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10ページ目:謝罪と償い

「ちょ、ちょっとやめてください!」

「ムリです!ほんとに、まじで、お望みとあらば指を詰める所存です!」

「そんな事しないでいいですから!サリア!こうなったのもあなたが追い詰めるようなことを言うからでしょ!なんとかして!」

「...これ、私が悪いのかしら?」


 てんやわんやと騒ぐ3人をぼーっと眺める。

 いやはやまさかサリアさんにそんな秘密があったとは思わなかったなぁ...

 そしてそれを聞いたティオがこんなにも動揺するなんて。


「顔を上げてくださいティオ様!サリアはああ言ってましたけど、私はそこまで気にしてませんから!」

「そこまで、ってことは少しは気にしてるということですね分かりました死にます。」

「あぁーーー!ちっとも!全く全然微塵も気にしていないです!」

「ノルちゃん、彼はいつもこんなに騒がしいのかしら?」

「いえ、元気ではあるんですけど...」


 人並外れた人外と対峙した時も、規格外の化け物大熊に襲われた時も飄々と笑っていて、せいぜいが冷や汗を流す程度だったティオがこんなに狼狽するとは思わなかった。


「ねえ、そんなに慌ててるってことはティオは『血縁』について何か知ってたってこと?」

「...ううん。全く知らなかった。」

「え?」


 全く知らなかった?

 のに土下座までするの?


「言い訳みたいになっちゃうけど、4人の《英雄》の中で僕が一番最初に眠りについたんだよ。」

「一番最初に?」

「そう。」


 私の、確認するようかオウム返しに頷いてティオは話を続ける。


「僕は四世界の『時間』と『空間』を創って、そこで眠りについた。」


 うわ、また頭が痛くなるような難しいこと言い出した。

 時間と空間を創った?

 なんだそりゃ。


「理解しなくてもいいよ。世界の基盤となる項目は僕の担当だったってだけだから。」


 あぁ、そりゃどうも。

 っていうかナチュラルに読心しないで欲しい。

 あんたそんなこともできるの?


「そして、僕が眠る前までは『血縁』というシステムは英雄たちの間でも一切考えられていなかった。」

「...なるほど?」


 適当に相槌を打った私をティオは訝しげに見つめて、軽くため息をついた。

 しょうがないじゃん。わかんないんだし。


「簡単に言うと、『血縁』のシステムは僕が眠りについた後に他の英雄によって定められたってこと。」


 こんなこと考えるのはたぶん()()()だろうなぁ。とぼやくティオ。


「...私が言うのも変かもしんないけど、それならティオが謝る必要はないんじゃないの?」

「いや、」


 私の疑問に、ティオは強い意志を持って首を横に振った。


「リーダーとして、僕には仲間の行動の責任を取る義務があるんだから。そんな半端じゃダメなんだよ。」


 そう言って先程と同様にティオは床に額をつけた。

 ...責任を取るっていうのはまあ分かるとして、それから出力された結果がそれってどうなんだろうか。


 ...ん?


「ま、待ってティオ。一個だけ聞いていい?」

「いいよ。...顔上げた方がいい?」

「上げて。そしてそろそろお母さんの胃に穴があきそうだから二度と下げないで。」


 ティオは渋々といった感じに、ふくれっ面で土下座を崩して顔をこちらに向ける。


「今さ、リーダーって言った?」

「言った。」

「...リーダーって何?」

「...そんなことも知らないの?リーダーっていうのはチームの先頭に立って目標を達成するために行動指針を定めたりする──」

「んな事はわかってるよ!!」

「はぁ?...あぁ、そっか。元々英雄って言われてる僕を含めた4人って一個の小隊だったんだよ。」

「それも違う...なんのリーダーなのかって聞いてるんじゃない...!」


 それも衝撃の事実というか、現代まで全く伝わっていない話ではあるけども。

 リーダーって、つまり4人の中で一番偉い人だってことでしょ...?

 それ自体がどうこうってわけじゃないけどさぁ...!


「なんでなんも言わなかったの?」

「...聞かれなかったし?言う必要も無いかなぁって。」


 これだよ。


「あの、ティオ様。お話の途中で申し訳ありませんが、私はその件に関して一切の悔恨もありません。なのでどうか謝らないでください。」

「...分かりました。でも、必ず償います。それだけは許してくれませんか。」

「はい。」


 私が頭を抱えているうちにお母さんとティオの間では話が纏まったらしい。

 ティオは改めて姿勢を正して、今度はサリアさんの方へと向き直った。


「サリアさん、質問に答えます。」


 胸に手を当て、顔と目を伏せ、懺悔するように言葉が綴られる。

 サリアさんは何も言わずに、その目でただティオを見詰めた。


「僕は何も知らなかった。これを言い訳にするつもりはありません。僕の仲間が犯してしまった過ちは、必ず僕が償います。あなたが望むなら、全てが終わったその後、」


 一拍間をとって、ティオは少しだけ深く息を吐いて顔を上げた。


「この命を差し上げます。」


 その表情は晴れ晴れとした、快晴のような笑顔だった。

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