041 新たな食料探し
数日、細々した物を作って過ごしていたら、ついに百日目を迎えた。
昨日の激しい夕立で雨水枡の水位も復活したので、水の心配もない。
今日まで百日頑張って、水と家、食器に鍋も手に入れた。
不満といえばキリが無いが、差し当たって食料が魚と貝に海藻、あと美味しくない燻肉なので、このあたりを改善したい。
よし、久しぶりに探索に行こうかな。
新しい食料探しだ。
直ぐに荷物を詰めて出発!
まずは左眉広場を経由して高台を目指す。
到着後、久しぶりに島を見渡してみる。
猫でいえば、顔の左半分は概ね探索済みだ。
右半分は鬱蒼としたジャングルが相変わらず広がっている。
広場をチェックし、大型生物がいないことも確認しておく。
とりあえず問題なさそうだ。
全体的に見渡し、探検する場所を決める。カブ太を捕まえたジャングルが、何かあっても直ぐに帰って来れるので良さそうだ。
早速、高台を降りジャングルを目指す。
最近はショートカットしていたので、ジャングルを通っていなかった。草が繁茂して以前通っていた場所が見つからない。
仕方なく糸で草を縛り、入口を作っていく。今回は細い木は切り倒してしまう。
高台側はこんなに草木が茂っていなかった気もするが、言ってもしょうがない。
黙々と斧を振るい、道を作っていく。
汗を十分掻いたころ、ようやくジャングルの中へ入れたので、結界糸を出し用心しながら進んでいく。
カブ太がピコピコと忙しなく動いている。
久しぶりのジャングルにはしゃいでいるのを見ると心が和む。
足元に小さな実がいくつも落ちている。以前は通り抜けるのが目的だったので、気が付かなかった。
見た目は剥いたヤシの実みたいで、拳より二回り程小さい。
とりあえず、斧で割ってみる。
中からはカシューナッツを太らせたような白い実が三粒程出てきた。
恐る恐る齧ってみる。
あぁナッツだ!しかも甘い!
砂糖の甘さとは違うが、久しぶりの甘みを感じる食べ物だ!
もっと食べたいが、様子を見ることにして、周辺の実を残らず拾ってまわる。
幸先がいい。こんないい食料が手に入った。
三十分程経ち、特に異変は無いので、一粒食べてしまう。
あぁ至福だ。飲み込みたくない。
念入りに噛み潰し、甘みを堪能したところで飲み込んだ。
もっと食べたいが我慢し、毒味の時間が過ぎるのを待ちながら、周辺の探索を続ける。
少し歩くと綺麗な黄緑色で覆われた場所を見つけた。近づけば、五十センチほどのゼンマイに似た直物が群生している。
渦巻き状の部分に、幾つもの透明な水玉が付いており、とても綺麗だ。
枝の先で水玉を触ると、水では無く粘性の高い液体だった。接着剤みたいにベタベタとしている。
勇気を出してちょびっと舌先に当てると、強烈に苦かった。
唾を吐き出し水で濯ぐが、舌先が痺れている。
ベタベタしていて接着剤替わりに使えるかも知れないので、貝殻でこそぎ取るように集めておく。
口直しに殻を割りナッツを食べる。
最高に美味い!
殻内に残った二個に塩を振り掛け食べてみると、止まらなくなってしまった。
最初に食べてから一時間は経っているので、大丈夫とは思うが、こんなに美味しいなら毒でも食べたい。
そのまま五個程殻を割り、塩ナッツに舌鼓を打っていると、ブンと羽音が聞こえ、カブ太がピコピコと耳辺りを小突く。
慌てて結界糸を広げ警戒を強めると、蜂が飛んできて、その辺に転がしていたナッツの殻を次々と調べている。
ナッツから匂いでもするのだろうか?
見た目がずんぐりむっくりで、ハナバチに似てとても可愛い。
ホッコリした気分で眺めていると「ブンッ」という一際強い羽音と共に、カブ太が飛び出す。
次の瞬間には、カブ太のツノで真っ二つにされた蜂が転がっていた。
「何?カブ太、この蜂って危ないの?」
「ピコピコッ」
珍しくカブ太が飛んで糸を引っ張る。
「何?逃げるの?」
カブ太は少しでも遠くへ行きたいのか、ブンブンと糸に止められながらも、飛ぶのを止めない。
「わかった。わかったから、とりあえずジャングルから出よう。」
カブ太に急かされるように元来た道を引き返していると、何重にも重なった分厚い羽音が遠くから聞こえてくる。
直感的にわかった。
非常にマズイ。
慌てて走り始める。
もう少しでジャングルを抜けようかというところで、ついに追いつかれてしまった。
羽音に囲まれる。
参った。蜂の群れだ。
見た目コロコロとして可愛いが、羽音に混じりガチガチとスズメバチの警戒音のような音も聞こえる。
これって牙を打ち鳴らす音だよな。コイツら、この見た目で肉食かよ。カブ太が警戒するはずだ。
結界糸の密度を上げ、進行方向の蜂を押し退けるように退路を作る。
無理矢理、走り抜けジャングルを脱出したが、状況は変わらず取り囲まれている。
左肩付近を一箇所刺されたようで、鋭い痛みの後、ジンジンと強く痛み出した。
「カブ太、万事休すかな……でも、やるだけやってみましょうかね。」
「ピコピコッ」
近くの木の根本に腰を下ろすと、体から少し離した位置にざっくりと硬い糸で骨組みを作り、全身を巻くように糸を出し、体の周りに繭を作っていく。
蜂も入ってこれない程、グルグル巻きにしたところで、一息つけた。
周りでは羽音がうるさく、繭の外側に群がっているのが透けて見える。
このままでは、此処から動く事が出来ないので、こちらも反撃させてもらおう。
糸先を針状に変え、繭に張り付く蜂を突き刺していく。
死んだ蜂がポトポトと落ちていくが、キリがない。
カブ太も繭の内側から、突進している。
蜂は入ってこれないものの、黒い針先が何本も繭を貫通して来て、アイアンメイデンの内側を想像してしまう。
「カブ太、参ったね。とりあえず、刺される事は無いだろうけど、動けないよ。」
「ブンッブンッ」
カブ太軍曹は話を聞く気は無いらしい。
突進を繰り返す殺戮マシーンとなってしまった。
こうなれば長期戦を覚悟し、フレームを広げグルグルとさらに糸を出し続け、だんだん繭を押し広げていく。
繭の内側が一畳ほどの空間になったところで、ゴロリと横になった。
左肩が疼き、吐き気がしてきた。
「カブ太、気持ち悪い。ちょっと休むね」
「ブンッブンッ」
仰向けになり、休憩しながらも眼前に透けて見える蜂を突き刺していく。
しかし、船酔いみたいに吐気がどんどん酷くなり、終いには気を失ってしまったようだ。
気付くと夜のようで、何も見えない。
左肩は痛いが、吐気は治まってくれた。
時折、羽音が聞こえるものの、繭の外側に気配は感じない。
「カブ太、何処?」
「コトコトッ」
荷物につけているカブ太の巣から、振動が伝わってきた。カブ太軍曹もお休みになられていたようだ。
水を手探りで出して喉を潤す。
出来る事は無さそうなので、引き続き寝てしまった。




