006 火起こし
今日も暗い時間に目が覚める。
明るくなるのを待つ間、日課となりつつある行動計画を立てていく。
ナイフ、紐、靴、洋服に火おこしといったところか。出来れば紐が欲しい。
インターネットなんて無いので、何となく記憶にある方法でしか、物作りが進まない。
繊維は木の皮を煮て採取してた気がする。
あれは紙作りの時だったっけ?
藁で作ったロープをホームセンターで見た事がある。水汲みの時に草で紐を少し作ったが、藁ロープを目指して、今度は丁寧に作ってみよう。
水も煮沸したいし、今日の目標はナイフの完成と紐の試作、火おこしというところか。
明るくなるのを待ち、シェルターから這い出る。
日課の水汲みと貝でご飯を済ませると、浅瀬を少し歩いてみた。もずくっぽい海藻がチラホラ生えているので、摘み取っておく。
靴を作らないと、砂地部分しか歩けないので、探索範囲が狭い。リーフ部分も見に行ければ、貝とかタコとか採れるかもしれないが、足を怪我するリスクがあるので、今はやめておく。
逆に満潮時に泳いで行って、潜って獲ろうかとも考えたが、水中眼鏡が無いので諦めるしかなかった。
水汲み、貝取り、食事の朝ルーティンをこなすと、今日はナイフ作り。
頭を空にして、黙々と貝を削る。
荒目の平らな石が見つかったので、昨日よりは作業が捗る。
粗方、ナイフの形状は完成したので、刃を付けていく。鉄に比べれば遥かに脆い貝殻なので、かなり鈍角にして、鉈の様な刃で仕上げてみた。
切れ味は悪いだろうが、無いよりは全然マシだ。
早速、崖下の草を刈っていく。
予想通りの切れ味で、手で引きちぎるのと良い勝負かもしれない。
紐の材料になりそうな枯れ草を探し、ナイフで根元をブチブチと引きちぎる感じで切っていく。
一抱え程、刈り取ると早速、紐を作っていく。
何となく記憶を辿り、足の指に草を引っかけ、テンションをかけながら手の平で捻を掛けていくが、全然、上手くいかない。
草を石で軽く叩き、柔らかくすると上手く行き始め、時間はかかったが、数メートルの紐ができた。
ただ、全然強度がない。
ちょっと引っ張るだけで、ブツブツと千切れてしまう。
仕方なく、更に三つ編みにして、何とか一メートルくらいの紐が出来上がった。
いや、何時間、この作業やってたっけ?
こんだけやって、たった一メートルかよ。と思ったが、まぁ出来たから良しとしよう。
次は火おこし!
弓ギリ式に必要な材料を集める。
湾曲した枝、真っ直ぐな枝、板、窪みのある石。
板以外は、割と簡単に見つかった。
ノコギリなんて無いので、太めの流木を折り、割れ目に平らな石を打ち込んで、半分に割る。その割れた面を板替わりにする。
火口は枯れ草と穂を混ぜて、石で良く刮いでおいた。小枝を貝殻ナイフで傷つけて、全然フェザーになってないフェザースティックも作っておく。
板に窪みと溝を掘り、火口の上に乗せる。
湾曲した枝に紐を緩めに張って弓を作り、軸となる真っ直ぐな棒にその紐を巻きつけ、窪んだ石を使って、軸棒を軽く押しつける。
あとは、いい感じに弓を前後させる。
なかなか上手く軸棒が回転しない。
無理矢理ゴリゴリと回転させるうちに、スムーズになり、強めに軸棒を押し付けると、きな臭い匂いと共に板が焦げ始める。
こっから全力で行くぜと思った途端、バチんと弾けて紐が切れてしまった。上手くいかない。
その後、紐を結び直し、何度かトライしたが、煙は出るものの、火種が作れない。出来る前に紐が切れてしまう。
紐が短くなって結び直し出来なくなったところでギブアップ。
だんだんと薄暗くなってきており、慌てて夕方の水汲み、貝取り、食事のルーティーンを済ませる。
シェルターに戻る時には、もう真っ暗だった。
何とか暗い中登れたが、明日は気をつけよう。