012 シェルターの修理
十三日目の朝だ。
今日も張り切って生活改善を目指す。
寝る前に、色々と糸の活用も考え、この砂浜からの脱出も考えてみたが、まだ早いとの結論に至った。
崖さえ登ればすぐそこに道路が見つかるかもしれないが、まずは生き延びるのだ。
朝の水汲みを済ませ、あっさりと魚を釣って、ついでに食べられそうな海藻もあったので朝食は「焼魚に海藻サラダを添えて」みたいな感じになった。海藻サラダは貝殻の小鉢に盛り付けてみたりもした。
まぁ味は変わらんかったけど。
あれだ。文明を忘れないようにという憧れと戒めだ。
午前中は、ガッツリ作業する。
流木を拾い集める。
また蜘蛛に噛まれるのは懲り懲りなので、操糸スキルを使って、安全が確認できる所まで引きずってくる。
同じように椰子の葉もどきも集め、シェルターの崖下に集めると、先に登り操糸スキルで引き上げる。
これめっちゃ便利。
上から集めることも、収納でウィンチみたいに引き上げることも簡単だ。
長い流木をカットしたいので、ちょっと操糸スキルを試してみる。細めの流木を選び、最強硬度の一番細い糸を出し、流木に巻き付ける。
思い切って締め込んでみるが、切れなかった。
そう上手くはいかない。
切るのは諦めて、適当に入口に立てかけると、それを柱に、横方向にも流木を何本か結びつけていく。
木と木の交点を、太めの糸でシュルッと結ぶ。
めちゃめちゃ簡単に固定できる。
糸自体を動かせるから、半ば自動で結ばれるように固定できる。鉄筋の拘束機を思い出したが、そんな感じだ。
シュルッ、シュルッと手早く全部の交点を固定すると、今までとは比べ物にならない強度の壁になった。
後は椰子の葉もどきも、ちゃんと結んで固定していく。
ものの三十分程で、完璧とも思える壁が完成。
小さいがドアも付けた。
仕上がりに満足しながら、次の作業。
ベッド欲しい!
というわけで、流木を組み合わせてフレームを作成。左右のフレームの間に一番太い糸を軽く張っていく。グルグル、グルグルと巻いて、縦方向にもグルグルまいていけば、おお〜ベッドだよ。
寝てみると、糸のテンションも丁度いい。
ハンモックみたいな感じだ。
早速寝床に設置しようと洞窟を見れば壁で塞がれており、小さな入口しかない。
あぁ、またやってしまった。
仕方がないので、立てかけてある壁全体を持ち上げようとしたが、重過ぎて無理だった。
いや、諦めない。
洞窟より上の崖を操糸スキルで探り、アンカーが取れそうな所を見つけると、糸をしっかり固定しループを作っておく。それを二箇所設置した。
新しい糸を下から伸ばすと、ループを通して、壁の一番上の流木に固定。
糸を収納しながら、後ろに下がり全力で引っ張る。ガガガッと引き摺るような音がして、壁がほんの少し持ち上がる。
ここまできて、手元の糸の固定先が見つからない。
今度は逆にソロソロと僅かに糸を出しながら、そのままシェルター前の崖を足だけで下っていく。
崖を降りそのまま雑木林の方まで、下がっていき手近な木に指先から出ている糸を固定し切り離す。
「あーーーっ」と一気に溜息が出る。
これ、壁を作り直した方が早かった気がする。とか思いつつも、もう引き返す気はない。
崖を登り返し、僅かに浮いた壁の今度は下部を同じ要領で糸を繋ぎ持ち上げていくが、持ち上がらない。
どうにかこうにか全体重をかけて引っ張ってみるものの、持ち上がらない。
引っ張る角度が悪すぎるようだ。
新たな流木を持ってきて、いったんシェルターに入ると、壁に背中を当て内側から押し上げるように後ずさる。壁全体が傾き何とかベッドが入りそうな隙間が空いた。
急いで流木をつっかえ棒として立て、操糸スキルで固定する。
もう無駄な作業をしているようで、ドッと疲れた。
ベッドをズリズリと引き摺り洞窟に入れる。
再度、壁に背中を当て、つっかえ棒を取り、ゆっくりと基の位置に戻す。
そこからは面倒だったので、吊り上げている糸が通っているループを最強硬度の細い糸でゴリゴリしてみたら上手く切れた。
ズンっという音をたて、壁が地面についた。
最初より壁が斜めになった気がするが、もう良いや。風は塞いでる。問題なし。と見て見ぬ振りを決めた。
最太で出した糸でも最高硬度でグリグリすると切れると言う事が分かった。この発見は大きな発見だ、無駄な作業では無かった。意義ある作業だったのだ。と念入りに心の中で言い訳をしておく。




