015 クライミング
十五日目になった。
まだ外は暗い。
今、欲しい物は切れるナイフ、お鍋、贅沢品としてお風呂というところか。あとバッグも欲しい。
ナイフは何とかするとしても、お鍋が全く思いつかない。お風呂は論外だが、体中が塩っぽいので、真水のお風呂に入りたい。雨が降るのを待つしか無いか。
あとは流木が残り少なく、燃料が不安になってきた。
数日前には「まずは生活基盤を整えよう」とか考えていたが、余り悠長にしてる時間はないようだ。砂浜拠点からの脱出か行動範囲を広げないといけない。
明るくなるのを待ち、シェルターを這い出る。
水汲みを済ませ、今日もヤシガニとの格闘。
綺麗に食べてあげれないのが申し訳ない。
ヤシガニから小さな魔石が出てきた。
蜘蛛の物より、随分小さく、身をほぐしている時に、たまたま気づいた。
頭の付け根あたりだったと思う。
蜘蛛の時は、何故か食べたくなった魔石だが、ヤシガニの物は全然、食べようと言う気にはならない。
不思議なものだ。
なんとなくコレクションとして、貝殻小鉢に入れておいた。
さて今日も頑張るぞ!
早速バッグ作り。
三センチくらいの輪っかを撚り糸で作る。四メートルくらいの糸をちょうど真ん中で折り返し結びつける。
繰り返し同じように全部で八本くらいつけて、同じ感覚で隣り合う糸同士を結んでいく。
あれだ。スイカとかボールが入ってるネットだ。
ちまちまと結び続け、最後は半分ずつに糸を分け、肩紐になるように結ぶ。
完成!
これで、細かい物じゃなければ、持ち運びができるようになった。
今日はヤシガニがあるので、釣りしなくて良いから時間がある。
脱出を念頭にちょっと下見をしてみる。
砂浜脱出には、海ルートか崖ルートの二択になる。
海ルートは磯場を越えれば、その先は断崖絶壁しか無いので、何処で上がれるのか分からないし、そもそもイカダを作るのに十分な資材が無い。
そうなると崖ルートしかない。
ちょっと試しに登ってみようと思った。
危ないので、操糸スキルの届く十メートルを今日の目標として、登れそうなルートを探す。
一番良さそうなのは、シェルター近くにある切れ込んだ辺りだが、落ちた時に下地が岩場なので練習には適さなそう。
今日はあくまでも練習なので、下地が砂浜になってる中央付近で登ってみる事にした。
あえてオーバーハングしている箇所を選ぶ。百二十度くらいだろうか。
被っていた方が落ちた時に、砂浜に落ちるのでかえって安全と思う。垂直より緩いと、落ちた時に崖にぶつかって怪我してしまう。
操糸スキルで糸を限界まで伸ばし、アンカーが取れそうな尖った部分を探し、糸をグルグルに巻きつけ、最後にループを作っておく。
何度か繰り返し、三箇所のアンカーを確保。
右手から二本、左手から一本糸を伸ばし、ループに先端を結びつける。
まずは試しに収納だけで身体を引っ張りあげてみる。
バンザイした格好のまま、持ち上がりはしない。
今の体重がわからないけど、多分、六十から七十くらいと思われるので、その程度でも引っ張れないようだ。
不思議なのは、五本、十本と糸を増やしても無理だった。収納での最大引張力は、トータルで変わらないようだ。
今度は糸を収納しながら、ほとんど足だけで登っていくが、足が崖から離れてしまい、ブラーんと吊り下げられてしまった。
うーん、うまくいかない。
裸足になって再トライ。
さっきよりはマシだが、傾斜がキツイところでやっぱり崖から剥がされる。
そして足痛い。
結局、手から伸びる糸は、安全確保と割り切り、普通にクライミング する。
残った指先からは、かぎ爪のように最高硬度の糸を出し、補助的に引っ掛ける。
場所によっては、ホールド保持が楽で助かる。
三メートル程、登ったところで、糸に余裕を持たせて、試しに落下してみる。
バンザイの姿勢で体が振られるが、アンカーが外れることもなく、糸を出している指も痛くない。
しかしホールドがガビガビで手足ともに指先を数カ所、怪我してしまった。
ルート整備しながら登るしかないかな。
石を持って再度、崖に取り付く。
ガビガビが酷い所は棘を石で擦って均す。
チーティングしてるようで心が痛むが、誰が再登する訳でもないし、これはスポーツじゃないと諦める。
十メートル登ったら、すぐに左手からさらに十メートル上を探りアンカーを作った。
とりあえず、ここまでとして、ゆっくり両手の糸を伸ばしながら、ぶら下がって降りてくる。
十メートルを四ピッチで余裕を持って上までいけると思う。
登れはしたが、命綱が指先から出てるため、登りにくくて仕方ない。もう少し何とかならんか。三本の糸をコントロールするのは頭こんがらがるし。
後は、登ってる途中でアンカー作る時はハーネス作って、身体を確保しておいた方がより安全かな。
こんなもんで今日のテストは終了。
昼からは鍛錬、水汲み、ヤシガニとこなし、シェルターで就寝。
お腹付近から糸が出せれば、登る時に両手両足使えるので、寝る前にやってみたが、全く出せる気配はなかった。両手の指先から十本が最大で、足の指からも無理だった。
何なんだろう。この制約は。
考えてもわかる物ではないので、諦めて寝た。
クライミング 用語多くてすみません。
ホールドってのは岩の突起等、登るために持つ所です。
チーティングってのは、フリークライミング は自然を、あるがままに登ることを背景に持っており、岩を割ったりする事は御法度です。
本来、血が出るような尖った岩があっても削ったりしてはいけません。




