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カブ太 5

 俺が進化してからどんぐらい経ったのか分かんなくなっちまったくらい、魔王の野郎は飽きもせず、ゴソゴソと木を切ったり運んだりしてやがる。


 俺たちの棲家をごちゃごちゃされんのは癪に触るが、まぁ相手は魔王だ。

 指咥えて見ておくしかねぇ。


 だがよ、オメェの呪禁も随分といなし方が分かってきてんだよ。

 まだ不意打ちは喰らっちまう時もあるがな、わかってりゃなんて事はねぇ。


 随分と進化した身体にも慣れてきたしな。


 そうして新しい身体で日々、修行に明け暮れてたらよ、魔王は俺を肩に乗せ、浜に置いた棺桶に乗り込みやがった。

 誰の棺桶を作ってるのかと思ったら、俺の棺桶か?

 いや、それにしちゃぁデカすぎるしな。

 相変わらず、何考えてんのかワカンねぇな。


「(やった!カブ太、浮いたよ!)」

「(ピコピコッ)ギャッ!しまった!」


 クソッ!棺桶が揺れ始めたんで、ビックリして呪禁を喰らっちまったぜ。っておいおい、棺桶が海に流されちまってるじゃねぇか。


 ふざけんなよ魔王!

 何度でも言ってやる!

 死ぬ時は俺を巻き込むなってんだ。


 海の上で、どうやって生きていくってんだ。さっさと糸を離しやがれ!


 と思ったら、棺桶は浜に糸で繋げてやがった。


 ビックリさせんじゃねぇよ。


 しかし、こりゃぁ棺桶じゃ無くて、もしかして船か?

 魔王は船作ってたのか?


 あんまり見窄らしいんで、すっかり棺桶と思ってたがよ。


 って事は、魔王は聖域を出ていきたいのか?


 確かにマザー、豚野郎、地龍に海竜と仕留めてんだ。コイツらより上はドラゴンしかいねぇ。

 聖域での目的は達したって事か。


 ん⁉︎


 じゃ今は俺が頂点じゃねぇか!


 クソッ、この忌々しい糸さえ外れれば、、甲一族の栄華が待ってんだ!



 良し!

 計画の練り直しだ。


 今まで魔王に復讐しようともがいてきたが、闇雲にやってもダメだ。

 認めたくはねぇが、魔王は強ぇ。正直、進化した俺ですら足元にも及ばねぇ。


 こうなりゃ長期戦だ。


 何としても、魔王の糸から逃れる!

 そして聖域を支配して、十分に力をつけるんだ。


 それから、いつか決戦の日に向け、この囚われの日々を無駄にしねぇように、魔王の弱点を探すんだ。


◇◇◇


 それから何日か経った頃、ついに魔王が島を出るようで船に乗り込んで沖を目指し始めた。


 ここんところ毎日、魔王の隙を窺っていたが糸を緩める気配すらねぇ。

 俺の飛べる距離にも限界がある。

 あまりに沖に出られちまえば、戻って来れねぇかもしれん。


 時間がねぇ。ダメ元だ。

 糸は外れちゃいねぇが、魔王の隙を見て飛ぶしかねぇな。


「(カブ太、ヤバイ。でも落ち着いて、まだ島は近くだ)」

「(ブン、ブゥン)ウォォ、魔王!糸を離せ!」


 一か八か、飛び出そうと思ったが、魔王の呪禁に阻まれる。

 クソッ、逃げられねぇ。


 もうダメかと諦めかけたが、魔王は島に船を向け、戻っていく。

 何なんだこの野郎。俺をおちょくって遊んでやがるのか?


 最高にムカつく奴だ!


「(カブ太、ヤバかったなー。ちょとした油断で死ぬとこだったよ。帆があんなに進むとは思わなかった)」

「(ピコピコッ)グエェ、長ぇよ!」


 ちくしょう!絶対に逃げてやっからな!


 どんな隙も見逃さねぇ。勝負は一瞬だ!

 この糸が緩む時を、待つんだ。


◇◇◇


 それからは神経を研ぎ澄ませ、脱出の機会を逃さぬよう、魔王の一挙手一投足を観察し続ける日々だ。


 もう相当油断でもしてねぇ限り、呪禁も喰らう事はねぇ。きっちりいなせる様になってきた。


 俺も成長してる。


 待ってろカカァ!

 必ず戻るからな!


◇◇◇


 毎度の事ながら、魔王には嫌気が差す。


 重厚な魔力が島に向かってきてるってのに、逃げもせずウロウロしてやがる。

 何で魔王は平気なんだ?

 こっちは既に息苦しいってのによ。


◇◇◇


 重しを付けられ、水の中に放り込まれてたみてぇな魔力の中、呑気な顔して魔王が寝てやがる。

 こっちは既にヘロヘロだってのによ。


 起きろよ!

 テメェに客だよ!


 ドラゴンが来てんだよ!


