?」


 と私の名前を呼んだ。


 ...呼んでしまった。


「ノルだって!?!!??」


 途端、戸の奥から聞こえてきた落ち着いた声はそれを荒げさせ、ガシャガシャと何かが崩れ落ちる音と共に声に負けず劣らず荒々しい足音が近づいてくる。

 そしてその音は戸の手前で立ち止まり、


「いらっしゃい、ノル!!我が愛しの花嫁よ!」


 戸を勢いよく開き、私に抱きつこうと飛び出してきた。


 ので、


「ぶげらぁっ!?」


 全力で魔力を込めておいた足を、全霊で顔面に振り抜いた。

 ...こいつがいるから、ここにきたくなかったのに.......

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