カブ太 2
魔王に捕まって数日が過ぎた。
どういうつもりか分からんが、魔王は魚の魔石を喰わねぇようだ。身ばっかり食ってやがる。
雑魚はいらねぇって余裕かよ。
こっちは少しでも魔力の器をデカくしなけりゃ死んじまう。
魚如きじゃ小さ過ぎて、大した足しには何ねぇが、無ぇよりマシだ。有り難く頂戴しようじゃねぇか。
◇◇◇
魔王は今のところ、浜をウロウロしてるだけで、まだ大人しくしてやがる。
何やってんのか詳しくは分からねぇが、武器を作ってやがるようだ。
そして俺はと言えば、奴の肩に造られた死刑台に乗せられている。いつでも殺せるって事かよ。
魔王の怖いところは、肉体的、魔力的なダメージに飽き足らず、こうやって精神的にも追い詰めてくる事だ。
舐めんなよ俺を。これくらいじゃ甲族の頭は折れねぇんだよ。
いつでもこの首くれてやる。死刑台がなんぼのもんじゃい!乗ってやろうじゃねぇか。
強がってはいても、一日中、魔王の肩に造られた死刑台に乗せられ、魔力を浴び続けりゃ、流石の俺も夕方にはダウン寸前だ。自慢のツノが痙攣してピクピク動いちまう。
カカァ、俺はまだ生きてるぞ。
何としても生き延びて、帰るからな。
◇◇◇
さらに数日が経つと、魔王はいつものように死刑台に俺を乗せ、あろう事か地龍の巣にちょっかいをかけ始めた。
コイツは本物の魔王だ。地龍を倒せる自信がねぇ限り、こんな事は出来ねぇ。コイツは地龍を何とも思っちゃいねぇんだ。
「(カブ太、下に水あるかな?)」
「(ピコ、ピコ)グアッ!てめぇ俺を巻き込むんじゃねぇ!」
「(降りてみるしか無いかな〜、絶対降りたく無いよね)」
「(ピコピコッ)ウゲェッ、これ以上魔力を巣に流し込むな!」
マザーを殺った次は、地龍まで狙ってんのか。
聖域を本気で取りにきてやがるな。
◇◇◇
地龍にちょっかいをかけたと思ったら、やっぱり先に豚を片付けるようだ。また、豚野郎のテリトリーで堂々と寝やがった。
そしてこうも馬鹿にされ続けりゃ、豚野郎が出てくるのは当然だ。
「(フッフッ)哀れよの、甲の」
「(ブンッブンッ)やんのか豚野郎!」
「(カブ太、ちょっと静かにして。刺激しないで)」
「(ブーーーン!ブーーーン!)ググ、魔王邪魔すんな。ふざけんなよ豚野郎!我が子を喰い殺された怨み!てめぇはぶっ殺す!」
「(ブフーーーッ!)纏めて喰らってくれるわ!」
クソッ、魔王め。何しやがる!
こんな時に飛べないようにしやがった。このままじゃ、殺されちまうだろうが!
離しやがれ!
糸を引きちぎろうと、何度も飛んではみるが、魔王の糸は柔じゃねぇ。
魔王が何考えてるのか分からねぇが、グズグズやってる間に、まともに豚野郎の突進を喰らっちまった。
「(カブ太、大丈夫か!)」
「(ブーーーン!)グエェ!今は俺じゃねぇだろうが。こんな時まで、魔力を流すな!豚と戦いやがれ!」
豚野郎が突っ込んで来て、絶体絶命かと覚悟したが、魔王が糸を出すと、豚野郎がすっ転んだ。
あーこりゃ決まったな。
豚野郎の負けだ。
「(ゴフゥッゴフゥッ)ヌガァァ!魔力を直接流し込んでくるだと!」
魔王は豚を転ばせると、糸を体内に入れやがった。
あの膨大な魔力を体内に直接だ!
