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037 水瓶作り

 四十八日目の朝だ。

 天気も良く、気持ちがいい。


 早速焼物作りの準備をする。

 と言っても、朝ご飯のついでに焚火に土のテストピースを放り込むだけだ。


 テストピースが冷めるのを待つ間、焼物をおく棚を作る。

 土も見つかっていないのに、気が早いと思われようが、そんな事を言う人は此処にはいない。


 作りたい物を、作りたい時に思うがままに作るのだ。とにかく、集中する事が大事だ。

 余計な事は考えない。


 流木を組み合わせ、適当にフレームを作ると、細い枝をフレームに渡して固定する。

 立派な二段の棚が出来た。

 そして何よりも素晴らしいのは、シェルターの入口から入れられるサイズという事だ。


「カブ太、私は同じ間違いは繰り返さない人間なのだよ。」

「ピコピコッ」


 偉そうにそんな事を言ってると、テストピースも焼けたようなので、焚火から取り出す。


 五個放り込んだはずだが、三個しか見つからなかった。多分、崩れてしまったのだろう。


 無事だった三個の内、二個は割れており少し押すと割れてしまった。一個のみがどうにか焼物になるかもしれない。


 使えそうなテストピースの表面に「三」と書いてある。左耳岬の獣道から取ってきた土だ。


 握り拳程の土が残っているので、良く捏ねて、小石等を丁寧に取り除いていく。

 小学生の時に作った焼物を思い出しながら、粘土を紐状にして、グルグルと積み重ね、表面を均すとぐい呑みサイズのコップが出来た。


 乾燥のため、日陰に置いておく。


 明日は土の採取だな。


◇◇◇


 四十九日目は朝から土の採取へ向かう。


 左耳岬まで往復すれば一日が潰れてしまうので、時間も体力も勿体無い。

 焼物は左耳浜で行うことにして、水を出来る限り背負子に詰め込み出発する。


 獣道で土を掘り起こし、出来るだけ粘土分が多そうな所を集めていく。

 粘土も背負子に詰め、左耳浜へ向かう。


 左耳浜でテーブル替わりの大きな平べったい石を探すと、その場所の近くに薪を集めテントを吊るし、土から小石を取り除いていく。

 地道な作業を続けていると、夜になってしまった。


 焚火の灯りに照らされながら、作業を続け眠くなったところで就寝。


 真夜中に突然、スコールのような大雨に見舞われた。一時間程で止んだが、ずぶ濡れになってしまった。


 しかし、水が補給できたのは非常にありがたい。

 予定よりも滞在期間を延ばせる。


◇◇◇


 翌日から、粘土を捏ねて水瓶や皿を作っていたが思わぬ大苦戦を強いられることになった。

 乾燥させると割れてしまう。

 初日に作ったぐい呑みも形は保っているものの、ヒビが入ってしまった。

 大きな水瓶や薄い皿はもっと悲惨で、バラバラになってしまう物も少なくない。

 さらに三日間をかけて、土から小石やゴミを取り、粘土を捏ねる作業を繰り返すが、どうしても乾燥がうまく行かない。


 諦めずに土を取ってきては、同じ事を繰り返すが、水瓶は形にならなかった。


 大きなサイズは諦めてビールジョッキサイズのコップを、縄文土器をイメージして、少し厚めに三個作ってみた。

 日陰に干しておく。


 それにしても、ジョッキを見てたら冷たいビールが飲みたくなる。

 アルコールに弱いので酒はほとんど飲まないが、暑い日のビール別だ。

 タバコは我慢するとしても、冷たいビールは何とかして、もう一度飲みたい。

 この島では手に入らないので、冷たいビールは島脱出の大きなモチベーションになる。まぁこの世界に存在するかどうかはわからないのだが、此処にいては一生飲めない。

 この島を出て、文明に辿り着くんだ!

 冷たいビールを飲んでやる!


