035 鮫釣り
四十二日目となった。
延々と石斧作りを続ける。ただナイフ程鋭利に砥がなくとも良いし、形もある程度は大雑把で良い。
昼前には刃が完成した。
穴を開けた柄に石を合わせ、隙間なく嵌るように柄を削っていく。
ドリルを横向きに固定し、操糸スキルで回転させ、ルーターもどきを作った事で、作業が捗る。
ん?大木を切り出す時も、ドリルで穴を開け、そこに斧を叩き込めば、かなり楽に切れるんじゃないか?
これは試してみる価値がありそうだ。
だんだん、石斧よりも木工道具作りに夢中になってきたが、ドリルとナイフを駆使し、ようやくピッタリの穴に調整すると、待望の石斧が完成した。
早速シェルター横の雑木林にて試し切りをする。
十センチ程の木を選び、軽く叩きつける。
特に問題はない。
だんだんと力を入れ、最後は全力で打ち込んでみたが、石斧は大丈夫だ。
耐久性は分からないが、簡単に折れる事は無さそうだ。
そのまま切り倒そうと、何度も斧を振るう。
石斧が悪いのか、自分のスキル不足なのかは分からないが、たかだか十センチの木を切るのが、こんなにキツイとは思わなかった。
何度目かわからない、渾身のスイングで、ようやく一本を切り倒す。
既に息が切れている。
似たような木を選び、今度はドリルで穴を開けていく。電動っぽいと言っても、糸を出して収納してを繰り返すので、作業には時間がかかる。
あんまり強く押し付けると、うまく回ら無いため割と優しく押さえつける必要がある。
五ヶ所程、連続して穴を開けると、一列に並んだ穴目掛け、斧を叩き込む。
十回程叩き込めば、あっさりと切り倒すことが出来た。
時間はかかるが、ドリルで穴を開けた方が、労力的にはだいぶ楽だった。
カヌー用の大木を見つけたら、この方法で少しずつ切れば何とかなると信じたい。
切った木は枝を落とし、風通しの良い日陰へ転がしておいた。
長さが五メートル程あるので、何かに使う時が来るだろう。
ようやく石斧が完成したので、伐採が可能となった。
これで左耳浜で小屋を作ることも出来る。
水問題が片付けば引っ越すんだけどなぁ。
少し早いが、今日は作業を止め、小物用ロッドで数匹釣りを楽しむと、夕食をゆっくり取った。
明日も頑張ろう。
「おやすみ、カブ太。」
◇◇◇
四十三日目
朝から細軸ドリルを製作する。
作り方は一緒だし、ビット部分の刃も小さいので、すぐに完成した。
十センチ程の真っ直ぐな枝を切り出すと、垂直に糸で固定する。
慎重に細軸ドリルで中央に穴を開けていく。
なかなか難しく、数度の失敗を経て、ようやく中央に穴の空いた枝が完成する。
そう、ストローだ。
貝殻から水を飲む時に貴重な水を溢してしまう事が多々あった。いやーこれで水飲むのがかなり便利になる。
貝殻にストローを突っ込み、吸い上げるとちゃんと水を飲む事ができた。
またこれで文明へ近づいただろう。
今日はもう一つ、道具を作る。
スコップか鍬が欲しい。
左耳浜で小屋を作ろうとすると、どうしてもどちらかは作っておきたい。
石斧と同じ方法で、幅広の石をつければ出来るだろうか?
