デアモント公爵家の契約結婚
やっとこ公爵家のネタまで来ました。タイトル考えた時は、もっとすんなりここまで来るはずだったんだけどな。
次はオスカー君の反撃ターンと行きたいところだけど、はてさてどうなる事やら。
デアモント公爵の申し立てにより、貴族院の高官の立会いの下、協議の場が設けられた。
参加した親族の顔触れは、元が付くが、バルトコル伯爵のカレスン卿。伯爵家の四姉妹とその配偶者および子息。二つの分家の当主。そしてキャサリン義姉さんの義兄と言う立場をねじ込んできたエザール兄貴だ。
一人だけ格下の子爵夫人だったキャサリン義姉さんだけど、今はランドール伯爵夫人なわけだ。デイネルス侯爵の兄貴が出てきたら、オーバーキルじゃなかろうか。
「この場での協議は、王城内で行われるに等しいと承知おきください。発言は全て公のものとなります。よろしいですな」
お役人の宣言で、協議は始まった。
本当に、本当に高位貴族って面倒くさい。
デアモント公爵の説明を聞いて最初に思ったのがそれだった。
話は、亡くなったバルトコル女伯爵より二代遡る。
そんな昔の話と思うのは中位貴族の感覚だとかで、二千年以上の伝統を誇る公爵家と侯爵家にとっては、つい先日だそうだ。伯爵家だとちょっと昔くらい。
俺も身に着けなきゃいけないと言われてるけど、大人になってから感覚変えるって、無理だよな。
「我がデアモント公爵家の三男にあたる人物が、バルトコル伯爵家に婿入りしたのが発端だ。公爵家と伯爵家、家格が合わないのは明らかだったが、熱烈な恋愛結婚だったと伝わっておる。バルトコル伯爵家は伯爵家筆頭と言って良い家格であるし、条件を付けて契約結婚にすることで許可が下りた」
両家の当主、貴族院、そして王家。その全ての許可を取り付けて、ようやく実現するのが家格違いの結婚だそうだ。
今更だけど、エザール兄貴、よくまあ侯爵家に婿入りできたもんだ。王家に直談判したリアーチェ義姉様、さすがです。
「その契約の中身だが、婿入りした当家の三男の血筋の男子を、デアモント公爵家へ戻すというものだった。この結婚により生まれたのが先代のバルトコル伯爵。残念ながら一人っ子だったため、契約の履行は次代以降に持ち越された」
先代のバルトコル伯爵。亡くなった女伯爵の父親で、キャサリン義姉さんの祖父に当たる人だ。血筋的に当時のデアモント公爵の甥になる。
「いずれ我が公爵家に戻る血筋、となれば、薄まり過ぎては障りが有る。そこで、王弟殿下の姫君の降嫁が決まった。二人以上の男子が産まれれば無事契約終了だったのだが、そうはならなかった」
病弱だった王族の姫君、女伯爵を産んで儚くなられたからな。でもそうか、伯爵家に王族の姫君って、そんな理由があったのか。
「バルトコル伯爵家が続く限りは条件が整うまで待つだけだが、此度、伯爵家は終焉を迎えた。故に今代で契約の履行を求めねばならぬ。テムニー侯爵夫人のご子息はテムニー侯爵家唯一の後継者。無理は言えぬ。ランドール伯爵家にはご長女とご次男が健在。キャサリン夫人のご子息マーク卿を、我がデアモント公爵家の後継としてもらい受けたい」
「お言葉ですが」
声を挙げたのは、キャサリン義姉さんだった。
「わたくしの母は、先代バルトコル伯爵の庶子でございます。さらに言えば、祖母は平民。公爵閣下であれば、わたくしの父についてもご存じでありましょう。我が息子マークは血が薄すぎます」
今は公の場だからな。トマーニケ帝国の平民が父親だとは断言できないから、ぼかして言わないと。
「その点は問題ない。マーク卿は恐れ多くも聖女様の従兄であり義兄。天津神の子孫とは言え血が薄まり過ぎて只人となった我らより、よほど天津神に近しい。マーク卿が当主となれば、我がデアモント公爵家の誉である。それにな」
公爵閣下の口調が柔らかくなった。
「血の濃さに拘り過ぎた弊害が出ておるのは、この場の皆が承知であろう。子が産まれず、生れても病弱。血統は先細るばかり。バルトコル伯爵家が途絶えるも、公爵家と王族の血を入れたが故よ。平民の血、大いに結構。侯爵家以上の家は是非縁を結びたいと歓迎するであろうし、伯爵家の者たちが血の薄さを馬鹿にしてくるなら、それこそ公爵家の権威で蹴散らすまでのこと。権力の使いどころ、実地訓練には丁度よかろう」
口調は柔らかくなったのに、迫力が増してませんか。
なんとか言ってくれよエザール兄貴。俺じゃ言いくるめられそうで。
高位貴族って、何でこんなに怖いんだ。
ようやくタイトル回収できそうです。完結に向けて頑張ります。
お星さまとブックマーク、ありがとうございます。




