018 準備
十九日目か。
シェルターの柱に忘れないように一日一巻きとして、糸を十九個結んだ。
昨日の操糸スキル考察で、クライミング に不安が生じてしまった。
命を預ける糸なので、ちゃんと検証したいが、今はリスクを取ってでも、より良い場所を探しにいくべきだと思う。
これ以上この砂浜で、長期間生きていくのは無理がある。
目標を一泊二日とし、準備が出来たら崖を登り、探検すると決めた。
いつもの水汲みを済ませると、今日は保存食作りのため、三匹釣ってきた。
二匹は三十センチくらいのイスズミに似た魚だが、一匹は五十センチくらいのブダイに似た魚が釣れた。
早速作業に取り掛かる。
小さいのは二匹とも腹開きにしておく。
大きいのは三枚におろし、捌いた身は流されないように縛った上で、全部海水に浸けておく。
長めの流木を三本まとめて端部を縛り、トライポッドを作ると、中央に薪を組み火を起こす。
熾火が出来た頃、海水から上げた身に串を打ち、小さい方の一匹は普通に焼いて朝ごはんとして食べてしまう。
もう一匹は遠火で炙っていく。
大きな切り身の一枚はトライポッドにぶら下げ、煙で燻し、もう一枚は紐で日陰に吊るしておく。
保存食の作り方がわからないので、炙り、燻し、干物と三種類作ってみる。
一泊二日で良いのだから、どれかは腐らずに食べれるだろう。
残り少ない薪をくべ続け、完成を待つが、なかなか水分が抜けない。昼間の暑い中、焚き火の近くにいるのは辛いが、我慢して二時間くらいで、カラッとした炙りが完成した。
燻しの方は、まだ生っぽいので、そのまま放っておくことにした。
次は水問題の解決策を考える。
現状、水筒がわりになるのは貝殻しかないので、持ち運んでも水が溢れないようにしたい。
操糸スキルで糸ボールを作って、ギュウギュウと水の入った貝殻に詰め込む。さらに糸ボールが出てこないように、貝殻の周りもグルグル巻きにする。
逆さまにすると、チョロチョロと水が溢れてしまう。
芭蕉の葉をちぎり、折り返した上で、糸ボールに被せる。それをさらに貝殻ごとグルグル巻きにして固定。
逆さまにすると、さっきよりはマシだが水が溢れる。
上手くいかない。
諦めずに、今度は芭蕉の葉を先に貝に入れ、上手く貝殻と密着するように、糸ボールを詰め込む。
仕上げに全体的にグルグル巻きにする。
ひっくり返すと、ポタポタと水漏れが許容できる量になった。
よし!これで、いつでも水が飲める。
崖からの日陰が伸びてきたので、クライミング に向けた検証やらトレーニングを始める。
操糸スキルで最太糸を出すと、岩の角で擦ったり、それを引っ張ったり、ぶら下がったりしてみる。
やっぱり強い。擦れにも強い。
一本でも十分、体重を支えられる。
原因が解らない糸ネチョネチョ問題には目を瞑り、楽天的に考える。というより自己暗示。大丈夫。問題ない。なんくるないさ。エブリシングビーオーライ。
でも怖いので、四メートルを最高到達点にして、仮に命綱無しで落ちても大丈夫な高さでトレーニングする。
あーじゃない、こーじゃないと、色々な登り方を試した結果、右手薬指と小指から余裕を十分に持たせ糸を出し、普通にクライミング するのが一番楽だった。
三本出すと、糸を収納したり捌いたり忙しい上に、体に引っ掛かったりもして非常に登りにくい。
また安全マージンを削る事になるが、問題ない。
元々、三本はやり過ぎだ。
あとハーネスを試して見る。
先日、片手間に作ったハーネスは細く、体重かけると体に食い込んで痛そう。
一応、装着してぶら下がって見たが、予想通りめちゃくちゃ痛い。これで滑落なんかしたら、肉切れるんじゃ無いかな。
前に作ったロープを使って作り直すか。
あのロープ、出番ないと思ってたけど、活用策があって良かった。
日も落ちそうなので、夕方ルーティンを済ませる。
時間が無いので三枚におろした身をそのまま食べた。どんどんワイルドにならざるを得ない。
白湯でいいから、毎食後に飲みたい。
あと切れるナイフが切実に欲しい。切り身というより、引きちぎり身なんだよ……。
寝る前に、燻と干物をチェックするが、まだ生っぽい。魚が大き過ぎて肉厚すぎたのが良くなかったらしい。
雨に濡れない位置に、引き続き両方とも干しておく。
今日は忙しくて疲れてしまった。
明日、天気が良ければ、登ってみよう。
シェルターに戻り、目を瞑った。