鍬の場合、どうしてもテコの原理が働くので、同じ方法では強度的に不安がある。
結局、太めの枝が出ている流木を切り出し、枝部分に幅広の石を取り付ける事にした。
ただ、グリップ部分が幹なので、太すぎて握りにくい。ナイフで削ってみるが、僅かに削れるだけで、いつ終わるか気の遠くなる作業だ。
流木でフレームを作り馬を二個作る。
柄を乗せると回転できる遊びを持たせて固定し、操糸スキルで柄を回転させながらナイフをあてがうと、手で削るよりは早くなった。
鉄製の大工道具が欲しい。
石器では時間がかかり過ぎる。
結局、夕方までかかっても完成しなかった。
明日も鍬作りだな。
◇◇◇
四十四日目。
こうも手こずるとは思わなかったが、午前中で柄を仕上げ、午後から刃部分を整形し、何とか鍬作りが終わった。
何をするにも日単位で時間が過ぎてゆく。
地球の電動工具が切実に欲しい。
電動でなくても良いからノコギリが欲しい。
無い物ねだりが続くが、今日は鍬が完成した。
小さな一歩を続けていくしか無いだろう。
◇◇◇
四十五日目
ここにきて、一月半が経ってしまった。
風呂なし洞窟暮らしで、水の残量に怯えながら、魚を獲って暮らす日々。何とか生きていけてるから、良しとするのか。
もう少し、文明的な暮らしがしたい。
という事で、今日は休暇。
「カブ太、やっぱり遊びが要るんだよ。」
「ピコピコッ」
「だろっ!大物釣ろう!大物!」
「ピコピコッピコピコッ!」
カブ太もやる気満々だ。
磯に出かけて、大物釣りの準備を始める。
取込みを想定し、浜へ移動できる位置でアンカーを作る。ハーネスをアンカーへと繋ぎ、体を固定。
準備万端。
エレベーター仕掛けで腐肉を海中に送り込む。
暇な時間は、小物釣りして遊ぶ。
午前中粘ったが何の反応も無い。
腐肉には食いつく魚が中々居ないようだ。
小物釣りでストックしておいた生き餌に変え再トライ。ついでに、ぶつ切りにした魚を思い切って遠投し、周辺にばら撒く。
三十分程で、すぐに反応がある。というか、見える。立派な背鰭だ。
サメ寄ってくるだろうなーと思いながら撒き餌したが、予想通りだ。
プルプルと大物仕掛けが震えて、グイーンと竿先が海中に向け弧を描く。
全力でバチコーンッと合わせを入れた瞬間、フッと手応えが無くなった。
収納すると、糸が切られている。
ムカつくので、ハリス部分は硬度を上げた糸にして、再度餌投入。
近くをウロウロしているらしく、すぐに当たりはあるが、全く同じ結果に終わった。
硬度を上げた糸があっさり切られてしまう。
頭にきて、針金みたいな糸を8本撚り合わせ、ワイヤーハリスを作り、再度投入。
警戒心が薄いのか、同じ個体では無いのか、あっさり食いつく。
合わせを入れた瞬間、その重さに絶望感を感じた。
ダメだ。このタックルじゃ、全く刃が立たない。
予想通り、ダンプカーの如くこちらの抵抗を一才無視して、走り始める。
一瞬、糸を止めてみるが、大物用ロッドが根元から軋み、完全に力負けする。
ただただ、糸を出すしか無い時間が続き、百メートル程、糸を送ったのだろうか、糸がようやく止まった。
恐らく、魚は付いていないはず。
全力で糸を引っ張ると、擦れるような感触を感じつつも収納できたので、どんどん回収していく。
上がってきたのは、スッパリと刃物で切られたような撚り糸だった。
ちょっと、考えられない。よっぽど歯が鋭いのだろう。やっぱり鮫なんだろうな。
大物には完敗だが、まぁ楽しかった。
たまにはこんな休日を過ごすのも良い。
ゆっくりと時間を使い夕食を取った。
夕食は先日作った塩を使って、刺身に塩焼きとなった。刺身の甘さが塩で引き立つ。
本当に美味しい。
ただ残念なのは、結構な時間塩作りをしたのに、貝殻を割ってみると、僅かな塩がこびりついている程度だった。
もうちょっと、何か方法があるはず。どうにかして大量に作りたいところだ。
やりたい事、やらなければいけない事だらけだ。
明日からは心機一転、頑張ろう。
「おやすみ、カブ太」




