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016 ナイフが欲しい

 昨日はすっかりナイフ作りを忘れていた。

 今日こそはちゃんと作ろう。


 今日も明るくなると同時に、行動開始。


 シェルター前の崖を降りる際は、前もって作ったアンカーにヒョイと糸をかけ、エレベーターのように降りる。

 操糸スキル、凄い便利。


 水汲みを済ませ、そのまま磯に向かう。

 まだヤシガニあるんだけど、ちょっと食べ飽きた。


 久しぶりに貝をとり、魚も釣ろうかと深場を覗く。


 珊瑚の隙間にデッカいサザエらしき物が見える。

 糸を伸ばし、簡単にゲット。

 これってサザエじゃなくて、夜光貝だったか。

 まぁこっちの世界では何というかも分からないので、名前は無視してネットに入れる。


 ついでに海中にある海藻も、引きちぎって収穫。


 朝ご飯は、デッカいサザエの壺焼きに海藻サラダ。

 醤油かせめて塩が欲しい。


 サザエの身を取ろうと硬い針金みたいな糸を作って穿る。


 これ二本作れば、ちょっと細いけどマイ箸がいつでも出せるんじゃ無いかと思ったが、使いにくくて諦める。


 朝食後は薪木用に流木を探すが、あらかた手近なものは使ってしまったので、中々見つからない。しつこく探していたら、午後になってしまった。


 シェルター下に戻るとヤシガニから腐った臭いがするので、勿体無いと思いつつ砂浜に埋める。

 全部食べれなくてごめんなさい。


 鍛錬したいが、行動範囲を広げるためにも、崖を登るのを優先すべきだ。

 鍛錬は三日坊主になってしまったが仕方ないと諦める。


 操糸スキルがあるとはいえ、ワンミスで死ぬ事を考えると、上まで登る勇気がなかなか出ない。

 若くて無鉄砲だった頃は何も考えず登ったと思う。

「歳を取ったな」と苦い独り言がでた。


 もう少し、安全マージンを稼ごうと、今の体と操糸スキルを使ったクライミング を模索する事にした。


 昨日と同じ場所で、四メートル程度まで、操糸スキルを使わず何度か登り降りしてみる。

 一本だけ糸を繋ぎ登ってみたり、色々なパターンで試行錯誤する。


 疲れるとハーネス作りをしながら休憩した。

 ハーネスとは呼ぶのも烏滸がましい、ただの紐にしか見えないが、無いよりはマシだ。


 三時間ほどそんな事を繰り返して練習を終え、今度はナイフに使えそうな石を探して海岸をウロウロする。

 いくつか割ってみながら硬度の高い石を探すが、今日は見つける事が出来なかった。

 結局、今日も新しいナイフ作りは無理と諦めた。

 貝殻ナイフにもう少し頑張ってもらおう。


 夕方の水汲みと魚釣、夕食を済ませる。


 風が強くなってきており、リーフの先に白波が淡く光ったように見えていた。


 雨が降るかもと思いながら眠りについた。


◇◇◇


 十七日目だが、夜中から降り出した雨で肌寒い。

 雨を溜めるため、貝殻を並べる。

 シェルター入口に溝を掘り、水が入り込まないようにしておく。


 他にする事がない。


 気温が高くなった昼間に、外に出てシャワーがわりにサッと雨を浴びる。

 さっぱりしたが、濡れっぱなしで寒い。

 糸を沢山出して束ね、タオルがわりにしてみたが、全く水を吸わないのでスッキリとはしない。


 腹が減ったが、釣りに行くのはやめておく。

 波も高いので、磯に行っても釣りは出来ないだろう。保存食を作って置かなかった自分に腹が立つが、色々あり過ぎて混乱していたと思う。冷静になるには、いい時間かもしれない。


 暇なので、操糸スキルで色々試す。


 指先以外から糸を出そうと、頑張ってみるが出来ないものは出来ない。


 最高硬度で糸を出し、グルグルとスプリングみたいにしてみたが、反発力は無かった。


 ノコギリのようなギザギザをつけようと頑張ったが、無理。


 二本の撚り糸を作り、さらに撚り糸同士を撚り合わせ、それを繰り返していくとロープができたが、体から切り離してるので、操れないし収納もできない。撚りが甘い粗悪なロープだ。

 撚ったり三つ編みとか四つ編みとか試しながら、二メートルくらいの長さを作るのに、二時間程かかってしまった。操糸スキルが便利すぎて、普通のロープはこれといって活用方法が思いつかない。


 入口の流木に丸印を刻み的にする。操糸スキルでダーツもどきを作り、投げて時間を潰す。

 糸を収納すれば手元に戻ってくるので、「回収する手間が無いのは便利だなぁ」とか他愛もない事が嬉しい。



 雨で狭いシェルターに閉じ込められていると、余計な事を考える時間があり、どんどんマイナス思考になっていく。今までは、運良く生き延びれたが、これから先が不安でたまらない。

 蜘蛛との戦いは死んでもおかしく無かった。

 もっと恐ろしい生物がいるかも知れない。

 崖を登るとき落ちるかもしれない。

 食べ物も見知らぬ魚や海藻ばかりで、今のところ問題は起きてないが、本当はもっと慎重に毒味しながら食べるべきだ。

 毒を気にするのは、蜘蛛の魔石を食べておいて今さらな気もするが、あの時はそうするのが自然に感じたのだ。

 今後は気をつけていこう。


 死なないにしても、大きな怪我や病気で動けなくなれば、すぐに餓死してしまう。

 蜘蛛毒の時も、動ける内に復活できたから良かったけど、回復が遅かったら、餓死してたはず。


 目の前の作業に集中して、考えてもわからない事は努めて無視してきたが、本当は色々と不安だらけだ。


 この世界から戻れるんだろうか。


 元の世界の最後の記憶を辿ると、車を運転していた所までは思い出せるのだが、そこから先がうまく思い出せない。死んだからこの世界に来たのだろうか。


 なんとなく、死んだから此処にいるような気はした。


 停滞は嫌いだ。


 作業に没頭しておく方が楽で良い。

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