考えただけで恐ろしい。こんな残虐な殺し方を平然と行いやがる。
魔王に強がって逆らうのも限界かも知れねぇな。こんな死に方はしたくねぇ。
「(ピィギャー!ピィギャー!)殺してくれ、せめて楽にしてくれ!」
エゲツないぜ。魔力で限界まで魔石にダメージを与え、最後は血で窒息死かよ。
「(カブ太、勘弁してくれよ。喧嘩売るにも相手を見ないと。こんなデカイのダメだって)」
「(ブゥーン)グゥエェー、頼む、俺は殺さねぇでくれ!」
逃げようと羽ばたいてみれば魔王が糸を長くした。
チャンスだ!
今のうちに魔石を喰うんだ。それしか、俺の生きる道はねぇ!
豚野郎!てめぇには怨みしかねぇが、あの最後には同情するぜ。
俺の魔力になって成仏しな!
俺は豚の魔石に貪りついた。
豚の魔石は今まで喰った魔石の中で一番デカかった。伊達に聖域の四強じゃねぇってか。
しかし、これで俺の魔力量も一気に上がったはずだ。
◇◇◇
豚野郎を倒して数日が経った頃、魔王が信じられねぇ責め苦を考え付きやがった。
豚野郎の毛皮を詰めた檻に俺を入れようって魂胆だ。
あの死様を思い出し、震えて眠れという事か。
そいつは、あまりにも残虐過ぎるぜ。
「(カブ太、どっちが良い?)」
ウゲェ、そして魔力を流してきやがる。
思わずツノが震え、檻を突き飛ばしちまった。
「(気に入らなかった?)」
「(ピコピコッ)ウグッ、すまねぇ。あんたには逆らわねぇから勘弁してくれ」
魔王は、俺が檻を突き飛ばすと、直ぐに魔力を流し込んで来やがった。二連撃は効くぜ。
しかし、気が逸れたのか、豚野郎の檻に入れられずには済んだ。
勘弁してくれ。いつまでこんな脅えた生活を続けリャ良いんだ。カカァ、俺は頑張ってるぞ。絶対、生きて戻るからな。
◇◇◇
豚野郎の魔石を喰らい、大幅に上がった魔力量に馴染んで来た頃、久しぶりに強烈な攻撃を魔王が仕掛けてきた。
「(カブ太、やっぱり遊びが要るんだよ。)」
「(ピコピコッ)グハッ!突然の大魔力!」
「(だろっ!大物釣ろう!大物!)」
「(ピコピコッピコピコッ!)ウゲェェェ!強烈過ぎる。それ以上はヤバい!魔石が砕ける!」
ひと通り、呪禁を唱え終わると、死刑台に乗せられ、海へきた。いつもの魚取りとは違うようだ。
もしかして魔王は海竜を狙ってるんじゃ無いのか?
マザー、豚野郎ときて、地龍にもちょっかいをかけてやがった。そして海竜か。
四強全てが獲物って訳か。
しかし、海竜は無理だろうな。奴は陸には上がってこねぇ。そのかわり、海中じゃ無敵だがな。
◇◇◇
最近、魔王の攻撃が激しくなってきやがった。
二連撃どころか、三連撃、下手したら四連撃もある。俺の魔力量が上がった事が、完全に把握されてるようだ。
強者は魔力感知が下手だとか出来ないってのが相場だが、魔王は特別らしい。
何でぇ。そんなの無敵じゃねぇか。
そう愚痴を溢していたら、すかさず三連撃をくれやがった。
「(カブ太、粘土がある場所わからないかな?)」
「(ピコピコッ、ピコ、ピコピコッ)オヴェッ!すまねぇ、あんたの事を悪く言うつもりはねぇ」
「(粘土探すのと、漆喰作ってみるのどっちが良い?粘土?)」
「(ピコピコッ)ハァッハァッ、魔石を守らねば」
「(漆喰?)」
「(ピコ)グエェ……」




