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042 文明開化

 明るくなり、繭を少し広げて辺りを伺う。

 周辺を飛ぶ蜂が見えるが、二、三匹しかいなさそうだ。


 警戒しながら繭を出ると、周りにこんもりと蜂の死骸が積み重なっている。


 カブ太が嬉々として、死骸を食べ始めた。が、二つに裁断しているだけにも見える。

 よく観察すると、切った頭側に口をつけ、すぐに次の蜂を裁断している。


 試しに一匹切ってみると、頭側に米粒よりも小さい魔石があった。

 カブ太はこれを食べているらしい。


 前から興味があったので、自分も食べてみる。


 蜘蛛の魔石の時のような、不思議な心地良さとか何もない。


 もう一つ魔石を取り出し、今度は噛んでみる。

 ガラスでも噛んだかのような感触で、非常に硬いが、力を込めると口の中で砕けた。

 感想はガラスが砕けて、口の中がジャリジャリとした。としか、言いようがない。


 蜘蛛の時みたいに、自然と能力の使い方がわかるようなこともなく、蜂の能力が手に入った感じはしない。


 操糸スキルがパワーアップして無いかと思い、操ってみるものの、いつもとの違いも感じられない。


 なんなんだ?


 じゃ、何であんなにカブ太はご執心なんだろう。


 美味しくもないし、強くなった気も別に無いなー。


 何だかよく分からないが、とりあえず、カブ太の大好物なんだから集めておこうかな。


 カブ太が一心不乱に食事する横で、魔石を取り出していった。


 数えていなかったが百個くらいは取り出しただろう。カブ太が満足そうに食事をやめたので、解体作業もやめて、自分のご飯を準備する。

 火を起こして魚を食べると、最後に蜂の死骸も燃やしておく事にした。


 ふと、焚火の中にやけに火力の強い枝を見つけた。

 さっき、薪が不足したので、荷物の中にあった枝を入れたが、多分、それだ。


 取り出してみると、枝は燃えているわけではなく、その周囲が燃え続けている。


 多分この枝は、ベタベタの接着剤みたいな植物を触った枝だ。


 荷物からベタベタが入った貝殻を出して、新しい枝に少し塗り、焚火で火をつけると、予想通り同じような燃え方をした。

 火がついた枝の根元を地面に突き刺すと、松明のように燃え続け、少し塗っただけなのに十五分程燃え続けた。


 ナッツも嬉しかったが、この燃焼剤もめちゃくちゃ嬉しい。夜の電気替わりとして非常に有用だ!


 今回の探索は一日だったけど、豊作だった。

 怪我もあったが、ナッツに燃焼剤を手に入れたとなれば十分にお釣りが来る。


 大満足で始まりの浜へ戻った。

 吐気は止んだものの、大事をとって休んでおきたいし、少し作りたいものも出来たので、構想も練りたい。

 

 早々にシェルターに戻ると横になり、あーじゃない、こーじゃないと頭の中で設計図を描きながら寝てしまった。


◇◇◇


 百二日目となった。

 相変わらず天気が良く暑い。

 しかし、日中の最高気温は低くなってきた気がする。この島にも冬があるのかもしれない。


 今日は、昨日思いついた新装備を作っていく。


 鎧だ。私の中ではクロスとも呼ばれる。まーあんな感じの鎧を作れれば、かなり有用なのではと思ったわけだ。


 まずは、硬質な糸を出してフレームを作っていく。

 初めに籠手の部分。


 イメージ通りには形にならない。


 脱着出来るように工夫して、どうにかこうにか、着け心地が及第点のフレームが出来た。

 まだこれでは終わらない。

 あのアニメで緑色の奴が付けていたように、スモールシールドも作っていく。


 最後に糸でグルグル巻きにして、一気に硬度を上げる。


「カブ太!出来た!カッコよくない?ガントレットって奴だ!」

「ピコピコッ」


 それから、鎧造りに一週間ほどハマってしまった。


◇◇◇


 苦心の末、一週間もかけて出来上がったのは、籠手、脛当て、胸当て、鉢金だ。失敗作がそこらじゅうに散らばっている。


 どうも納得いかない。

 出来上がったのはただの板が胸と背中側にあるだけだ。


 フル装備しても二の腕、太腿、首、腹、下半身が防御されていない。


 しかし此処らへんを覆ってしまうと、明らかに動きにくい上、あちこちの皮膚が鎧と擦れてしまった。


 素人仕事では上手くいかないもんだ。


 ついでに言うとシールドは外してしまった。

 日常生活に凄い邪魔。


 何はともあれ、防御力が上がったのは間違いない。


 次はいい加減布作らないとな。


◇◇◇


 百十日目だ。

 パンツが欲しいので、布造りを始める。

 と言っても何にもわからない。

 編み物が出来れば良かったのだが、そんなスキルは無い。


 結局、縦糸と横糸を交互に潜らせればいいのだろうと適当にやってみる。


 一辺が一メートル程の正方形フレームを流木で作り、その上下に操糸スキルで作った針を、多数打ち込んでいく。


 打ち込んだ針に糸を張り、縦糸にした。

 次に操糸スキルで横糸を通していく。


 上、下、上、下と通していくだけの単純作業で、眩暈がするような錯覚に襲われながら、続けていると幅五十センチくらいの布が一メートル分、出来上がった。


 あれ?意外に簡単かも。


 出来上がった布に腰紐をつければ、褌が出来上がった。


 早速身につければ、百十日ぶりに味わう何とも言えない安心感だ。


 着心地がゴワゴワするなんて、関係ない。

 今、俺は文明社会に戻ってきたのだ。


 思わず涙ぐんでしまった。


 パンツを失って初めて分かる事もある。

 パンツって大事なんだよ。


 あぁ、護られているって素晴らしい!


◇◇◇


 布作りが出来るようになってからは、それが生活の中心になり二週間程が過ぎた。


 空いている時間は殆ど布造りに費やし、シャツ、ズボン、ポンチョ、タオル、ベッドを作り上げた。


 特にポンチョは自信作で、普通の布の上に、高度を上げて作った小さな布を縫い付け、スケイルメイルの要領で作り上げた。

 二週間の殆どは、ポンチョ造りだった事は言うまでもない。


 そんな、百二十四日目は強風が吹き荒れ寒い。今までで一番の寒さだ。

 風は南風で、冷気を運んできている。


 始まりの浜は風が強すぎるので、風裏にあたる左耳浜へ移動することにした。


 崖上へ登ろうとエレベーターの準備をするが、糸が風に流され、時間がかかる。

 強風に煽られながらようやく崖上へ上がり、左耳浜を目指す。


 歩き始めると、カブ太が肩の上で忙しなく移動して、首を小突いてくる。

 これは危ない時の仕草だが、いくら警戒しても周りには何も居ない。


「カブ太?どうした?危ないの?」

「ピコピコッピコッピコピコ」


「シェルターに戻った方が良いの?」

「ピコ、ピコピコッ、ピコピコ」


 カブ太が此処まで焦ってるのは初めてみる。


 しかし、浜は崖際まで波が押し寄せてきており、正直、此処も安全とは思えない。第一、寒い。


 迷いはするが、左耳浜へ行く事にした。


 カブ太が落ち着かず、ゴソゴソと肩の上を移動し続けている。


 いつもより用心しながら時間をかけ移動し、左目崖を登り、海を見ようと振り返った時、カブ太が此処まで焦っている原因がわかった。


「カブ太、あれドラゴンだ……」

「ピコピコッ」

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