段ボール登場
み、短い。
オスカー君、居場所を探してウロウロしてます。
ささやかな変化ですが、確実に流通革命につながってます。
タムルク王国との国境地帯に集結した王国騎士団は、全部で十五。ざっと十五万人だ。ちょっとした中核都市の人口を超えている。
これだけの規模だと、後方支援の負担が半端ない。
とは言っても、騎士団は戦闘のための専門集団。遠征は職務の内でしっかり訓練してるから、物資さえ途切れなければ、後は内部で全て完結できてしまう。
うん、俺の整えた補給マニュアルが役に立っているようで何より。
次々届く物資にちょっとした異変が起きたのは、俺が前線司令部に着任してすぐだった。
物資の梱包材が変わってた。木箱では無いし、布で包んで縛り上げた物でも無い。驚いたことに、紙製品だった。
段ボール箱という新製品だそうで、軽くて丈夫。大きさがそろっているから積み上げやすい。木箱と違い釘付けされてないから、釘抜きの手間がかからない。
箱を閉じているのはガムテープというこれまた新製品。粘着剤が片面に塗布された、使い捨ての細幅の薄い帯だ。手で引きちぎれるから、簡単に開封できる。
使用後は、たたんで潰せて場所を取らない。柔らかくて断熱性があるから、テントの床材に重宝する。何より有り難いのは、紙だから煮炊きの燃料の足しになる事。薪や木炭を節約できると言うのは大きい。
お陰で野営が地味に快適になって、士気が上がっている。
「便利なものが出来たもんだな」
「必要は発明の母って言うでしょ。だいぶ楽になったよー」
テイラムが荷受け場に積まれた段ボール箱の側面をトントンと叩いた。そこには、絵筆で太く文字が書かれている。中身と宛先、それに送り主。
「箱に直接書き込めるって便利だよね。張り紙だと剥がれたらそれまでだったから、中身が分からなくなっちゃって大変だったよなー」
そうだった。本当に大変だった。トマーニケ帝国との戦争の二年間、段ボール箱があったならどんなに楽だったろう。
思い出したくも無い苦労を反芻しながら、行き交う荷馬車の間を歩いた。
簡易な戦闘服だけど、それでも大将のミリオタ神の護符は目立つ。すれ違う兵士たちが慌てて敬礼してくるのに返礼しながら、司令部に足を運ぶ。
あんまりフラフラ出歩くと、現場の邪魔になるんだよなぁ。分かっているけど、やっぱり、補給物資が気になるんだよなぁ。
戦闘が始まる前って、変に手持無沙汰なんだよなぁ。
周りが忙しそうにしてるのに申し訳ないけど、下手に手を出したら却って迷惑かけちゃうしなぁ。
俺、本当に役立たずで申し訳ない。なんで大将やってるんだろ。はあぁ。
段ボール、地味に便利ですよね。工夫次第で強度を上げて、避難場所の簡易ベッドに成ったり、普段使いの家具に成ったりします。
お星さまとブックマーク、ありがとうございます。読んでいただけて嬉しいです。次は、もうちょっと話を進めたいです。




