007 停滞
毎日、まだ暗い時間に目が覚める。
思い返せば五日目の朝だ。
今日は肌寒い。解決方法は思いつかないので諦める。
先行き不安であるが、生きるという点では、今のところ、かなり運が良いと思う。
直ぐに水が見つかったし、量は少ないが食事も出来ている。
火おこしは失敗したので、もう少し工夫が必要だが、どうしよう。紐の強度を上げるか、そもそも、弓ギリ式以外を試してみるか。
僅かに外が明るくなってきたのでシェルターから這い出ると、霧雨が降っていた。
空を見れば、分厚い雨雲が覆い始めているようで、うねる様な風音と合わせて、なんだか不気味さを感じた。
そのうち本降りとなり本日の初仕事は、吹き飛ばされようとする入口の椰子の葉もどきを抑えるという、あまりにも虚しい仕事だった。
シェルター入口で、椰子の葉もどきを抑えるうちにずぶ濡れとなり嫌気が差して、濡れついでに外に出た。
シェルター付近で天水を確保したいので、貝殻を拾って洗った後に、シェルター付近に投げ上げる。
シェルター前のスペースに、貝殻をひっくり返して並べていく。
十五個を並べ終わって、すっかり冷え切った身体でシェルターに戻るが、椰子の葉もどきは吹き飛ばされ、入口は崩れた流木しか残っていなかった。もうシェルターではなくただの洞窟だ。
出来るだけ洞窟の奥に引っ込み、肌を摩りながら寒さに耐える。
やっぱり濡れるのは不味かった。拭くものが無いので、風を浴びると一気に体温を持っていかれる。
結局、その日は雨が止む事はなく、外は大荒れの
まま夜になってしまった。
水は貝殻に溜まっているので十分だが、腹が減った。
何も出来ることがないので、少しでも暖かい体勢を探しながら寝るしかなかった。
◇◇◇
六日目の朝だ。
大雨は続いている。
お腹空いた。
ただじっと横になり、寝て過ごす。
◇◇◇
七日目。
まだ雨が続いている。
お腹が空いて、フラフラする
何か食べたい。
◇◇◇
八日目。
夜に風の音が小さくなっていたので期待していたとおり、ようやく晴れた外を見ることが出来た。
早速海岸を探索すると、流木や海藻が打ち上げられている。とりあえず、見た目が食べられそうな海藻を選んで拾い食いする。
数日前まで怖がって毒味なんて事をしていたが、もうどうでも良かった。空腹には勝てない。明らかに変な味とかしない限り食べる事にした。
磯にも行ってみるが、いつもより貝が少なかったがしつこく探し、多少、お腹が膨れる。
まだまだお腹は空いてるけど。
取り急ぎ、目立つ流木を初日の寝床に運んでいく。
濡れない場所に薪として保存しておきたい。
流木を運んでいると漂着物の中に骨を見つけた。多分、動物の大腿骨だと思う。半ばから裂けるように折れており既に鋭利な刃物の様だ。
思わぬ掘り出し物に、早速シェルターに持ち帰り研いで行く。
これを利用してえんぴつ槍をヴァージョンアップさせたい。
えんぴつ槍の石突側は折った時に割れていたため、そこに石を打ち込み無理矢理広げて、研いだ骨を挟む。
上から紐で巻き付ければ、上手くいきそうだ。
腹が減っているので、再度、磯に行くと巻貝が二十個程見つかった。手早く、食べてしまう。
磯からの帰りに枯草を集め、紐作りを始める。
草がそれほど長く無いため、捻をかけるのに時間がかかる。三つ編みは慣れてきたのか、前回程は苦労せずに、二メートルほどの草ロープが完成した。
出来上がった草ロープでしっかりと骨ナイフを固定していく。
見た目は酷いが、まぁ槍とわかるものが出来上がった。
急いで貝取りと食事を済ませ、暗くなるギリギリでシェルターに帰る。
槍作りに夢中になって、シェルターの修理をすっかり忘れていた。このままだと、風が吹き込むので、明日は一番に修理しようと思いながら、丸まって寝てしまった。