バルトコル伯爵領へ
遅くなりました。ここから公爵編へ向けてスタートです。
青い板、ネーミングの応募、ありがとうございます。結果発表は本編で(笑)
波乱の国際連携機構、略して国連の設立総会が終了して一週間。王都のランドール伯爵邸に使者が訪れたのは、俺とミリアがランデア子爵領へ戻ろうとしていたタイミングだった。
「バルトコル伯爵家当主、リリアーヌ・バルトコル女伯爵、ご危篤でございます。キャサリン・ランドール伯爵夫人、および伯爵家の皆様にお集まりいただけるよう、お願い申し上げます」
女伯爵が長くないとは、何年も前から言われていた。
もともと虚弱体質で、自領どころか邸宅から外出する事さえほとんど無かったと言う。王都には一度も来たことが無いはずだ。
女伯爵の実子は、ご長女ただ一人だ。出産はそれこそ命がけだったそうで、二人目以降の妊娠は医師に禁止されてしまったのだとか。
キャサリン義姉さんはバルトコル伯爵家の四女の生れだけど、母親はカレスン・バルトコル伯爵の第三夫人。ものすごく遠い親戚のランドール子爵家に嫁いできた。
その時点で実家の伯爵家とは縁が切れて、親戚付き合いは一切なかった。キャサリン義姉さんの夫だった上の兄貴が亡くなった時、弔問の一つも寄こさなかったほどだ。
そのまま絶縁状態が続いていたら、今回の帰省要請も無視して終わりで良いんだが。
バルトコル伯爵家の後継者問題が持ち上がって、キャサリン義姉さんに実家に戻って欲しいと話が来たのが去年のこと。まあ、きっぱり断ったんだけどさ。
その時のごたごたで、女伯爵の長女でキャサリン義姉さんの姉にあたるテムニー侯爵夫人と交流を持つようになったからなぁ。色々複雑な伯爵家の内情も話してもらったし。
ミリアが聖女に認定される騒動の直前だったっけ。思えば遠くへ来たもんだ。
テムニー侯爵邸でカレスン・バルトコル伯爵と面会して、義姉さん、一応、親子の和解が成立してた。そう、一応。
なんとカレスン卿、キャサリン義姉さんの実の父親じゃ無かった。それでも義姉さんに後継者問題が持ち込まれたのは、母方からバルトコル伯爵家の血を継いでいたからだ。
分家出の婿養子でしかないカレスン卿より、キャサリン義姉さんの血がずっと濃かったもんだから、すったもんだしたわけで。
「行きましょう。これが最後の機会だわ。このまま会わなかったら、後悔する時が来るかもしれない。会って後悔したって、どうせ二度は無いんだから。やらずに後悔するよりやって後悔した方がマシって言うでしょ」
ニーナ、力強い後押しありがとう。
バルトコル伯爵領は、東の端。トマーニケ帝国との国境に一番近い場所だ。一日で帰れるランデア子爵領と違って、長旅になる。旅の荷造りを大急ぎでやり直していたら、テムニー侯爵家から使いが来た。一緒に帰りましょうと言うお誘いだった。
前後して、デイネルス侯爵をやってる兄貴からも連絡が来た。キャサリン・ランドール伯爵夫人の義兄として同行するという、決定事項の通達だった。
「リアーチェも同行したがってたけど、今、悪阻でな。妊娠初期は無理は禁物だ。留守番を承知させたよ」
ええっ。初耳なんだけど。兄貴、おめでとう。今度こそ無事に生まれると良いな。
頼むぞ、天津箱舟の医療施設。
高位貴族のごたごた、ものっそ面倒くさいと思っていただければ正解です。公爵編への序章の予定。長くなり過ぎたら、またお冨が暴走したと笑ってください。
お星さまとブックマーク、ありがとうございます。




