表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
93/119

王都への帰還

 前話の後書きで、閑章はここまでと書きました。

 嘘です。もう一話続きました。ごめんなさい。

 バルトコル伯爵領へ来た地上車、ミリア曰くのキャンピングカーもどきは全部で四台。

 デアモント公爵、テムニー侯爵、デイネルス侯爵、それぞれの紋章の付いた車が一台ずつ。ハズレの一台は紋章無しで、各家の従者の皆さんが合同で使用して来た。

 普通の旅なら、各家ごとに従者用の馬車を何台も連ねるところだけど、今回は速度優先だったからな。


 で、だ。往路でばっさり切り捨てた社交を、復路ではしっかりこなさなきゃならない、らしい。


 そもそも実家のランドール子爵家は王都から馬車で一日。途中で宿泊する必要が無かった。

 俺の婿入り先のツオーネ男爵家までは半日だし、寄らなきゃいけない社交相手の家だって無い。

 バルトコル伯爵家と親戚づきあいがあったら大変だったろうけど、絶縁状態だったしな。


 今さら社交だなんて、面倒だったらありゃしない。(うち)だけ一足先に帰っちゃ駄目かな。


「駄目に決まっているだろう。いや、ランドール伯爵家単独で社交をこなして行くなら止めないが。そうすると、デアモント公爵が行く先々でマークを引き取ることになったと喧伝(けんでん)して歩くだろうな」


 冗談だろ。どっちも御免だ。


「それに、宿泊先の負担も考えろ。公爵家と侯爵家が二家、それに今一番の注目株の伯爵家だぞ。別々に接待することになったら、身代(しんだい)が傾きかねん。ここは大人しく同行しておけ」


 兄貴の言い分も(もっと)もだけどさ。

 何でも格上の家への接待は、貴族の見栄の張りどころだそうで。応接室と客室、それに玄関だけは豪華に(しつら)えるし、晩餐会だって可能な限りの高級料理を用意するそうだ。


「一度に泊めてもらったら、客室が足りなくなっちゃうんじゃないか」

「それは大丈夫。今回、極端に人数を絞ってあるからな。最上級の部屋は公爵閣下に譲るとして、俺たちは家族用の部屋を借りればいい。従者用の部屋は余るはずだし、トータルで見れば余裕さ」


 公爵家ともなると、主だった従者は貴族が当たり前。平民ならまとめて大部屋か街の宿で良いが、上級使用人は一人一部屋。それも貴族基準の部屋だから、俺やマークが使うには必要十分だとか。


「ランドール家は伯爵に陞爵したんだ。これからは社交だって伯爵レベルだ。しっかり経験しておけよ」


 うう、俺は兄貴ほど優秀じゃないんだよ。何でテイラムに同行してもらわなかったんだろう。兄貴が居るからって油断してたらこれだよ。

 



 

 天津箱舟謹製の地上車はさすがの性能で、移動時間を大幅に短縮できた。本来なら宿泊を申し込むところを、挨拶だけで済ませられたのが大きい。


 通常の手順なら、(あらかじ)め手紙のやり取りで宿泊を申し込んでおく。その上で、前日か遅くても当日に早馬で先触れを出して、到着予定時刻を知らせるものらしい。


 ところが地上車だと、早馬が間に合わない。

 奇怪な馬無し馬車にいきなり乗り付けられた貴族家は、高位貴族の一行にパニック気味だった。俺だって立場が同じならパニック起こす自信がある。

 それでも、急遽お茶の席を用意できるのはさすがだった。


 宿泊先だけは準備が必要だから、紋章無しの一台を先行させた。半日ちょっとで用意させて申し訳なかったけど、経費節減の口実になるから、それほど迷惑じゃないそうだ。本当かな。

 




 習うより慣れよとは良く言ったもんだ。なんとか王都に到着した時には、付け焼刃だけど伯爵らしい振る舞いを身に着けられた。

 同行したテムニー侯爵やご子息とゆっくり話す時間も持てたし、キャサリン義姉さんやマークと今後の相談も出来た。


 マークに関してはちょっと反省してる。ランドール家の跡継ぎって決めつけてたけど、それで良いんだろうかって。


 それにキャサリン義姉さん。

 上の兄貴が亡くなって十年以上経ったし、俺は名ばかりの夫で義弟でしかない。このままランドール家に縛り付けて都合良く使ってるだけじゃ、申し訳なくて。

 マークはいずれ大人になる。子育てが終わったら、キャサリン義姉さんの幸せはどこにある?


 バルトコル伯爵家との因縁もほどけたんだ。キャサリン義姉さんさえ良ければ、俺じゃなくて、第二の人生を共にできる方と再婚するのもアリだと思う。







 我が家は、しがない地方貴族の子爵家上がり。成り上がりの伯爵家で、(しがらみ)は……侯爵家とか、公爵家とか、王家とか、おまけに天津神とかあるけれど。



 それでも家族がみんな幸せなら、それだけで良いと思うんだ。



 









 クリスマス寒波が凄いことになってます。停電、高知や九州、北関東での積雪。

 冬はまだまだこれからが本番。皆様、しっかり備えをしましょう。


 お星さまとブックマーク、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です。 [一言] ・巨大なしがらみだらけですな。 もうどうしようもない、となっても「聖女の父親」というジョーカーがあるから安心。 ・♪南国土佐をあとにして〜♪ なんて歌があり…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