終戦
感想、ありがとうございます。そうですよねって、共感させていただきました(笑)
タムルク王国で大規模な反乱が起きたのは、開戦から半年後の事。切っ掛けは、脱走兵の増加だった。
タムルク王国軍は劣勢を隠せなかった。いくら指揮官が徹底抗戦を叫んでも、徴兵された農民兵が従わなければ戦えるはずがない。むしろ、兵たちが集団脱走して降伏する事態が頻発した。
何しろ、デルスパニア王国軍の占領地域の方が、戦闘の起きていない地域より豊かになっていくのだ。碌に食料の支給の無いタムルク軍で飢えるより、投降して占領地の日雇い労働者になった方がよっぽど生き延びられる。
雪が解けるように消えていく兵士を引き留めるため、見せしめに処刑しようとした貴族の士官が返り討ちにあった。それが反乱の始まり。
差し向けられた鎮圧軍だとて、不満を持つ農民兵は大勢いる。たちまち寝返りが起きて、反乱軍が雪だるま式に膨れ上がった。
純軍事的に言えば、反乱軍と手を結べば勝利間違いなしだろう。数は力だ。しかし。
デルスパニア王国は、宣戦布告されたから降りかかる火の粉を払うだけというスタンスだ。タムルク王国がどうなろうと内政干渉する気は全くない。むしろ反乱軍に王家が打倒されてしまっては困る。終戦の交渉相手が無くなるからだ。
自然発生した反乱軍は、所詮は烏合の衆、すぐに補給が尽きて、自然消滅するしかない。
「いっそ、指導者のいるしっかりした反政府組織なら、代表者と交渉できるんだがな」
前線司令部でぼやいていたら、テイラムがコーヒーを持ってきてくれた。入れ物は大振りの紙コップだ。紙製品のラインナップがまた増えたな。
「まあ、無理だと思うよ。不満が爆発しただけで、行動方針も何も無いからねぇ。不満に火をつけたのはデルスパニアだけどさ」
「まあな」
占領した農村の惨状を見て、俺たちはてっきりタムルク王国の焦土作戦だと思ってた。ところが詳しく話を聞いてみると、これが通常だと判明した。
福祉政策は皆無。取れるだけむしり取られる税金。無給の労働が徴兵に代わっただけで、男手が取られるのはいつもの事。
そこにデルスパニア軍の占領政策が持ち込まれたわけだ。
俺たち基準の必要最低限の生活物資は、この国じゃあ富裕層でなければ手に入らない物だった。隣国だと言うのに、この差は衝撃だ。
「働いて賃金もらうのも、貨幣で買い物するのも初めてだなんて、ちょっと考えられないよな。物々交換だけで暮らすなんて、ツオーネ男爵領でもやってないぞ」
「そうだけどさ、ここでニーナ夫人の実家、引き合いにしなくても良いと思うなー」
「じゃあ、ランドール伯爵領で」
「いや、自虐しなくて良いから」
テイラムの突っ込みを流しながら、この後の段取りを指示していく。空中分解する反乱軍の何割かは、脱走兵として占領地に流入してくるだろう。野盗化する前に取り込まなくては。
本当に、占領地を増やさないで良かった。もしタムルク王国を併合する羽目になったら、どれだけ負担が増えてたことか。
「王家に人望が無い訳が良く解ったよ。比較対象が出来て、我が国の王家が光り輝いて見えるな」
「そりゃ良かったねー。タムルク王家でも何かの役に立つもんだ」
テイラムと軽口を叩いていると、入り口が騒がしくなった。声が明るい。朗報らしい。
「タムルク軍より、降伏の使者が来ました。我が軍、勝利です!」
やっと終戦か。嬉しいと言うよりほっとした。
これから面倒な後始末が有るけど、とりあえずは一息つけそうだ。
オスカー君、仕事してますけど、軍人と言うより民生員のような(笑)
まともな貴族も居るはずなんですが、国全体ではダメダメですね。
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