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039 再戦

 八十四日目の朝になったが、まだ体は痒い。

 しかし、今日はルート整備に向かわねば。


 先日張った糸に沿って、枝を切り払い下草を纏めていく。細い木は切り倒し、出来るだけ道として幅を確保する。


 作業を進めていくと、またカブ太が「ブンッ!」と力強く羽ばたいた。肩パッドが無い首筋に爪でしがみつくので痛い。

 只事では無いと、グッと集中し辺りを伺うと、糸でグルグル巻きにしておいた小蜘蛛の所に親蜘蛛がいた。しかし、前回見た親蜘蛛よりは一回り小さい。


 気づかれずにやり過ごせるか期待したが、親蜘蛛は瞬間移動のような動きで、ピョンッとこちらへ振り向き、白いヴェールを手にした。


 結界糸を一回り広げ身体に纏わせ、さらに先端を釣針へと変え、フヨフヨと漂わせる。


 前回は良いようにやられてしまったが、今は同じ能力持ちだ。しかも、この操糸スキルも随分と使い慣れてきた。


 負ける気はしない。


 親蜘蛛はその場で、踊るように反復横跳びを始めた。


 空気がピンと張り詰めていく。


 アウトボクサーがリズムを取るように、ステップを踏んでいた親蜘蛛が突然、消える。

 凝視していた筈なのに姿を見失い一瞬焦るが、結界糸に集中する。


 首筋に反応があった。


 小蜘蛛と同じように糸を巻き付けると、ドサッと親蜘蛛が地に落ちる。


「俺の勝ちだよ。悪いね。」


 針を突き刺し、体の中をグニグニと進ませると絡み合った糸の中で、蜘蛛が力を失ったのが感じられた。


「ブンッ」

 カブ太がやっぱり死骸に飛び込む。


 二本のツノを器用に動かし、蜘蛛に頭を突っ込むと、バリバリと音がして、程なくカブ太が出てきた。


「ん?カブ太、なんかデカくなってない?」

「ピコピコッ」


 心なしかカブ太がデカくなった気がするが、満足そうにピコピコとツノを動かして可愛いので、あまり深く考えるのはやめた。

 猪の時もデカくなってたのかもしれないな。


 まぁ何はともあれ自分の成長を感じれた。

 操糸スキルはこちらから攻撃するのは難しいが、待ちには強いな。俺向きだ。

 格闘ゲームでも使用キャラは夏塩キックとか意味の解らないネーミングの蹴りが得意なアメリカ人だった。


 親蜘蛛との二戦目はかなり自信がついた。

 初戦で死にそうになったので、内心、かなりビビってたが、俺は強くなってる。

 よし、慢心はいかんが、蜘蛛はもう怖くない。


 蜘蛛を埋葬すると、意気揚々と作業を進め、涙沢までとりあえず、抜け出る事が出来た。

 さらに引き返し、道幅を広げていく。


 意外に早く、おおよその作業が完了した。

 この程度であれば、焼物作りの前にやっておきたかった。まぁ言ってもしょうがない。

 これからは、だいぶ楽に左耳浜へ行けるようになったから良いじゃないか。


 始まりの浜へ降りると、水汲みと釣りを済ませ、海で入念に体と装備を洗う。


 焚火で暖まりながら、夕食をとる。


「カブ太、魔石って美味しいの?」

「ピコピコッ、ピコピコ、ピーコ、ピコピコ、ピコ!」

 今までで一番の長文で返事をされてしまった。


 まー何言ってんのかわかんないけど、当たり前だろ的な事なのかな?

 カブ太が食べるの見てると、俺も二個目を食べてみたいんだけどな。パワーアップとかあるかも知れないし。

 でも、食べさせてくれそうにないよな。カブ太。

 毎回、すぐ突っ込んでいくからなぁ。


 まぁカブ太が喜んでるならあげても良いかな。


◇◇◇


 今日からは小屋作りに向け、動き出すことにした。

 左耳浜の住処が欲しい。


 まずは出発に向け一日かけて、水瓶と貝殻水筒に水を汲む。

 全て背負子に積んで背負ってみると、一歩二歩は良いが、とても三時間歩ける自信はない。

 貝殻水筒は全て下ろし、始まりの浜で保存しておく。


 それにしても、水を汲んでる間、暇なのが辛い。

 細々した物を作ったり、装備のメインテナンスくらいしか作業ができない。


◇◇◇


 八十六日目。

 左耳浜まで水を背負い移動を開始する。


 いつもより多めに休憩を入れながら、何とか左耳浜へ着いたが、これは重労働だ。

 近道を通ったのに、いつもより時間がかかった気がする。

 近いうちに荷物の軽量化か、近場での水探しを考えなければ。


 水運搬の重労働に嫌気がさしたので、以前作った雨水枡の改良から始める事にした。


 砂浜に落ちている珊瑚を集め、焚火で燃やす。

 高温で焼いて砕けば生石灰になる筈なんだが、温度がよくわからないので、とにかく薪を多めに入れて長時間焼くことにした。


 焼き上がりまで、雨水枡に屋根を作っていく。

 雨水枡周りの枝に木を渡しフレームを作ると、椰子の葉を固定していく。


 焼き上がった珊瑚を石で砕き雨水枡に満遍なく刷り込んでいく。

 粒度が荒く、あまり意味が無さそうだったので、さらにすり潰すようにして、粉状にした。

 何処から漏れているのかわからないが、微細なヒビが原因と思うので、これで何とか止まってほしい。


 最後に水を入れ、さらに刷り込んでいった。

 生石灰なら発熱するはずなのだが、ほのかに暖かいくらいだ。うまく石灰化出来なかったのか?


 何もかも朧げな記憶頼りだ。うまくいくことを祈る。


◇◇◇


 八十七日目だ。

 左耳浜にいれる時間は限られている。

 作業を急がねば。


 マイホーム作りだ!


 浜から少しだけ森に入った場所に小屋を立てることにした。ここなら風も防げそうだ。


 嵐になった時を考え、半地下構造の小屋を作ることにした。小屋と言ってもティピー形を考えているので、テントと呼んだ方が正確かもしれないな。


 まずは土台作り。


 下地はほぼ砂なので、石器鍬でも楽に掘れるのは良いが、砂の移動が捗らない。


 手箕が欲しいが編む技術がない。仕方ないので、靴に使った樹皮を縫い合わせチリトリを作っていく。


 作ってる途中、手のひらがやけにヒリヒリすると思ったら、皮がズルッと剥けてしまった。

 よく見れば、手のひらが真っ赤だった。


 思い返せば、昨日、生石灰を素手で扱ってしまった。あれが原因かも知れない。

 工事現場のバイトで生コンを素手で扱い、同じようになったのを思い出した。

 石灰は強アルカリ性だったのを忘れていた。


 まぁ大丈夫だろ。


 時間とともに痛みが増すが、我慢してチリトリを完成させた。


 チリトリへ鍬で砂を入れ、少し離れた位置へ捨てる。


 ただそれだけを、延々と繰り返して、一日が終わる。


「カブ太、疲れたろう。僕も疲れたんだ。なんだかとても眠いんだ。カブ太」

 何処かで聞いた、そんなセリフを呟きながら寝てしまった。

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