披露パーティー
ぐちぐちとオスカー君、慣れない場でセルフ言訳しています。
ミリアちゃんは、お姫様のキラキラドレスにテンション上がってます。だって、夢見るお年頃の女の子だもん。前世込みの年齢は、スルーする方向で(笑)
今日はミリアの公式なお披露目の日。王城の前庭にずらりと並ぶ豪華な馬車には、他国の国章が煌めいている。
ミリアは社交界デビューしていない子供なのに、いきなり王宮のパーティーの主役だなんて。ごめんよ、父さん断れなくて。
父さんだって王宮でのパーティーは初めてだから、頼りにならなくて本当にごめん。
父さん騎士爵だったから、社交界に出てなかったんだよ。ニーナの実家に婿入りしてからは軍務一筋だったし。大きな声じゃ言えないけど、ツオーネ男爵家は王都で社交する余裕なんて無い弱小貧乏貴族だし。
今日は未成年のミリアが主役ということもあって、昼間の時間帯だ。だけど格式は夜会並み。
参加者は国外からの招待客と王族に高位貴族の皆様。伯爵家以上の家格の方だ。中位貴族の子爵家なんて、本来ならお呼びじゃない。
俺はミリアの保護者枠で特別に許可されたんだから、俺がエスコートしたかったんだが。
エザール兄貴にエスコート頼めたら良かったんだけど、リアーチェ義姉様のエスコートが有るから無理だった。
それでもなんとか王太子殿下のエスコートは断ったから。殿下の婚約者の公爵令嬢をエスコートなさってくださいって進言したから。これが父さんの精一杯なんだよ。
まさか、王太子殿下断ったら、国王陛下が名乗り出て下さるなんて想定外だよ。ごめん、ミリア。父さん、陛下に忠誠誓ってる国軍の軍人だから、陛下を押し退けられないんだ。
パーティー会場は王宮の大広間。庭園に面した壁一面がガラスになっていて、直接外へ出られるガラス製の扉も複数ある。そのすべてが解放されていて、ガーデンパーティー用に設えたテーブルと椅子がそこかしこに並んでいた。
今日は俺も参加者だけど、会場警備している近衛兵を見ると、そっちに混じりたくなる。急遽王都に呼び戻された顔見知りだってそこそこいるしな。
慣例に従って爵位の低い者から会場入りしたから、入り口近くの俺の目の前を伯爵家の方々が通られていく。
何で子爵風情がここに居るんだと言う顔をしているのは事情を知らない方。軽く目礼してくださるのは情報通の方。軍務で顔見知りになった何人かには驚かれたけど、否定的な感情は無かったと思いたい。
侯爵家の方々の入場が始まると、がらりと対応が変わった。皆様親しげに笑いかけて、一言二言声を掛けて下さる。十四家しかない公爵家になったら、わざわざ足を止めて中には握手を求められた方もいた。
最後に近衛騎士の一団に囲まれた王族の方々が入場された。その中央に陛下にエスコートされたミリアの姿が。大人ばかりの会場でただ一人の子供のミリアは、否応なく目立っていた。
陛下が開会を宣言されて、ミリアを聖女として紹介された。国賓の方々が半信半疑の体で、本当に御神託を受けたのかと上品に詰め寄る一幕があって、ミリアが天井に向けてコンピューターと呼び掛けた。この場の全員に祝福をと願い、そしてコンピューター神の御神託が下った。
相変わらず理解できない神代古語だったけど、今日はそれだけじゃ終わらなかったんだ。
「コンピューター、祝福を。壮大で明るいミュージックをお願いします」
あらかじめ確認しておいた手順で、指示を出した。さすが天津箱舟、恒星間移民用宇宙船だけあるわ。ライブラリーのデータにはクラッシックからヘビメタまで、しっかりデジタル音源が詰まっていた。
もちろん、私の知らない宇宙時代の音楽もあったけど、ピンと来なかったのよね。好みの曲探す手間がもったいなかったし。
なので、ものすごくメジャーだったSF映画のテーマ曲を流してもらった。フルオーケストラだから迫力抜群だったしね。
予行演習の時、国王陛下が大喜びしてたから、楽譜をプレゼントしておいた。オーケストラ用の楽器も一式取り寄せたから、その内、演奏できるようになるんじゃないかな。先ずは演奏家を育成するところから始めるらしいけど、王家が本気出したらなんとかなるでしょう。
金と権力、それに時間は奇跡を起こす! 見知らぬ誰か、頑張って演奏マスターしてね。
この世界では音楽文化がしょぼいです。合奏はせいぜい数人。オーケストラなんて、存在すら知られていません。
陛下、神代の楽器が手に入って歓喜。国宝級の秘宝ですからね。
パーティー内容をさらっと流したのは、書きだすとキリがないから。ストーリーのテンポを優先しました。面倒くさいからではありません。ええ、ありませんとも(笑)
お星さまとブックマーク、ありがとうございます。台風が近付いてますが、皆様、ご用心。




