初めての王宮訪問 到着
ようやく王宮へ到着しました。
読んでいただき、ありがとうございます。
最後の一文を追加しました。
王都内は乗馬禁止。ただし、俺たち王都警備隊は職務上必要な時に限り、認められている。市中見回りでわざと目立って存在をアピールするんだ。
馬種も、荷馬車や乗合馬車を牽く重馬種じゃ格好がつかない。王侯貴族の馬車を牽いたりパレードで使われたりする、姿かたちの整ったスマートな軽馬種だ。まあ、平民街に回ってくるのは、貴族街で活躍してたやつのお下がりで、年取った馬しかいないけどな。
見かけ重視でパワーや持久力はイマイチだけど、王都内の巡回には必要十分。王都内では、走らせちゃいけない。歩かせるだけ。伝令兵を出すときも、許されるのは早歩きまでだ。
そんな老馬を全力疾走させているのが、俺、オスカー・ランドールだ。成り行きで黒旗の軍使のアンカーを務めてる。王宮までは人払いされた一本道、最短距離だから、何とかトップスピードを維持できるだろう。
貴族街に入ると、近衛兵たちが俺を二度見して来た。
そりゃ不審だろうさ。黒旗が王都警備隊の軍服着て走ってるんだから。どこかで停止させられるかもと覚悟してたんだが、さすがは黒旗というか、王城までノンストップだった。
王城の城門は普段から開け放たれていて、中に入ると一般公開された公園扱いの外庭が広がっている。その奥にあるのが王城内の王宮で、国家機関や王族の生活空間がある国の中枢部。当たり前だが関係者以外立ち入り禁止。
俺は入ったことが無い。職務上もそうだけど、地方貴族の後継者風情では資格がない。中位貴族当主の父や義父だって、よほどの国家行事でもなけりゃ、お呼びはかからない。
王宮を囲む簡易な柵の入り口で馬を止めた。ここから先に行くには、やっぱり心の準備というものが必要でな。ついでに言えば、道案内がないと、どこへ行けば良いのか分からないんだよ。
「東城門警備中隊、中隊長オスカー・ランドール大尉だ。カロテタリア騎士団のホーネット中佐より黒旗の委任を受けた。陛下の御前まで案内を頼む」
とりあえず大声で自己申告。誰かが何とかしてくれるだろう。ここで黒旗と書状を渡して帰れないかな。
「お通り下さい。先導いたします」
大佐の肩章を付けた近衛兵が、手綱を取って走り出した。
いや、大佐が俺に敬語っておかしいだろう。俺騎乗したままなんだけど、良いの? え、王宮の建物内まで入っちゃうの? 廊下を馬で走って良いの!? えええええっ。
「陛下、黒旗が到着いたしました」
だからノックは? いきなりドアを開けて良いのかよ。
俺は慌てて下馬した。案内してきた大佐が、俺の背中に手を当てて連行するように入室した。そこは控えの間だったようで、数人の近衛騎士が詰めていた。あれよあれよという間に両脇を近衛騎士に固められ、そのまま奥の部屋へ。
「御苦労、書状をここへ」
奥の立派な執務机から声が掛かった。うわ、陛下だよ。肖像画で見た国王陛下だよ。
近衛騎士に引きずられるようにして前に進み、手にした書状の黒旗包みを突き出した。執務机の端っこに着地させて、そのまま後ずさり。
礼儀作法? 中位貴族と軍人用ならマスターしてるよ。それ以上は分からん!
とにかく、書状は届けた。後は無事に東門へ帰るだけだ。
誰でも良いから、早く「下がれ」と言って下さい。
初めての連日投稿です。楽しんでいただけたかな。
オスカー君、簡単には退室できません。次話、王様からの無茶ぶり、始まり始まり―。
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