 ウググゥ、ダメだ。

 意識が飛んじまう。


 やるしかねぇな。


 魔力を振り絞り、魔石を覆っちまったが、前回と違って、意識までは失わねぇ。

 まぁ、身体は全く動かねぇがな。


 ひっくり返っちまって、情けねぇったらありゃしねぇ。こんな姿、カカァには見られたくねぇもんだ。


 しっかし、魔王の奴はドラゴンと何してやがんだ。


 ってか、ドラゴンは何で魔王を殺さねぇんだ?


 何だよ!魔王の奴、ドラゴンに触ってやがる。

 すげ〜な。あいつの魔石どうなってんだ。

 あんな直で魔力受けて何で死なねぇんだよ。


「(カブ太!カブ太!)」

「(モゾモゾ)オヴォッ!」


 だから、魔力が強えんだよ!

 何で毎回、そんな大魔力をぶっ放しやがんだ!


 まぁ、何とか身体は動かせるようになったな。

 悔しいが、礼を…って言うか!

 クソッ!


 しっかし、ドラゴンに触るとはねぇ。

 俺たちの延長線上にいると思っていたが、魔王もドラゴンみてぇに存在の軸が違うかも知んねぇな。


 いや、俺が弱いだけだ!

 弱気になっちゃいけねぇ。

 ここまでやられた恨みを晴らさずには生きていけねぇ。

 今はまだ俺が弱すぎて、魔王の力が計れねぇだけだ。


 あんなドラゴンみてぇのが、何匹もいてたまるか。


 ドラゴンは別として、この世界の頂上は俺が取るんだ!


◇◇◇


 それは唐突に起きた。


 いや、常に神経を張り詰め、機会を窺い続けていた俺の執念が勝ち取ったとでも言うべきか。


 魔王の野郎はドラゴンと会ってから、少し腑抜けてやがった。


 長年の経験が物をいうぜ。


 そういう時に大事は起きるんだ。

 俺は見逃さなかったね。


「(なぁカブ太、今までありがとうな。ついに島を出る日が来たよ)」

「(ピコピコッ)ガッ、グッ!」


 ふぅ〜上手くいなせたぜ。しかし、いつもよりやけに重い魔力を放ってきやがるな。


「(カブ太、お前どうする?一緒に来るか?)」


「ブンッ!」



 ウォォォォォォォ!

 やった!やった!やった!

 やってやったぜ!


 ついに糸から逃れたぜ!


 クゥーーー!


 ハーーーーーッッ!


 自由だ!自由だ!

 俺は自由だ!


 カカァーーーー!

 俺は自由になったぞーーー!




◆◆◆


「ねぇジィちゃん。それで魔王はどうしたの?聖域から居なくなっちゃったの?」

「あぁ、魔王は居なくなっちまったよ」


「じゃジィちゃんは魔王を追っかけて行ったの?」

「そうじゃよ。魔力渦巻く魔石鉱、海底神殿に雲の上まで突き抜ける山にも行ったなぁ。後は巨人の巣なんてオットロシイとこにも行ったんじゃ」


「ヘェ〜!ジィちゃん凄〜い!」

「そうじゃろ、そうじゃろ」


「ねぇねぇ、あたしジィちゃんがコテンパンに魔王をぶっ殺すお話が一番好き〜!聞かせて聞かせて〜」

「ハッハッハ〜!そうじゃなぁ。あれはなぁ……」


「カブ太〜、カブ太何処に居る〜?」

「アッ、お館様だ!此処だよー、カリィと一緒に居るよ〜」


「あーカリィちゃん、来てたんだね」

「うん!今からね、ジィちゃんが魔王をぶっ殺すお話聞くの」

「カリィちゃん、ぶっ殺すは物騒だね。やっつけるぐらいにしとこうか」


「んで、カブ太?誰が誰をぶっ殺したの?」

「うぎゃ!お館様、もうあっしは念話使えますから、糸は必要ねぇでさぁ」


「いゃ〜念話するにも、糸を通した方が聞きやすいでしょ?」

「ウヒィ!お館様、念話というには、ちと魔力が多いですなぁ」


「まぁ良いじゃない。俺とカブ太の仲なんだし」

「全然、良かねぇよ!ウギャァ!」


◇◇◇


 まぁ聖域を出てからは色々あって、魔お…館様と甲一族の大決戦なんてやったりしてなぁ。

 結果は、まぁ、言わずもがなじゃ。


 お館様の話も聞いてみれば、随分と不憫なお方じゃ。


 今じゃ、魔力汚染の厳しい所で、調査から施行までこなす、なんじゃったかな、ゼネロルコン何とかとかいう、まぁ、何でも屋で一山当てなさった。

 わしも含め、聖域出身者を集めて、働かせてもろうとる。

 おかげで贅沢な老後じゃわい。


 さて、今日の夕食は何かのう?

 久しぶりに聖域産のブナに、付け合わせは魚の魔石が良いのう。

 おお、ビールを忘れちゃいけねぇなぁ。

初めて書いた拙い小説でしたが、いかがだったでしょうか。

皆様のありがたい応援、評価に勇気づけられ最後まで書くことが出来ました。

本当にありがとうございました。


いつになるかわかりませんが、また新作を書いてみようと思います。

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― 新着の感想 ―
[一言] 最後まで読みましたがラストは めちゃふきました。なかなか 面白い話でした。 次回作楽しみにしてます。
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