帰省しました
ニーナ母さんの実家に着きました。オスカー君の舅さん、久々の登場です。
「おうおう、男ぶりが上がったな」
騒ぎを聞きつけて村の中央広場に出て来てくれたのは、我が義父上。ニーナのお父さんだ。
「ご無沙汰して申し訳ありません、お義父さん。色々お話しなきゃいけないことが有って、お邪魔しました。あー、ちょっと騒ぎになってますけど、彼らは同行者で、近衛騎士です。彼らの分も、今夜の宿をお願いします」
ツオーネ村には、宿屋が無い。行商人も俺たち親戚も、男爵家に泊まるか野宿するしかないんだ。農家に宿を頼むと、住人を家から追い出すことになるからな。
田舎じゃ良くあることだけど、普通は村長の家を使わせてもらえる。
ツオーネ村には村長が居ない。というかツオーネ男爵が村長を兼ねている。
開拓村を興した功績で男爵に叙爵されたものの、村の規模を広げられず、村長を別に任命する余裕が無いまま代を重ねてしまった家なんだ。男爵の肩書を持った村長さんと言った方が正しいか。
「近衛騎士、でいらっしゃるのか。近衛兵では無く?」
義父上の疑問はごもっとも。何度も言うけど、近衛騎士は国の超エリート、こんな僻地には全然似合わない存在だ。近衛兵だって、この村に来たことは無いはずだし。
それが五人も顔をそろえているなんて、普通は有り得ない。
「近衛騎士で間違いありません。ほら、ミリア関係で。ここは聖女の生母の実家になるわけですし」
義父上が何とも言えない顔になった。多分、俺も同じ顔をしてるんだろう。
案の定、村人総出の宴会が始まった。各々料理や手作りの酒を持ち寄って大騒ぎだ。
相手が近衛騎士だからと遠慮する者はいない。村人にとってあまりにも縁が無さすぎて、どれだけ雲の上の存在かピンと来ないのだ。『行商人より立派な服を着た顔の良い軍人さん』以上でも以下でも無い。
騎士の皆さんも、満更じゃないようだった。ここまでの無礼講なんて滅多にできない体験だろうし、楽しんでもらえたら何よりだ。
着いて来たのはそっちだし、気を使わなくて良いって言ってもらってるし、問題無いよな。
次の日、義母上の心づくしの朝食を頂きながら、ようやく話ができた。
「ツオーネ男爵家については、お気遣いなく。オスカー君が伯爵に出世して娘が伯爵夫人に成れたんだ。これ以上を望んでは、バチが当たると言うものだろう。伯爵令息になったカークに、このちっぽけな男爵領を継いで欲しいとは言わないから、安心して欲しい」
義父上、そんな悲しいこと、言わないで下さい。
「あいにく、ツオーネ男爵家は直参貴族だ。独立爵位だから、格上の爵位と併せ持つことは出来ないしなあ。ああ、もちろん、こんな貧乏男爵家でも継ぎたいと言ってくれるなら、喜んで譲るよ。けれど、この家に拘って他の道を諦めて欲しくはない。まあ、わしの兄弟全員、こんな田舎は嫌だと出ていくような家だからな。なに、寿命の続く限りは村長を務めて、その後は爵位と領地を国に返上するつもりだよ」
そりゃ、新しく伯爵家になったんだから、次期当主の弟を分家させて従属爵位を与えるのが筋だけどさ。肝心の伯爵領がアレだよ。領地を割譲したって、現状のツオーネ男爵領よりマシにできるかどうか未知数としか……。
「今から気を揉んでもどうにもならんよ。将来どうなるかは分らんが、私の心積もりは承知しておいてくれ。なに、曾孫や玄孫の代になったら、一人くらい後継者が現れるかもしれんしな。ランドール伯爵領の隣になるのだから、大発展する可能性もゼロでは無かろう。期待させてもらうよ、婿殿」
義父上はそう言って、豪快に笑った。
そうですね。伯爵領には村が二つ有るそうだし、人は住めるんだ。頑張って領都に相応しい都市を創らなきゃですね。
頑張りますよ、お義父さん。
こうして、正月特番に繋がるわけですね(笑)
近衛騎士五人、ランドール伯爵領でお仕事があります。オスカー君の護衛はその口実だったりします。
お星さまとブックマーク、ありがとうございます。
豪雨災害の影響で、娘の帰省は中止になりました。残念。JRと国道と高速道路が全滅しちゃったから、仕方ありません。関西と北陸が分断されると、東京から北陸新幹線を使うしかないかな。




