伯爵家 始動
昨日は急遽休日出勤になりました。コロナ関係で臨時休業した他社の救援要請に応えた結果です。まあ、しゃーない。
ランドール子爵家、名称変更になりました。かなり安直な命名ですが、元の名称と掛け離れすぎると繋がりが分かりにくいのでこうなりました。
無事に王都で伯爵邸を構えて、デイネルス侯爵邸から引っ越し終了。ありがとう兄貴、長らく居候させてくれて。お世話になりました。
伯爵邸の使用人は、ランドール子爵領で募集した。貴重な雇用機会だからな。領民に還元しないと。
やって来たのは王都に憧れた若者たち。一旗揚げようとやる気十分なんだが、貴族に仕えるには色々と足りなくて、一人前に育てなきゃいけない。
使用人の教育係は兄貴に頼んで融通してもらった。そしたら、怒られた。
「旦那様、現状では下働き候補しかそろっておりません。上級職が一人も居なくては、お客様の対応はいかがなさるおつもりですか。最低でも侍女長と執事が居なければ屋敷が回りません。すべてを纏める家令を任命するべきと進言いたします」
軍人の俺に分かりやすく例えて言うと。
やってた来た領民たちは、徴兵した農民兵。当主の俺は司令官。
訓練受けた正規兵が一人も居なくて、兵を取りまとめる下士官どころか、部隊指揮を執る士官も、命令を伝達する伝令兵も、司令部の参謀も居ない。
これじゃあ、到底軍とは言えない。
「貴族家出身の平民、または家督を継げない貴族籍の者にお声がけ願います。貴族の素養が無ければ、上級使用人は務まりません。どうしても平民に拘ると言うなら、貴族学園卒業者が絶対条件です」
ごもっともです。俺の手には負えません。助けてテイラム。
結局、王都の伯爵邸の女主人は、キャサリン義姉さんにお願いすることにした。元は伯爵令嬢だからね、中位貴族と高位貴族のギャップを上手く埋めてくれると期待している。義姉さんの実子のマークも、あと半年もすれば王都の貴族学園に入学だから、このまま王都に残ってもらうことにした。
ミリアは母親のニーナと一緒に、ランドールから改名したランデア子爵領へ戻ることになった。本来ならランドール伯爵領に行くべきなんだけど、ほら、伯爵領はアレだから。
王宮に引き留められたんじゃないかと聞いたら、スマホモドキでいつでも連絡取れるので、問題なしと説得したから大丈夫と返事があった。
説得、ねぇ。高らかに船長命令を宣言する姿が浮かんでくるんだけど……。
末っ子のカークは、大喜びでツオーネ男爵家に遊びに出かけて、のびのびと自然を満喫している。王都暮らしは窮屈で退屈だったらしい。同年代の友達も居なかったしな。
まだ七歳だし、お祖父ちゃんお祖母ちゃんに可愛がられて、村のガキんちょと泥んこになって遊んでいるそうだ。
俺もそっちが良いんだけどなぁ。
伯爵領は、グレーン・スミス公爵家長男様を代官に任命して任せることになった。近衛騎士を退任し、正式に俺に仕官している。
はっきり言って押し掛け家臣だけど、王家と公爵家が後ろ盾になってるから断るに断れないんだ。
「独立し騎士爵を叙爵された折、家から餞別を与えられております。まあ、遺産相続の前払いですね。そこそこの額が有りますので、伯爵領の開発資金はご心配なく」
いやそれ、グレーン卿の個人資産だから。領地開発に流用しちゃ駄目でしょう。
「使用不可と仰るなら、ランドール伯爵家に対してスミス公爵家が貸し付けると言う体裁を取らせていただきます。となると、他家からも融資の申し込みが殺到して混乱が起きますので、伯爵閣下御本人に対処をお願いすることになります。よろしいでしょうか」
よろしくないです! いやもう、融資の申し込みが殺到って、借りる方と貸す方が逆じゃありません?
「天津箱舟の役職に伴う出費ですので、全く問題ございません。どうしても納得できないとおっしゃるなら、一時立て替え払いとお考え下さい。収益を上げられるよう粉骨砕身いたします。なに、惑星開発プログラムに沿って進めるだけですので、成功は既定路線。大船に乗ったつもりで御安心ください」
オオブネ、ですか。
今でも時々、聞き覚えの無い言い回しが有るけど、高位貴族の教養なんだろうなぁ。俺も使いこなせるようにならなきゃいけないんだろうけど、道は遠そう。
グレーン卿と一緒に来た近衛騎士の皆さんも、それぞれ家から独立して近衛騎士を退官済みだそうな。元々天津箱舟乗組員時代の上司と部下という家柄だそうで、すんなり上下関係が出来てるんだと。
私たちも資金提供しますからと、多勢に無勢でにっこり押し切られてしまった。
そんなこんなで家族ばらばらになってしまったけど、とりあえず落ち着いた。
俺もいい加減、軍務に復帰しないといけない。どれだけ休職してたんだ俺。頑張って伯爵邸の維持費稼がないと。
そう思ってたんですよ。復帰後いきなり戦争勃発って、俺、何か悪いことしましたか。
今日は、三年ぶりの秋祭り。家の前を和太鼓演奏しながら走る軽トラと、新調したのにお披露目が延び延びになっていた子供神輿が通って行きました。
お神輿、タイヤ付きの台車に乗せて、ゴロゴロ引っ張られるタイプです。担ぐ人手不足対策だとか。ちょっぴり寂しいです。
お星さまとブックマーク、ありがとうございます。ヒューマンドラマ、年間ランキング五位に入ってました。皆様のお陰です。




