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027 大物狙い

 二十八日目となった。

 これから数日は第三回探検、主に左耳岬の調査に向けた準備を進めて行く。

 と言っても、水を多めに確保とそれを持っていける背負子作り、保存食作り、ナイフの完成というところだろうか。


 保存食を作るため、いつもより多めに数釣りをしていると、大型の魚影が沖を回遊している。

 サメでは無い。タイ系かアジ系の体高が高く薄い魚だと思う。大きさは一メートルくらいだろうか。


 狙ってみることにした。


 操糸グルグルを使い、石をつけた糸を一本遠投する。それとは別に、針を付けた二メートルくらいの糸を準備して、リングを介して遠投した糸に繋ぎエレベーター仕掛けを作る。


 餌になる魚を釣っていく。数匹目で二十センチくらいの餌に良さそうなサイズが釣れたので背掛けして、沖へ送り込む。


 まー掛かればラッキーくらいの気持ちで、大物仕掛けは放っておき、保存食にする魚を狙って釣りを再開。


 大物仕掛けの方からは、時折餌が逃げようとする振動が伝わってくるので、近くに大物はいるようだ。


 そろそろ釣りは終わろうかという頃、一際、暴れるような振動の後に糸が横へ走って行く。糸を収納して行くと、グーーッと重みが伝わって来た。  

 ちょっと焦るが、糸に少し余裕を持たせ送り込む。数度、重くなった後、グググーッと強いアタリが伝わる。

 思い切って体ごと後退りながら、一気に合わせる。

 ガツンと魚が針に乗った感触が伝わってきた瞬間魚が走り出す。

 体が持っていかれ、不安定な磯から引きずり込まれそうになる。慌てて糸を出し、体制を整えるが、魚はリーフの先に向かって走っている。

 止めたいが、止めきれない。止めると海に引き摺り込まれしまいそうだ。

 しばし、糸を出し続けると急に糸が動かなくなってしまった。グイグイと強く引っ張るが生命感は伝わってこない。

 途中のリーフに糸を巻かれてしまったようだ。


 魚は諦め、浜まで移動して流木に糸を巻き付けると、全力でバシバシと引っ張る。

 外れないので、さらに浜を歩き、引っかかっているであろう場所から角度を変え何度か試した所で、ようやく軽くなって糸が戻ってきた。

 先端に結んでいた石が抜け、リングも抜けてしまったようだ。


「いやーデカかった。多分、二十キロは超えてるサイズだよ」

「ピコピコッ」


「リールが無いからさ、ドラグみたいに上手く糸が出せなかったんだよね。ロッドも無いし、釣り上げるのは基から無理があったなぁ〜」

「ピコピコッ」


 カブ太も装備が悪すぎた事が原因だとわかっているようだ。そう、決して下手だったからじゃ無いのだ。


 十二フィートくらいのロッド作れば、もう少し上手くやりとり出来るな。ガイドは作れそうだから、作ってみるか。いや、そもそも、もっと自在に糸を出したり収納したり、その出し入れのスピードも調整できるようにする方が先じゃ無いか。もう面倒なので無理矢理、短期勝負で口切れする前に上げるか……



 違う。違う。あんなデカい魚釣っても保存できないので腐らせるしか無いのに、ちょっと狩猟本能に火がついてしまった。

 今は、やる事が多すぎる。

 生活に余裕が出来たら、いつかリベンジしよう。


 それはそれとして、操糸スキルの技術を上げるのは無駄じゃ無いな。鍛錬するとか言って、最初の数日しかやってない。

 もっと自由自在に操れるように日々、使っていこう。


 釣った魚の処理等、糸で出来ることは、全部操糸スキルでやって行く。いつか、この訓練が生き死にの場面で明暗を分けるかもしれんからね。

 そう思い、糸で作業を続けていくが、手でやった方が断然早い。

 この感覚は何処かで味わった事がある。


 思い出した。左手でご飯食べようと練習した時と同じだな。結局、三日坊主で左手訓練はやめてしまったが、今回は頑張ろう。


 昔からの悪い癖で興味のある事に、あっちフラフラ、こっちフラフラする幼さは異世界に来て、高性能ボディになっても変わらないらしい。解せぬ。


 朝からいらん事やってたせいで、今日の作業が進んでいない。手早く火を起こすと、保存食作りをする傍ら、ナイフを作っていく。


 コツコツ、コツコツ延々とやって、たまに炙ってる魚の向きを変える。

 そんでまたコツコツ、コツコツ。


 二時間程頑張ったが飽きた。


 朝の釣りが楽しすぎた。


「カブ太、森に行きたくない?」

「ピコピコッ」


「だよね。ちょっと木を探すだけだから。ほら、背負子のフレームに良さそうな木とか、(あとロッドとかね)」

「ピコピコッ」


 カブ太は出来るやつだ。決してイエスマンではない。そのカブ太も森に行きたがっている。

 これは相棒として付き合ってやらねば。


「よし、サッと行って帰ってこよう。」

「ピコピコッピコピコッ」


 早速、崖エレベーターをセットして、崖上に上がる。木を切る為の分厚い貝殻も持ってきた。

 崖沿いにジャングルの縁を移動して、何度か木にぶら下がったり、曲げたりしながら、適度な弾力の木を探す。一時間程、探していると、少し太いが適度にしなる木を見つけた。

 貝殻の鋭利な部分を何度も叩きつけ、傷を出来るだけ深くつけると、操糸スキルで高い位置に糸を結び、体重をかけて折る。


 やった!これにガイドを付けて、ベイトロッドのように構えて親指から糸を出せば完璧だ。

 日が暮れそうなので、慌てて浜の上まで戻り、崖を懸垂下降する。だんだん、慣れてきて、あんまり怖いと思わなくなってきた。


 浜に着くと、時間もないので保存食用に作っていた魚を食べる。

 今日食べてしまった分は、明日補填しよう。

 カブ太は朝取った魚の内臓とかエラを食べてたけど、腐って無かったのかな。


「明日は新鮮な魚獲ってやるからね」

「ピコピコッ」


 カブ太良い奴だ。多分、気にしてないって言ってるんだろう。


 あっ背負子のフレームにする木材、取り忘れた。

 まぁその辺の流木でいっか。


 少しまったりして、今日も眠りにつく。


「カブ太、おやすみ」

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