 妄想と願望が全開になったところで、現実を振り返れば、手持ちの水が尽きたので一旦、始まりの浜へ戻るしか無くなってしまった。


 なかなかうまく行かないもんだ。

 素人仕事なんだから上手くいかないのは当たり前。焦らず、続けてみよう。


◇◇◇


 五十四日目は始まりの浜で出来る限り水を補給し、左耳浜まで戻ってきた。

 途中、靴が限界に来たのか壊れてしまい、応急処置はしたものの、形を保てなくなってしまった。


 焼物作りを進めたいが、靴が無いと何も出来ないので、早速修理する。


 ソール部分の材料は再利用し、今回は編んだ糸で鼻輪をつけて草履にしてみた。

 試してみると、靴よりもだいぶ具合がいい。

 踏ん張りが効いて滑りにくく、歩くスピードがかなり向上した。

 作るのも簡単だし、最初から草履にしておけば良かった。


 雑用が終わったところで、前回作ったビールジョッキを見にいくと、一個は割れていたが、二個は形を保っており、ひび割れも無い。


 早速、焚火に入れて焼いてみる。

 何時間くらい焼けば良いのかさっぱりわからないが、つついてみて固くなってから、一時間程余分に焼いてみた。


 直ぐには出さず焚火に入れたまま放置し、別の粘土作りを続け、お楽しみは明日へと持ち越しことにした。


◇◇◇


 朝になり焚火からビールジョッキを取り出す。


 一つは割れていたが、もう一個は見た目、問題なさそうだ。

 早速、水を入れてみると、底の部分から色が変わり、ポタリポタリと雫が垂れ出した。


 漏れてはいるが、直ぐに飲んで仕舞えば問題ない。

 脳内でビールに変換し、一気に煽る。


「プハーッ!」

 一応、口に出しては見たが、ぬるい水だ。

 まぁ気分は味わった。


 漏れているので貯水には使えないが、何とか一歩前進した。縄文人に作れたんだから、現代知識を持つ自分が作れないはずはない。

 そう信じて、試行錯誤の日々が始まった。


◇◇◇


 六十九日目になった。

 今日も飽きずに左耳浜へ戻ってきた。

 何としても水瓶作りを成功させたい。


 三泊四日で左耳浜への出張焼物作りが続いている。

 移動、制作、制作、移動で四日、戻ってきて水汲みの一日を加えると、五日でワンセットだ。

 既に三セットが経過し、四セット目になった。


 皿と小さなコップはどうにか形になったものの、大きい水瓶はどうしても水漏れしてしまって、上手くいかない。


 厚み大きさ、焼く時間、冷ます時間を変えてみるが上手くいかないため、大型の水瓶を諦め小さいサイズの物を数作る事にした。

 それでも、乾燥時に割れ、焼いては割れ、出来上がっても水漏れするので、上手くいくのは五個に一個程度だろうか。


 口は出来る限り細く仕上げ、蓋ができるようにしておく。


 黙々と、何も考えず、水瓶を作っていく。

 朝夕の釣りが唯一の癒し時間だ。


◇◇◇


 毎日、同じ作業の繰り返しだ。

 焼物を始めて何日が経ったのだろう。

 今日がキリよく七十日目だから、だいたい二十日間くらいは続けているのか。

 島暮らしの上で、水は生命線となる。

 此処は我慢して、水瓶作りを頑張るしかないな。


◇◇◇


 八十日目となった。

 ようやく、ようやく水瓶作りが一段落だ。

 合計で二十個の水瓶を作った。


 だいたい一つに一リットル程度は入ると思うので、合計で二十リットルを貯水できる。

 まだ貯水量としては心もとないが、これに貝殻水筒を入れれば、トータルでは三十リットル程が貯水できるだろう。

 暇を見つけて作り足していけばいい。


 それと雨水用の溜桝も作ってみた。

 穴を掘って粘土を敷き詰め、中で焚火を起こし、割れたところに粘土をまた詰めて焼いてを繰り返した。

 海水を入れてみると一晩で水位が五センチほど下がるので、何処かから漏れてるのだろうが、降った雨を水瓶に移す時間くらいは問題なさそうだ。

 今度、漆喰を作って塗ってみようと思う。


 雨水枡へ繋がるように周辺の木に糸を張り巡らせると、地面から水平に広がる蜘蛛の巣みたいになってしまった。

 見た目は変だが、これで雨が降った時に、木が受けた水も効率よく集める事ができると思う。


 この一ヶ月の間、長かった。


 しかし貯水できるようになったので、今後は遠征期間も長くできる。


 問題は水瓶は個数が増えると重く嵩張るので、一度に運べる量に限界がある。

 今後の課題としよう。

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